海外進出は「HOW」がポイント!「アジアフランチャイズ法務戦略」著者:川本氏のセミナーリポート

フランチャイズWEBリポート編集部 |2016年07月26日 公開 (2021年11月18日 最終更新)
海外進出は「HOW」がポイント!「アジアフランチャイズ法務戦略」著者:川本氏のセミナーリポート

多くのフランチャイズ本部が直面する海外進出に当たっての問題。その問題はどこから来るのか。表面に現れた文化の違い、商習慣の違いを各国それぞれの法制度の違いをヒントに読み解いてみたい。

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待ちに待ったセミナー・アジアフランチャイズ法務戦略

先月上旬、東京麻布台で開催されたセミナーの取材に出かけてきた。

取材と言いながら、その内容については興味津々。

川本到氏による、「アジアフランチャイズ法務戦略」なる書籍が上梓されたのが今年の初め。 「アジアフランチャイズ…」までは良いのだが、後半の「…法務戦略」の文字に腰が引けてしまい、積ん読状態は長く、なかなかページを読み進める勇気が無かった。

版元はというと、「レクシスネクシス・ジャパン」長年に渡って法務関係の出版とそれに付随したサービスを手がける出版社である。

法律とは無縁の人々-筆者であるが、にとって、これは相当に敷居が高いことはご理解いただけると思う。

幸運にも著者自身のセミナーが開催されることに

そんな折、その著者が版元の主催により、自らセミナー講師を勤められるという話しが舞い込んできた。これほど、待ちに待った取材はない。

著者とは、当社も懇意にさせていただいている中小企業診断士を中心とした「FC研究会」を通じて数度お話の機会を頂き、一度はマカオの国際フランチャイズ展示会にも同行させていただいた。その同行を通じて、氏の国際面における知識の深さは十二分に分かっていただけに今回の出版は納得であった。

セミナーの様子をお知らせする前に、同書の内容に少し触れておきたいが、その説明には、学習院大学法学部教授小塚荘一郎氏の「刊行に寄せて」を紹介させていただくのがもっともふさわしいのではないかと思う。

『1990年代に入るまで、フランチャイズ法を持つ国は米国と日本(中小小売商業振興法)の他には、EU(当時はEC)の適用免除規則とフランス法を数える程度であった。(中略) ところが今や時代は全く変わってしまった。2000年頃から、アジア各国で、フランチャイズ法が次々と作られていったのである。世界でこれほどフランチャイズ法が一般化した地域はない。 それと同時に、本書は、川本氏という著者がいたからこそ書かれた幸運な書物である。(中略) ASEAN経済共同体が発足し、TPP協定も成立した中で、日本企業も国際フランチャイズを利用して、アジア市場に飛び込んでいく時代になった。』

中略ばかりで恐縮だが、無謀を恐れず言うならば、もし筆者が当著の前書きを依頼されたら全く同じ趣旨のことを 書いていたろうと思う。それほどに、出るべくして出た、待望の書籍であるからだ。 国際化を迎えた日本において、外にマーケットを求めて行かざるを得ない状況は、フランチャイズ業界も例外ではない。 むしろ、ハードウェア先行であった日本にあって、今後は、ノウハウやライセンスに守られた日本が得意とするソフトウェア的な部分での海外進出は今後ますます盛んになることは間違いがないのだ。

幸運にも著者自身のセミナーが開催されることに

ボリューミーな内容と機関銃トーク

さて、ではいよいよセミナーの概要をレポートさせていただこう。 冒頭、講師自らの、これからお話しすることは、相当にボリューミーな内容であるにも関わらず、時間はわずかに3時間なので休憩はなしでいきたいという宣言でセミナーは始まった。

これは、結論から言うと、受講する側もそれなりの覚悟を持って聞き入らねばならないわけだが、筆者のような門外漢であっても一応理解すること自体に困難は感じなかった。理由は後述する。

ただ、熱心にメモを取られていた出席者の大半は、セミナー修了後の名刺交換で分かったのだが、大手フランチャイズ本部の法務部門担当者の方などだったので、彼らにとっては、私以上の深い理解があったことは想像に難くない。いくら私が凡その理解はできたと言っても、交わされている言葉は法律用語満載であるし、当然だが、出席者は本書を読んできているのが前提なのだから。(正直に告白すると私は本書の半分ほどまでしか読み切れていなかった。)

ボリューミーな内容と機関銃トーク
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WHEREではなく、HOWがいかに重要であるか

マシンガントークは、この、海外進出に際しての心構えとして、WHERE(どこに進出)ではなく、HOW(どうやって進出)がいかに重要であるかという警鐘から始まった。

確かに、筆者はフランチャイズ本部ではないが、本部に限らず海外進出に関しては、どの国に進出するのか、米国なのか、韓国なのか、はたまたマレーシアなのかという具体的でイメージしやすい国名を先ずは頭に思い浮かべるであろう。しかし、川本氏が重要視するのは、それも大事だか、それよりもどうやって進出するのかが重要であるにも関わらず、そこへの意識が低い方が多いというのが、警鐘でもあり、啓蒙でもあったようにおもう。

そして、その警鐘はセミナーが進むにつれて、具体的な進出方法などが解説されるに及んで具体的となってきた。筆者などは、フランチャイズ本部が海外進出していく方法としては、「直接投資していく方法」と「現地企業との間にマスター契約をしていく方法」との二通りしか認識していなかったが、実際にはそれ以外に多くの方法があり、それらを組み合わせていくと、実に多くの進出方法があることに気付かされる。

むしろ、筆者が思い浮かべていたような単純な方法はむしろ少数であり、進出本部の数だけその手法は存在するのではないかと思えた。そして、その進出方法と進出国とを組み合わせていくと、ほぼ無数のやり方がそこには存在することも容易に分かる。

翻って、国内では、本部が加盟店を増やしていく方法としては、本部が直接募集するか、或いは、加盟代行企業を使ってやるかの二通りしか存在しないのとの大違いである。

複雑であると言うことは難易度の高さを表す。そこへ持ってきて海外進出となると直ぐに思いつくのが為替の問題、言語の問題、海外スタッフの確保など、凡そ国内では考える必要のないことに次々と直面していくことになる。海外進出を考える企業は、最低のこと、基本のこととして本書を購読することは必須であると思えるが、川本氏のセミナーでは、それに加えて、進出国の実情に合わせて、それらを組み合わせることを勧めているのは、とても具体的で感心させられた。

WHEREではなく、HOWがいかに重要であるか

海外を知ることで、日本をより深く知ることになるのではないか

ことほどさように、フランチャイズの海外進出に多くの困難があることを、当セミナーは教えてくれるのだが、筆者は受講しながら、当セミナーのもう一つの側面を感じていた。

つまり、国別の法制度やそれに対する対応などを聞いていると、それぞれに特徴があることに気付かされるわけだが、それは取りも直さず自分たちの国である日本との違いに気付くことを意味するのだ。 そのため、セミナー自体は海外事情の解説なのだが、そのことによって今までは見過ごしていた自社の特徴や問題点、或いは改善点にまで気付かされるセミナーではないかと思えたのだ。

この国際化の時代、フランチャイズ本部という看板を出していたら、海外からの引き合いは月間何本かはあるはずである。望むと望まざるとに関わらず、意識せざるを得ないのが、海外進出、アウトバウンドだ。 そんな本部に必須とも言えるのが本書であるが、これを読み解くのはかなりハードルは高いがこういったセミナーで著者の話を聞くというスタイルであれば、一気にハードルは下がる。

本書のタイトルだけを見ると、どうしてもお堅いイメージを抱いてしまうが、別にフランチャイズに限らず、法律ほどその国の国情や民意を表しているものはない。 例えば、銃や麻薬など国内では非合法なものが海外では扱いが違う。最近では、安楽死やLGBTとその婚姻問題など、米国であれば、同じ国内でもそれぞれで州法によって違いが存在する。そして、それを決定しているのは正にそこに居住する国民であり、州民であり、彼らが作り上げてきた文化そのものが法律という目に見える形で現れているのだ。

つまり、法律を見たり、その解説を聞くことで、何となくその国の国情や国民性が想像できたりするのだ。本書はそれをフランチャイズという経営手法にフォーカスしながら、アジア全域を俎上に上げ解説を加えてくれている。これは海外進出を考える関係者にとってはとても頼もしい。

海外を知ることで、日本をより深く知ることになるのではないか

法務関係者だけが聞くにはもったいない

実際の契約等は専門家に任せるべきだろうが、今回のような概論的な部分は、法務関係者だけにお聞かせするのは勿体ない。これはもう少しでも海外に興味があれば、フランチャイズ業界全ての方が、受講すべき内容だろう。とりわけ、本部幹部、経営陣こそが受講すべき内容ではなかったかというのが、筆者自身3時間の受講を終えての感想であった。

筆者は、数年前韓国の展示会を取材していた際、いかにも高校生という団体が教師に引率されて、フランチャイズの展示会場を見て回っているのに驚いた。主催者にあれは高校生かと尋ねるとそうだと答える。

日本では絶対に見られない光景だろう。長年このことが不思議で、疑問であったが、今回のセミナーを受講してその答えが分かったのだった。

本来であれば法務という名前がタイトルに入っていない、より一般概論的なものの出版が個人的には望まれたが、どうしてどうして、法務の分野から見て行くことで、今まで見えなかったものに気付かされることが多く驚かさされた。

最後になるが、当然ながら、本書を解説するのが、当コラムの目的ではない。

当コラムをご覧になって興味を持たれた方は、書店でもネットでも何らかの方法で本書を入手された後、もし機会があれば、私のように著者のセミナーに参加されることをお薦めする。

アジアフランチャイズ法務戦略:著者 川本 到 氏

アジアフランチャイズ法務戦略:著者 川本 到 氏

行政書士。タリーズコーヒージャパン株式会社法務グループ長。飲食チェーン2社の法務担当者を経て、現職。平成20年4月に行政書士登録(神奈川県行政書士会所属)。国内最大級のフランチャイズ展示会である日経フランチャイズショーのセミナーなどでフランチャイズの法律・契約に関する講座の講師を務める。また、行政書士の研修では、契約書の作成などに関する講座の講師を担当する。中小企業診断協会東京支部フランチャイズ研究会会員。主著に『フランチャイズ本部構築ガイドブック』(共著、同友館、2013年)、『FCチェーンの海外展開ハンドブック』(共著、フランチャイズ研究会)など。

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