フランチャイズ研究会 社会保険労務士・人材育成トレーナー安紗弥香
2015-08-13 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
フランチャイズ研究会 社会保険労務士・人材育成トレーナー 安紗弥香

コンビニエンスストアチェーンのロイヤリティはずばり高いのか?

 このコラムのポイント

一般的にコンビニのロイヤリティは高いのでは?というイメージを持たれがちですが、果たして真相はどうなのか。そして、そのロイヤリティとはコンビニ本部の中でどのような経費に充てられているのかなどをコンビニ本部に身をおいていた安紗弥香氏に解説してもらいました。

フランチャイズWEBリポート編集部


こんにちは、コンビニ社労士、人材育成トレーナーの安 紗弥香です。
隔週コラムの第6回は、「コンビニエンスストアチェーンのロイヤリティはずばり高いのか?」について触れていきます。

ロイヤリティとは

コンビニエンスストアのロイヤリティはずばり高いのか。
結論をお話する前にまず、フランチャイズビジネスにおけるロイヤリティについて再度確認してみましょう。
これは、加盟店がフランチャイズ本部の商標や蓄積してきたノウハウを使用できる権利を得る代わりに本部へ支払う対価です。このロイヤリティの算出方法は3つあります。

1.粗利分配方式:加盟店の売上総利益に一定の率をかける

2.売上歩合方式:加盟店の売上高に一定の率をかける

3.定額方式:利益や売上などに関係なく、決まった額になる

この中で主要なコンビニエンスストアチェーンは、ほぼ①により算出されています。

しかし、中には2や3の場合もあります。また、名称も「ロイヤリティ」の他、「チャージ」「ロイアルティ」「フィー」など様々ですが、意味合いは同じであるため、このコラムではロイヤリティに統一表記します。

では、まず主なコンビニエンスストアで発生するロイヤリティ(粗利分配方式)のイメージをお持ちいただくためにわかりやすい数字で計算してみます。

例えば、月に1,500万円の売上があったとします。粗利益を30%とすると、売上原価は1,500万円×70%=1,050万円となります。
ただし、コンビニエンスストアのロイヤリティ計算の場合は、売上原価に廃棄ロス原価・棚卸減原価は含まれません。

それらが月30万円あったとすると、その場合の、売上総利益(ロイヤリティ算定ベース)は、
1,500万円—(1,050万円-30万円)=480万円
となります。ここに、ロイヤリティ率をかけていきます。

このロイヤリティ率は後述する契約タイプによって変わってくるのですが、仮にその率が40%だとすると、
480万円×40%=192万円
また、65%の場合は、312万円となります。

この192万円や312万円が、本部へ支払うロイヤリティです。
そして、ロイヤリティを支払ったあと、450万円(実際の売上総利益)—192万円(312万円)=258万円(138万円)が残りますが、基本的にはここから人件費(経営者のものは通常含んでいないことが多いので注意)、水道光熱費、派遣社員費用などを引いていき、営業利益が導かれます。そして、その他営業外の経費などを抜いてオーナーの収益となります。(※上記のロイヤリティの計算方法については、各本部の法定開示書面を参照してください)

まずはここまでご覧になってみて、どう思われましたか?

主要コンビニエンスストアチェーンのロイヤリティ

では、実際に5チェーンのロイヤリティを見てみましょう。
以下のチェーンはすべて1の方式に基づいています。なお、上部はオーナーが土地や建物、内装費用を用意するタイプ、下部は本部が土地や建物、内装費用を用意するタイプです。チェーンによっては、この中間タイプもありますが仮に以下の2つのタイプで見ていきます。

これで見ると、オーナーが土地、建物などを用意するタイプは、一部を除いてロイヤリティのパターンが1種類しかないのに対し、本部が用意するタイプの場合はどのチェーンも売上総利益の額に応じて率が変動する仕組みを採用しています。また、一般的に下のタイプは上に比べてロイヤリティ率が高くなっています。これは、本来オーナーが用意するものを本部が代行して用意していることに起因します。

また、同じようなコンビニエンスストアの形態でも、契約タイプだけでなく、チェーンによってもバラバラですね。このバラバラなところに、各チェーン本部の戦略、例えば加盟店へのサポート体制や店舗開発、商品開発、バックオフィス体制などのノウハウが詰まっているのです。

ちなみに、コンビニエンスストアの加盟を考える際、単純にこのロイヤリティ率だけで決めてしまうのは危険です。どういうことかと言いますと、例えばセブン-イレブンの場合、他のチェーンよりそれが高い傾向がありますが、水道光熱費を本部が80%負担する、というサポートがあります。月に40万円の電気代として、32万円は本部が負担、加盟店は8万円の負担で済むことになります。また、不良品原価の15%を本部が負担する、というサポートもあります。

このように、各チェーンでロイヤリティだけでなく総合的に見ていくことが必要となり、加盟検討時に本部の説明会参加や加盟店訪問も行うことが大切になってくるのです。

ここまでご覧になって、いかがでしょうか?
正直な話、決してロイヤリティは低くありません。特に本部が土地や建物を用意するタイプの場合は高めに設定されるため、オーナーの元にできる限りお金を残すためには、経費も湯水のように使うことはできません。

ロイヤリティの使われ方は?

では、一見多く発生しているように見えるコンビニエンスストアのロイヤリティは、どういうところに使われているのでしょうか。それを可能な限り紐解いていきます。

一般的に、コンビニエンスストアの本部サポートは、これでもか!と言えるほど手厚いことが特徴です。

第3回のコラム「ずばり!コンビニ経営のメリット・デメリット」でも触れていますが、本来、独立開業する際にオーナーが自ら準備しなければならない物流体制構築、商材、レジなどの機器も、初めからノウハウの一つとして提供されます。本部の統一されたシステムを使い、開業当初から運営ができることが大きな強みでもあります。

他にも、具体的なロイヤリティの使い道は以下のようになります。

1.加盟店指導員の経営アドバイス

週2回など一定の回数店舗を巡回、あるいは電話などの手段で常に加盟店をサポートする指導員(スーパーバイザー、OFCなどの名称で呼ばれる)が、経営をサポートしています。

2.商品開発、サービスの導入

コンビニエンスストアの強みは、お客さまのニーズを早め早めにキャッチし、最新の商品やサービスを素早く提供できることにあります。そうした商品やサービスの開発を本部が行っています。

3.広告宣伝活動

各種パンフレットやCMなど、ブランドイメージを向上、維持できるような取組みが対外的にもなされています。

4.情報システムの構築

独自に開発されたPOS(レジやストアコントローラなどの運営機器を総称したもの)を通じて、瞬時に何がいつ、どういうお客さまに売れたか、という情報を加盟店に提供する仕組みです。

5.最新データの提供(品揃えに役立てるため)

天気予報や各種年間行事、本部が提供するキャンペーン情報などを揃えて、タイムリーに提供する仕組みです。基本的には指導員やシステムを通じて提供されるため、店舗にいながら常に最新情報と向き合うことが可能になります。

6.会計業務の代行

いちいち帳簿をつける必要がなく、販売や経費のデータがPOSを通じて収集、蓄積されていきます。それらは本部とつながっており、月に1回会計書類という形でフィードバックされます。コンビニ会計はロイヤリティを含む計算が独特であるため、自分自身で一から計算する時間を省くことができます。

7.スタッフ教育のバックアップ(一部、採用サポートもあります)

スタッフ教育は、店舗を経営しながらだとなかなか思うようにいかないものです。それらを円滑に進めていくための業務マニュアルや、教える人のためのマニュアルなどを本部が作成、随時改定を行っています。
また、チェーンによっては教育・資格プログラム(ファミリーマートの「ストアスタッフ・トータルシステム」や、ミニストップの「イエローテイルプログラム」など)を導入しているところもあり、そうした資格取得のためのサポートも行われています。

8.各種教育研修の実施

オーナー自身も、開店前に2週間~1ヶ月程度の研修を受けて開店することになります。また、開店後や契約満了後の再契約時に研修を実施したり、経営に関する知識のブラッシュアップやオーナー同士の情報交換の場などを本部が用意したりすることもあります。

9.共済制度などの各種支援制度

オーナーのお祝い事や、怪我、障害、死亡、もしくは店舗の物損事故などに備え、サポート体制も充実しています。


いかがでしょうか。これだけのサポートがあるコンビニフランチャイズの仕組みを利用すれば、開業当初から運営面に注力できる体制が万全に整っています。中でもシステムの構築はフランチャイズ業態の中でも非常に優れた仕組みになっています。

さて、ここまで読まれてみて。コンビニエンスストアのロイヤリティ、高いか?それとも安いか?
どうお感じになりましたか?

結論:コンビニエンスストアのロイヤリティは高いのか?

結局、ロイヤリティを高いとみるか、安いとみるかの最終判断は、加盟を検討されている皆さまに委ねることになります。よく、私自身もオーナーがロイヤリティのことを「本部への上納金」と呼んでいるのを聞きましたが、そこを必要経費として見て、売上や利益を作っていくことに注力するのか、それとも本部に持って行かれる、という視点で見るのかで、経営そのものも変わってくるのではないか、と思います。

最後に

さて、ここまで、コンビニエンスストアのロイヤリティに焦点を当てて見てきましたが、いかがだったでしょうか。第8回は、今や馴染みある商品の一つともなった、「コンビニコーヒー」に焦点を当てていきます。そこから見えてくる各チェーンの戦略とは、一体どういうものなのでしょうか。
次回もお楽しみに!

フランチャイズ研究会 社会保険労務士・人材育成トレーナー 安紗弥香

ディズニーで5年間、最高の接客と人材育成を経験した後、CVSチェーン本部へ転職。7年間、4,000人超の社員、加盟オーナーの研修に携わる。その中で、店舗の職場環境向上と労務管理支援に活路を見出し、2012年、社会保険労務士登録、翌年独立。労務管理、採用支援、スタッフ育成研修と幅広いサポートには定評がある。著書に「Q&Aでわかる 小売業店舗経営の極意と労務管理・人材育成・事業承継」(日本法令)がある。