フランチャイズ研究会 社会保険労務士・人材育成トレーナー安紗弥香
2015-05-14 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
フランチャイズ研究会 社会保険労務士・人材育成トレーナー 安紗弥香

ずばり!コンビニ経営のメリット・デメリット

 このコラムのポイント

コンビニ本部でオーナー研修など、フランチャイズ関連の職務に携わっていたコンビニせんもんの社会保険労務士、安氏によるリアルなコンビニ加盟談やメリット・デメリットをお届けしています。メリットとデメリット両方を知って、加盟検討に進みたいですね。

フランチャイズWEBリポート編集部


こんにちは、コンビニ社労士、人材育成トレーナーの安紗弥香です。

「コンビニ経営」に関するテーマで、隔週でコラムを担当しております。
第3回は、「コンビニ経営のメリット・デメリット」について触れていきます。

コンビニ加盟を考えるきっかけ

コンビニ経営は、どういうきっかけで始まるのでしょうか。

私が本部の店長研修を担当していた際、多くのオーナーや店長候補者と接しました。研修を進めていく中で、コンビニ加盟のきっかけをインタビューしたのですが、

「もともと小さなスーパーをやっていたが、近くに出店したコンビニにどうしても勝てない。それが、加盟を考えるきっかけになった」

「前から自分でコンビニ経営をやってみたかった」

「コンビニは経営に必要なノウハウがだいたい揃っているので、始めやすいと思った」

「本業が別にある会社だが、事業の一つとして展開を行うことになった」


など、様々な話が寄せられました。どの話を聞いてもワクワクしましたが、同時にそのワクワクを持って加盟されたのであれば、そのワクワクを長い間継続してほしいと思い、研修では可能な限りリアルな経営の姿をお伝えしておりました。

コンビニ・フランチャイズの特徴

コンビニ・フランチャイズの仕組みは、ここでは詳細を言及することは控えますが、図のような関係です。本部が加盟店に対してノウハウを提供し、加盟店はロイヤリティー(フィー)を支払うことでノウハウを活かした事業ができます。

もちろん、加盟するチェーンによって、特色や注意事項はありますが、コンビニ加盟のメリット(最大限に活かせる点)とデメリット(事前に注意・確認すべきポイント)について、まとめてみました。

コンビニ経営のメリット、デメリット

メリット

・本部のノウハウが確立している

コンビニは、数あるフランチャイズビジネスの中でも仕組みがしっかりした業態です。
レジや発注端末をはじめとした最先端の機器、システムを活用した運営ノウハウで、運営マニュアルも作られているため、一からビジネスを始めるよりも格段に早く本業に専念できます。

・チェーンブランドやスケールメリットを生かせる

一からオリジナルブランドを立ち上げようとすると、まずは知ってもらうところから始まりますが、すでに何十年も続いているコンビニチェーンの看板は多くの人に知れ渡っています。

そのため、宣伝費を別でかけることなく、事業を始められます。また、直営店や先に開店している加盟店のノウハウも本部にかなり蓄積されているため、事業戦略が比較的立てやすいのも魅力です。

そして、商品の発注から納品もシステム化されており、一定の店舗数を抱えるコンビニチェーンでは、メーカーとの仕入れ価格の交渉を本部が行い、通常よりも安く仕入れられたり(期間条件が付くこともあります)、新商品やオリジナル商品の導入もしやすかったりします。

・加盟形態が選べる

コンビニビジネスが始まった直後は、もともと酒屋や小さな食料品店を営んでいた方がコンビニに転換することがほとんどでした。しかし現在は、これまで小売の経験がなかった方でも加盟しやすくなっています。

コンビニの契約形態は、次のように、大きく分けて2つあります。チェーンによってはより細かく分けられている場合もありますが、現状と照らし合わせて、選ぶことができます。

本部が土地、建物を用意する加盟タイプができてから、コンビニの店舗数は一気に拡大しました。というのも、このタイプは本部の立地調査によってある程度見込みのある店舗で事業をスタートできるうえに、加盟時に準備する金額が、500万円程度で済むからです。

もちろん、本来加盟者が用意するものを本部が代わりに用意することから、加盟後に本部へ支払うフィー率がやや高めに設定されますが、一気にコンビニ事業が身近になったのは間違いないでしょう。

・決算書類もしっかりしている

コンビニの数値管理は、すべてPOSというシステムによって行われます。POSは加盟店と本部でつながっていることから、本部を通して会計処理ができるものが多くあります。

経営上必要なもので、多くの店舗で採用されるものについては、あらかじめレジやストアコントローラ(ストアコンピュータ)に登録するだけで、データが本部に転送されます。

その後、毎月出される決算書類に反映されるため、損益計算書や貸借対照表など、必要な決算書類がきちんとした形で、定期的に発行されるので、数字が苦手でつい経理処理を後回しにしてしまう方にとっても、安心です。


さて、メリットがあれば、もちろんデメリットもあります。

デメリットは、フランチャイズ契約上のルールとも取れますので、加盟前にはしっかりと本部に話を聞き、不明点は確認を取りましょう。

デメリット

・自分の裁量でできる範囲には限りがある

例えば、商品の発注や販売について、本部が推奨している登録商品は何も問題がないのですが、独自で開発、あるいは仕入れた商品を販売する際には注意が必要です。

絶対にできない、ということではないのですが、事前に本部への確認、承認が必要となります。その他にも、それらはすべて、ブランドイメージを維持、統一するために必要な行動と言えます。

・膨大なノウハウゆえに、秘密保持義務も厳しい

当たり前の話ではありますが、事業上得た秘密は、外部に漏らすことは許されません。コンビニを運営していると、特に新しい商品やサービスの情報を、一般告知前に知ることが多くなります。

それは本部がメーカーや関連企業と一定の約束を交わした上で、加盟店に共有しているものですので、決められたタイミングやルールに則って、加盟店も情報をコントロールする必要があります。

また、守るのはオーナーだけではありません。店舗で働くスタッフも同様です。そのためのスタッフ育成もとても重要となります。

・契約途中での事業終了に制限がある

コンビニの加盟契約期間は、7年から10年。決して短くはありません。その中で、経営を続けることが難しくなることも多々出てくることでしょう。だからと言って、途中で解約することは簡単にはできなくなっています。

もちろん、オーナー個人の事情もあるのは承知の上ですが、本部の事業運営上の都合はもとより、大家との都合もあります。

コンビニを一店舗開くのに、多くの方が関わっている、ということを意識して、加盟するかどうかを検討された方がいいでしょう。

もし、このあたりで不安要素がある場合は、加盟前に本部にしっかり確認をとることをお勧めします。

・加盟店指導員のスキル差がある場合がある

コンビニは先述のように、店舗数が爆発的に拡大し、現在も伸び続けています。そのため、本部も多くの加盟店指導員を配置していますが、最近、そのスキル差が見られるようになってきました。

もちろん、ちょっとした個人差や特徴、得意不得意は人が違えばあるものですが、本当はあってはならないレベルでのスキル差が生まれていることも事実です。

指導員は加盟後から加盟終了まで一定ではなく、指導員の異動、本部の組織再編などにより、変わることも十分あり得ます。もし、スキルに課題が残る指導員が皆さんの前に現れても、根気よく関わっていくことも大切です。

 

以上、コンビニ経営のメリットとデメリットについて見てきました。やはりフランチャイズという業態上、制限こそありますが、メリットを有効に活用すれば、複数店経営や同じ立場であるオーナーへのサポートなど、事業として展開させていくことも十分可能です。

ぜひ、無料の説明会や相談会に参加するなどして十分に検討した上で、「自分に合ってそうだ!」と思われたら、ぜひ積極的に事業に関わってみてください。

戦略的に取り組み、スタッフ育成にも注力していくことで、リピーターとなってくださるお客さまとの関係も構築しやすいので、とても面白い経験がたくさんできますよ!

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
次回は、「コンビニ開業を考えたらまずやるべきこと」について触れていきます。

フランチャイズ研究会 社会保険労務士・人材育成トレーナー 安紗弥香

ディズニーで5年間、最高の接客と人材育成を経験した後、CVSチェーン本部へ転職。7年間、4,000人超の社員、加盟オーナーの研修に携わる。その中で、店舗の職場環境向上と労務管理支援に活路を見出し、2012年、社会保険労務士登録、翌年独立。労務管理、採用支援、スタッフ育成研修と幅広いサポートには定評がある。著書に「Q&Aでわかる 小売業店舗経営の極意と労務管理・人材育成・事業承継」(日本法令)がある。