フランチャイズ研究会 中小企業診断士後藤 聡
2015-05-29 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
フランチャイズ研究会 中小企業診断士 後藤 聡

フランチャイズ活用の検討

 このコラムのポイント

フランチャイズを活用して経営者になるとき。知っておきたいフランチャイズシステムのメリットとデメリットがまとめられています。また、フランチャイズ以外にもフルパッケージ型のカタチもあるのでそこの解説を読んでご自身に合った独立方法を検討してみてはいかがでしょうか。

フランチャイズWEBリポート編集部


はじめに

「そもそもフランチャイズってどういった仕組みなの?」
「本部と加盟店はどのような関係にあるの?」
「加盟することでどんなメリット・デメリットがあるの?」

いま、フランチャイズ加盟を検討されている皆さんは、自身のご家族にこう聞かれたら自信を持って答えられるでしょうか?

米国で生まれた『フランチャイズ』が1963年に日本に登場してからフランチャイズ市場の売上は年々伸び続け、今ではなんと約23兆円。新しいフランチャイズ本部も次々に登場し、魅力的な成長市場といえるでしょう。ところが、『フランチャイズ』という言葉ほどにはフランチャイズの仕組みは知られていないのが実情です。

この理解が不十分ですと独立開業は“フランチャイズ加盟ありき”になってしまう恐れがあります。たとえば、フランチャイズ加盟による開業の是非そのものを検討せずにいくつかの本部へ資料請求をしてしまったとします。

本部からの加盟案内資料には、投資回収●年以内、年商×千万円以上可!など魅力的な文言が並んでいます。みなさんの頭の中が本部の選定でいっぱいになってしまい、フランチャイズ加盟以外の選択肢を探すことができなくなってしまったとしたらどうでしょうか?

適性のない方がフランチャイズで開業をしたら、高い確率で後悔します。でも、時はすでに遅し。加盟金が戻ってこないケースもありますし、そもそもフランチャイズ契約の解除自体が困難で高い違約金が発生することもあります。

本部へ資料請求をする前に、フランチャイズを活用して独立開業することが本当に自分自身に合っているのかを十分に時間をとって検討しなければ、みなさんが描いている成功をつかみ取ることなんて到底できないでしょう。それほどフランチャイズでの開業には十分すぎるくらいの事前準備が欠かせないのです。

フランチャイズの仕組み

フランチャイズの仕組みを理解するには、フランチャイズ本部の成り立ちを理解することが近道です。

あたりまえですが、フランチャイズ本部は最初から本部だったわけではありません。
まずは独自で1店舗から運営をはじめ、複数の直営店経営に成功し、更なるチェーン展開での成長の1手段としてフランチャイズ本部になることを決意するのです。本部になるためには、直営店が最低3店舗あり、2年以上の検証で成功が証明されていることが必要です。

そして、本部には以下のような機能が求められます。

・屋号にブランド力があること

・取扱商品が他社に真似されにくいこと

・店舗運営が「勘」や「センス」に依存しないようにマニュアル化されていること

・・直営店で実績をあげているマネージャーによる運営指導が提供できること

こういった機能をまとめてフランチャイズパッケージと呼びます。

みなさんは、このフランチャイズパッケージを購入して、その対価を本部へ支払います。本部はその対価をフランチャイズチェーンの運営資金に充て、チェーンを維持・発展させます。

一言でいえば、本部が苦労して作り上げたブランドイメージやフランチャイズパッケージを、運営指導付きで継続的に購入するのがフランチャイズの仕組みなのです。

本部と加盟店の関係

本部の役割は、フランチャイズパッケージの提供です。加盟店の役割は、マニュアルや本部からの指導に従い店舗運営を行うことや、パッケージの対価を本部へ支払いチェーンの維持発展を担うことです。ここで大事なのは、あくまでも店舗運営を主体的に行うのは加盟店であるということです。

効果的なノウハウがあっても、加盟店にやる気がなければそのノウハウは機能しません。
フランチャイズ契約では通常、本部の責任はノウハウの提供と指導までで業績の保証はしません。提供されたノウハウと指導を活用し、業績をあげるのは加盟店の責任になります。

全体としてチェーンは順調に成長しても、一部の加盟店は業績不振により閉店を余儀なくされる、ということは現実に起こっています。同じノウハウや指導を活用して順調に成長するか、業績不振になるかは加盟店の努力次第なのです。

フランチャイズ加盟のメリット・デメリット

フランチャイズ加盟ワークブックでは、フランチャイズ加盟におけるメリット・デメリットを一覧で示していますが、代表的なものをいくつかご紹介します。

メリット デメリット
個人での開業に比べ、失敗のリスクが低い 本部の良し悪しにより業績が左右される
事業経験がなくても開業が可能 加盟店の独自性が出しにくい仕組みである
スケールメリットを享受できる 本部に依存してしまうことがある

メリット

・個人での開業に比べ失敗のリスクが低い

本部が成功したビジネスモデルですので、自力で何もない状態から始めるよりも成功する確率は高いといえます。ブランドが世間一般に浸透していれば更に事業が軌道に乗りやすいと言えるでしょう。

・事業経験がなくても開業が可能

多くのフランチャイズ本部では、全くの未経験者でも開業ができる教育研修体制・マニュアルが整備されています。

・スケールメリットを享受できる

店舗運営には様々な物品の購買や仕入れが必要となります。同一ブランドなら必要な物品も同じですのでチェーンが大きければ大きいほど一括購入による値引きが期待できます。

デメリット

・本部の良し悪しにより業績が左右される

指導能力や経営体力のない本部に加盟してしまうと、十分な支援が受けられないため加盟店は業績を上げるのが困難となります。加盟時点では順調でも、将来的なブランド価値の低下による経営不振などの不安は残ります。

・加盟店の独自性が出しにくい仕組みである

フランチャイズには本部の運営方針に従う義務があるといった制約があるため、独自の品ぞろえや柔軟な価格設定などの工夫の余地があまりありません。

・本部に依存してしまうことがある

本部からの加盟店支援が優秀だったり、スーパーバイザーが有能だと依存してしまい、経営努力を怠ったり、重要な経営判断が自分で下せなくなることがあります。

独立開業とフランチャイズのかたち

ここまで、「フランチャイズ」の基本についてご説明してきました。実は、フランチャイズにはいくつかの形があります。

これまでフランチャイズと呼んできた仕組みは“フルパッケージ型”と呼ばれます。
フルパッケージ型から継続的な運営指導(スーパーバイジング)を省いたものが“パッケージライセンスビジネス”で、開業支援と運営マニュアルだけあればあとは自分でやりたい、という方に向いています。

他にも化粧品サロンなどを代表例とする“商材提供型”や、一旦まずは本部へ入社して一定の能力を習得後に独立する“のれん分け”があります。

フランチャイズ加盟ワークブックでは、簡易診断チャートを用いてご自身に適切な開業パターンを自己分析できるようになっていますので、活用されてみてはいかがでしょうか。

今回の記事では第一回目の独立の決意と自己分析に続き、フランチャイズ活用の検討についてお伝えしました。
次回はフランチャイズでの開業を決めた次のステップとして、本部の情報収集を取り上げます。

自分に合った本部を見つけるためには、正しい手順で適切な情報にアクセスする必要があります。WEBでの情報収集だけではなく、幅広い媒体から情報を得たり、実際に展示会に足を運んで近い業態と比較してみることで、関心のある本部や業界・業態がより深く理解できるようになります。

フランチャイズ研究会 中小企業診断士 後藤 聡

東京都中小企業診断士協会認定フランチャイズ研究会所属。リース会社に勤務し、ヘルスケアビジネスを中心に店舗開設時や規模拡大時の資金調達支援を行う傍ら様々な経営相談にも対応。財務診断も行い、適切な資金繰りについてのアドバイスも実施。フランチャイズ加盟ワークブック共著。

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