CEOリポート FC本部社長ビデオインタビュー

(株)モスフードサービス 代表取締役社長 櫻田 厚 氏

(株)モスフードサービス 櫻田 厚 社長 インタビュー

ファストフードが生み出す風景

手元に二冊の本がある。一冊は「マクドナルド化する社会」早稲田大学出版部 ジョージリッツア著。もう一冊が「ファスト風土化する日本」洋泉社 三浦展著。「マクドナルド化する社会」はもう10年以上前に出版されたものだが、”社会がマクドナルド化している”というリッツアの提言に人々は共鳴し、そのことで生じている問題への関心も高まり、日本をはじめ7カ国語に翻訳された。

もう一冊の「ファスト風土化する日本」。は奥付を見ると6年ほど前の出版のようだが、こちらは、画一化し均質化した日本の郊外で、今までになかったような犯罪が多発していることを警告している。より衝撃的で、深刻の度合いは大きい。

ファスト風土化する日本」はもちろんファストフードとかけたものだ。

両書共に偶然だろうが、~化する~、とタイトルでうたっている。前者は広く一般社会がマクドナルド化し、後者は日本の社会や風土がファストフードに象徴されるような風景になってしまったと言っている。マクドナルド化した社会はどうなるのか、ファスト風土化した社会はどうなっていったのかを検証し、そのことに警鐘を鳴らしている点で非常に似通った内容なのだ。

「マクドナルド化する社会」は社会全体が合理性を求めるあまり、マニュアル化した人間味のないものになってしまったことへの認識とそれへの対応を説き起こす。「ファスト風土化する日本」はファストフードに代表される合理化された流通システムにより、日本で均質化した社会の出現が進行しており、その進行が郊外にあってより一層顕著である。そしてそこでは現代的とも思える犯罪が多発していることを数字により検証している。

両者の態度は、アンチ合理化、アンチファストフードであることは明確だが、三浦氏が指摘するように、地方の多くの駅前商店街がシャッター通りと化し、代わって幹線道路沿いに有名なスーパーや家電店、ファストフード店が立ち並ぶという風景が見慣れたものになったのは事実だろう。そしてそれらのほとんどは全国チェーンであるため、看板や外装はほぼ変わらない。その結果、地方都市における郊外の風景は全国ほとんど同じものになってしまった。

この点の指摘は正しいし、日本人の多くが感じていることだろう。田舎に帰省するたびに、この前出張した地方都市と距離は随分と離れているのに幹線道路やそれを中心とした郊外の風景はそっくりであることに、危機感は覚えずとも、奇妙な感覚に襲われる人々は多いのではないだろうか。

さて、その「マクドナルド化する社会」の序文においてリッツアはモスバーガーをマクドナルドのクローンだと言い、その存在は非常に興味深いと述べている。確かに、モスバーガーはファストフードであるのかないのかを聞いてみると恐らく多くの人が、モスバーガーはマクドナルドよりちょっと高級なハンバーガーのファストフード店であると答えるだろう。

創業者櫻田慧のDNA

インタビュー中、櫻田社長の口からは、創業者は~、創業者が~、というフレーズが何度か出てきた。

モスバーガーの創業は1972年。そしてその1年前の1971年に日本マクドナルドが銀座に一号店を開いている。人一倍勉強熱心なモスバーガーの創業者櫻田慧がそのオペレーションを知らないはずはない。そもそも本人も述べているように米国出張中に食べたハンバーガーの味が忘れられずに開業したわけだし、当然、随分と前からアメリカ流の合理主義とそこから生み出されるチェーンオペレーションは熟知していたことだろう。

しかし、その後のモスバーガーの歩みを見るとこの合理主義とは一線を画しているように見えるのだ。もちろん、1000店を越すナショナルチェーンであり、全国どの店に入っても、同じ品質でほぼ同じ価格で商品は提供されているのだから画一的だと言えばやはりそうだ。お店で働いているのは学生のアルバイトであり主婦のパートなのだからマニュアルはもちろんあるだろうし、店員の対応をマニュアル的だと感じないわけではない。

1972年、成増という東京ではあまりメジャーとは言えない土地で産声を上げたモスバーガー一号店を訪れたことはないが、その開店時の空気が1000店を越える今でもどこかに残っているのではないかと思える時がある。その当時働いていたアルバイトの子が着ていた制服は今とは全然違うだろうし、店の作りも昔と比べたら随分と今は垢抜けていることだろうが、店内に流れていた空気感はほぼ同じなのではないかと感じるときがある。

モスバーガーでは、自社の商品に対して作り置きのイメージがあるファストフードと呼ばず、アフターオーダー方式と呼んでいるし、生産者の顔を見せるようにしたり、地産地消を心がけたりと、表面上は手の掛かるスローフードを演出しているように感じられる。しかし、そのような表面的な事柄が合理主義と一線を画しているよう感じられることの理由ではないだろう。恐らく、リッツアが著書の中でマックスウェーバーの合理化の檻と言っていた檻の存在を櫻田慧は常に意識し、陥ることを恐れ戦ってきた。その戦い続けたDNAが今も全国のモスの店舗のどこかに宿っているからではないだろうかと思えるのだ。(少し、飛躍した想像が入っているかもしれません)

極端な性善説・人が人を管理することはできない

江戸時代、各国の領主がとった領民統治の原則に、”領民はこれを知らしめず寄らしめず”というのがある。不作や飢饉の場合などに農民が団結し、百姓一揆などを起こすのを恐れたためだ。領民に対して為政者の台所事情などは伝えず、領民が集まり、ともすると力を持つことを予防した。

こういう思想がフランチャイズ本部にも存在する、とは言わない。ただ、環境として生じやすいことは事実だろう。本部と各加盟店の一つ一つをその力関係で見た場合には圧倒的に本部の力が各加盟店を上回る。加盟店を管理し導いていこうという誘惑には駆られるのではないだろうか。また、それが一概に否定されるものではなく、強力なフランチャイズ運営を目指す本部においては当然の選択かもしれない。

しかしながら、モスフードサービスでは、そもそもの管理を放棄しているようにも見える。インタビュー中でも、櫻田社長は”人が人を管理することはできない”という創業者の思想を何回も聞かされたと語っている。

本部は適切な情報の開示が必要だし、加盟店同士のコミュニケーションを図ることも大切だという考えだが、言うは易く行うは難し。これはなかなか難しいというのが現実だろう。

フランチャイズ運営において、本部と加盟店の利害はぶつかることも多く、加盟店の言い分に振り回されてしまい、その結果、本部がコントロール能力を失ってしまう危険性があるからだ。そうなってしまうと、これは本末転倒と言わざるを得ない。

モスフードサービスには「モスバーガー共栄会」と呼ぶ加盟店同士の親睦団体がある。いわゆるオーナー会である。1980年の9月、一号店が開店してから8年後の発足ということになる。

モスフードサービスの歴史をひもとくと、モスバーガー共栄会の会長が、のちにモスフードに入社し社長をつとめた例もある。こんなフランチャイズ本部があるだろうか。

そして、このモスバーガー共栄会に関連したことでは、興味深い記事が最近の日経MJに掲載されていた。

「ご当地バーガー」を全国5地域で限定発売 地域のFC店舗と企画から連携して商品化。

という見出しだった。

加盟店同士がアイデアを持ち合い本部との協力のもとに商品開発を行ったというのだ(下世話な話で恐縮だが、この時には本部からそれら加盟店に対してギャラは払われたりしたのだろうか。それともボランティアだったのだろうか。少し気になる)。この共栄会は、先日やっと終息宣言を出すことができた宮崎県に対して本部と共同して寄付を行っていたりもする。また、平成22年5月10日付け同社のHPでは、今期新たに本格導入するプログラムと題して、

「2010 年6 月より、新たな教育プログラムを導入します。プログラムは、FC店舗同士の更なる交流を促すもので、成功事例を他店舗へ水平展開させます。」と謳っている。こういった一連の活動を見ていると創業者のDNAが今まだ息づくと言うよりも、今まさにより一層加速しているようにも見える。

土地も用意した建物も用意した。加盟させてくれるよね?

フランチャイズ加盟に必要なものは、先ず加盟金、場合によっては保証金研修費だ。

店舗を必要としているチェーンであれば、土地と店舗も必要になる(チェーンによっては、加盟タイプなどにより本部が用意する場合もある)。

では、そういった金銭的な条件が満たされれば直ぐに加盟し、営業が開始できるかというとほとんどはそうではない。多くの本部が加盟審査を行い、それに合格した者だけが加盟できるのが通常だ。

フランチャイズチェーンというぐらいだから、加盟者はそのチェーンの一つ一つを構成することになる。チェーン同士の結びつき強固なものになってこそチェーンは強くなり競争力を保てるのだ。チェーンの一つが何らかの理由で緩み始めたら本部は大至急で補強や補修を行わなければならないが、できれば最初から問題のある加盟希望者は受け入れないのが絶対に良いのだ。

本部は審査に審査を重ねるはずだし、間違ってもこのプロセスはおろそかにはしないはずである。逆に言うと、この審査が形ばかりであったりするような本部は、その本質を問われかねない。開発ビジョンのない本部、下手をすると加盟金目的ではないかと疑われても仕方ないだろう。

さて、モスフードサービスである。誰でも想像できることだが、ここまでオーナーと一体化?したフランチャイズ展開を行っていこうとするならば、その加盟審査のハードルは相当に高いものになるだろうことは想像に難くない。

1000店を越える店舗展開を実現している本部にしては、極めて個人資格の加盟店が多いのが特長だとも言える。法人の場合にも法人成りが大半を占めているようだ。そのためか、商業施設への出店は少なく、大半がロードサイドへの出店である。詳しくは、ムービーで直接ご確認頂くとして、ここまで大きなチェーンになりながら、面談の際には未だに飲食が好きなのかどうかを加盟希望者に尋ねるのが、モスらしいという雰囲気だ。上場企業でありながら生業の味がいつまでも残り続けていることに驚きすら覚える。

海外展開はパートナー選びが最重要

少子高齢化が急ピッチで進むわが国においては流通業も海外にその市場を求めていかなければならない。

日本マクドナルド創業者の藤田田氏は、その創業の頃、日本人はハンバーガーを食べる習慣はないが、子供の頃からハンバーガーを食べさせれば大人になっても食べ続けてくれる。大人になってから本当のお客さんになってくれると解説してくれていた。実際世の中は彼の予言通りになった。ハンバーガーは何も若者だけを対象にしたメニューではなくなった。しかし、その当時の子供も今は50才を越えて来ているのだ。もうそろそろ和食に回帰するのではないだろうか。また、わが国の生産年齢人口は既に1995年にピークを迎えている。食べる人も少なくなれば作る人も少なくなっていくというのが日本のおかれた状況なのだ。

現在と同じあるいはそれ以上の成長を望むのであれば海外展開は避けて通ることはできない。

幸い、わが国は、日本よりも人口減がまだもう少し先にやってくるアジア市場に位置している。距離的にも文化的にもアジアは近く、日本食ブームが続くアジア市場で、日本生まれのハンバーガーは大いなる可能性を秘めた商品と言えるのかも知れない。

しかし、一方で食文化ほど保守的なものはない。日本から海外進出したチェーンが地元の文化と溶け込むために劇的な変化を遂げている場合がある。同じフランチャイズ業界では重光産業が展開している味千などがその典型だろう。

中国本土や香港に展開する味千を見て、日本国内の味千を想像するのは難しい。日本で味千の看板をくぐり、飲み会のしめにと豚骨ラーメンをすすっていた人間が、北京空港のターミナルで営業している同じ味千の店を見ても一体何が起こっているのか直ぐには理解できないだろう。

食文化以外にも、ライフスタイルに対する価値観の違いも大きい。アジアに展開するコンビニを見た日本のスーパバイザーは店内を一周しただけで、オーナーを呼び出し、改善を求めるだろうし、改善がなければ店の閉鎖さえ本部に進言するのではないだろうか。

ことほどさように、文化が受け入れられるためには変容を迫られるのだ。

海外で興味を持たれた日本文化として、古くは禅や茶道、歌舞伎などのメインカルチャーがある。それらは、われわれが思いもしない角度からエキゾチックな喜びを与え、思いもしない視点から深く掘り下げ追求され、逆輸入された解釈が日本人の精神構造を浮き彫りにした例もある。スシなどの日本料理が欧米に受け入れられたのはその延長線上だったのだろう。

現在においては、サブカルチャーとしてのアニメやフィギュア、ストリートファッションが欧米をはじめアジアでも人気を集めている。これなどは日本におけるサブカルチャーの文化的普遍性を証明しているのかもしれない。お好み焼きや、たこ焼き、ラーメン、餃子などいわゆるB級グルメも同様に日本のサブカルチャーとして受け入れられるかも知れない。

日本企業の国際フランチャイジング」川端基夫著 新評論出版によると、国内外食企業の海外への出店数ベスト5は、多い順にミスタードーナッツ、ロッテリア、味千ラーメン、吉野家、モスバーガーとなっている。このうちミスタードーナッツとロッテリアは特殊事情によると同書でも書かれているので、モスバーガーは日本の外食産業としては実質3番目の進出規模を誇っていることになる。

モスバーガーの海外出店エリアは世界6つの国と地域。

海外進出については、現地企業との合弁で行うのか、独資でいくのかの二通りがあるが、本来は現地企業にイニシアチブを取ってもらう形の合弁であるべきだと考えていると櫻田社長は述べている。

やはり現地の文化を理解している現地企業が主体となって展開していった方が成功確率が高いと考えているようだ。食文化の海外展開には現地文化の理解が欠かせないと言うことだろう。

視点を変えてみる。

日本ではアメリカのフランチャイズチェーンを導入し四苦八苦してきた例が過去を見渡せばごまんとある。アメリカでは大繁盛。しかも日本に引っ張ってきたのは資本力のある大手企業、大手商社。なのになぜかうまくいかない。

理由はさまざまだ。最も多いのは業態そのものが受け入れられなかったというものだが、これは避けようがない理由だ。もう一つ、避けることができたかもしれない理由としては、契約書がある。店舗展開がうまくいかなかった理由として契約書に縛られて自由な動きができなかったというものだ。

モスバーガーはいわゆる日本型のフランチャイズ経営で店舗数を伸ばしてきた。

いみじくもインタビュー中で櫻田社長は、フランチャイズ発祥の地アメリカでは国籍や人種がさまざまであるので、マニュアルは必須であったが、日本ではそれほどではないと言っている。

しかしながら、モスバーガーが海外に出て行くということは、まさにそこで国籍や人種の壁とぶつかることになる。

マニュアルはどうなるのか、契約書にそれらはどこまで盛り込まれるのか気になるところだ。

海外展開でも極端な性善説は通じるのか。

次のインタビューでは是非質問してみたい項目である。

パリのシャンゼリゼ通りにモスバーガーの看板が現れるのが楽しみだ。そこにどんなメニューが現れるのかと思うと今からわくわくする。

[名 称]  株式会社 モスフードサービス
[英文名称]  MOS FOOD SERVICES, INC.
所在地 [本社]  〒141-6004 東京都品川区大崎2-1-1 ThinkPark Tower 4階
TEL 03-5487-7333  FAX 03-5487-7380
代表取締役社長 櫻田 厚
資本金  114億1,284万円(平成22年3月末現在)
ホームページ  http://www.mos.co.jp

プロフィール

櫻田 厚(さくらだ あつし)

1951年、東京都大田区生まれ。
'70年、東京都立羽田高等学校卒業、父の急逝で大学進学を断念し広告代理店に入社。
'72年、叔父(モスフード創業者・櫻田慧)の誘いで「モスバーガー」創業に参画。
'77年、モスフードサービスに入社、直営店勤務を経て、教育・店舗開発・営業等を経験。
'90年、海外事業部長として台湾へ赴任、アジア進出の礎を作る。
'94年、取締役就任
'98年、代表取締役社長就任(現任)。

東京商工会議所 議員
社団法人日本フランチャイズチェーン協会会長
社団法人日本フードサービス協会副会長
外食産業ジェフ厚生年金基金理事長月)
社団法人日本ハンバーグ・ハンバーガー協会会長

フォトギャラリー

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