一般社団法人キャリア35 代表理事 行政書士尾久 陽子
2015-07-25 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
一般社団法人キャリア35 代表理事 行政書士 尾久 陽子

女性起業家の支援グループ「キャリア35」とは?

 このコラムのポイント

フランチャイズとは起業の中のひとつの手段ですが、今回のコラムで登場する「キャリア35」とは女性起業を支援しているメディアでも注目の専門家グループです。4名の女性専門家たちで構成されるこの団体の特徴について、これからの連載を前に紹介されています。

フランチャイズWEBリポート編集部


「キャリア35」とは?

キャリア35は、女性の起業・キャリアを、女同士の専門家たちが支援するグループです。結成したのは2010年の夏。現在までに開催した起業セミナーや、座談会、交流会は50回超。女性雑誌『Domani』や『日経スール』でも紹介された、書籍『好きを仕事に!』(ビーケイシー)を上梓したことを機に、2013年一般社団法人化しています。

キャリア35のリーダーは行政書士の尾久陽子。
35歳のときに、女の就職最後のチャンスと気合を入れて取った資格は保育士。
キャリアチェンジはままならず、結局、前職の法律事務職に舞い戻り、翌年合格した資格は行政書士。
しかし、補助職として経験があることと、自分で事業を始めるのは、まったく別次元の話。営業も、事業計画を書いた経験もなく、右も左もわかりません。お世話になっている方(男性)からは「キミの特色はオンナというだけ」と一刀両断される始末。周囲を見渡せば、開業した「同期生」は、自分より年長の野心あふれる男性ばかりで、思いを分かち合える女性の仲間も見当たりませんでした。

数年間の下積みを経て、定期収入を得る梯子を自らはずし、退路を断って独り立ちするぞと決心するも、ざわざわと眠れない夜が続きました。あわてて検索する起業セミナー。

億万長者・女性社長の成功法則。男社会で勝利を得た女性社長は、強く逞しく美しくきらびやか。こんなちっぽけな自分では、恐れ多くてとても相談できないと思いました。

一方、事業とする行政書士業では、会社設立や許可申請、契約法務など、経営者から相談をお受けする立場。求められるのは、ビジネスの成功。業とする手続は、最後の仕上げか招かざる事態に登場するものであって、経営の小さな一要素でしかないことを痛感しました。

そこで、1.経営に必要な諸方面の知識をもった2.親しみやすい女性専門家からの知識が得られ、さらには3.女性同士ならではの共感、サポートがしあえる、そんなグループを立ち上げたいと決意。この思いに賛同してくれたメンバー4人でキャリア35を立ち上げたのです。

わたしたちが、「キャリア35」のメンバーです!

「35歳」は女性の人生の分かれ道?

キャリア35は「きゃりあ さんじゅうご」と読みます。
35歳は女性のキャリアのマイルストーン。何かを始めるのに年齢なんて関係ない。これは真実。

しかし女性の場合、どうしても出産年齢のリミットがあるため、自然と幼いときから「〇〇歳で結婚して、子どもを生んで…」と、年齢と紐付けして(時にはかなり縛られて)、ライフプラン、キャリアプランを描いていたのではないでしょうか。

20代の若さや勢いだけではない、でも円熟の領域にはまだ遠い。「産むか、続けるか、始めるか、変えるか…」一度は立ち止まる人生の節目を、35の数字に映し出しています。

発足当初35歳前後であったキャリア35のメンバーも、活動開始してから現在に至る5年の間で、出産、子育て、入院手術、家族の介護や看取り…自らの事業の変化以上に、いろいろなことがありました。

実は、そんな人生上の変化にも、起業をするという働き方は、とても有効です。
自ら事業を興せば、働き方のスタイル、時間、収益、すべてを自らデザインすることが可能になります。

キャリア35が起業をしている女性40名に対しアンケート調査したところ、起業のきっかけは「自由に仕事がしたい、経験を生かしたい、事業化したい」といった積極派と、「起業せざるを得なかった」という消極派に二分しました。在職企業の閉鎖や雇用の終了、自身の健康上の問題や、子育てなど家族の環境を理由とするものでした。

キャリア35では、さまざまな環境の変化がある女性にとって、キャリアの選択肢に起業もアリですよ、大変なことももちろんあるけど、すばらしいことが一杯ありますよ! ということを、声を大にしてお伝えしています。

女性の起業の特徴とは?

では、起業をした女性の実態は、どのようなものでしょうか。

日本政策金融公庫の調査によると、女性は男性の起業家よりも「社会の役に立つ仕事をしたい」という思いや、自身の「仕事のやりがい」を重視し、とりわけ女性向けのサービス事業を始める傾向があります。また、女性を多く雇用し、従業員の「仕事と家庭の両立」に配慮した取り組みを行っている割合が高いのも特徴です。

女性の起業によって、女性にとって喜ばしい事業や社会を新たに創出されていっているといってよいでしょう。
そして、起業をした女性自身も、仕事、私生活、能力の発揮という側面では、大いに満足感を抱いています。

女性の起業ならではの悩みとは?

女性が開業後に苦労したことは「顧客・販路の開拓」がもっとも多く、「資金繰り・資金調達」「財務・税務・法務の知識の不足」と続きます。女性が起業をする直前の職業が、男性よりも「非正社員」や「専業主婦」の割合が高く、正社員(管理職)の割合が低いことが影響している面もあるでしょう。
そして、「家事や育児、介護等との両立」「経営の相談ができる相手がいないこと」「業界に関する知識の不足」の悩みが、男性起業家を上回ります。

キャリア35のアンケートでも、「集客」「資金繰り」「セルフマネジメント」が、女性の起業の三大お悩み事項でした。

女性は、男性よりも少ない資金、短い準備期間で開業する傾向があります。収入に対する考え方をみると、男性起業家に比べて「家計を維持できるだけの収入があれば十分だ」という回答が多く「できるだけ多く収入を得たい」は下回ります。

事業や社会貢献への純粋な思いはあっても、経営・マネジメント・営業経験に乏しく、開業に向けての準備や吟味、必要資金の投入も不十分なまま見切り発車したために、早々に困難に直面してしまうケースが散見されます。
また、事業を継続するための儲けの仕組みを心得ていないがゆえに、収益を得ることに対してシビアになれず、いつまでたっても趣味の領域から脱却できないという事態にも陥りがちです。調査結果でも、現在の収入に対して満足と答えたのは3割を満たさず、不満の回答が上回っているのが現状です。

起業をする女性の仲間として伝えたいことは?

「小さく始めたい」「大きく稼がなくてもいい」。
起業に向けて、女性がよく言葉にされることです。身の丈にあわせた、着実な経営をすることは、ほんとうにすばらしいことです。しかし、この言葉の多くは、真剣に事業に取り組むことから逃げるための呪文になりがちです。

どんなに小さく事業を始めてもリスクはあり、周囲に果たすべき責任が発生します。暮らしを立てるだけの安定した収益を得るのは決して容易ではなく、たゆまぬ経営努力が必要です。それは簡単なことではありませんが、決して特殊な困難を強いるものではありません。その先には、従業員の立場では分からなかった充実した世界が拓けています。

今後の連載では、これから、女性の起業を支援するわたしたちキャリア35のメンバーが、それぞれの専門分野から「女性が起業し、自分らしく主体的に生活を送るために知っておくべきポイント」を、お伝えしていきたいと思います。 

一般社団法人キャリア35 代表理事 行政書士 尾久 陽子

東京都八王子市出身、早稲田大学第二文学部演劇専修卒業。舞台演劇の脚本・演出・俳優活動を経たのち、法律事務所に勤務。民事・家事・債務整理事件の事務に携わる。2007年東京都行政書士会登録。許可申請のほか、キャリアカウンセラーとしての対話力を生かした業務も多く行っている。おぎゅう行政書士事務所・居宅介護支援事業所代表。女性の起業を支援する一般社団法人キャリア35代表理事。主な著書に『好きを仕事に』(ビーケイシー)、『相続業務に役立つ戸籍の読み方・調べ方』(ビジネス教育出版社)など。