ハートマネー代表・ファイナンシャルプランナー氏家 祥美
2015-08-22 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
ハートマネー代表・ファイナンシャルプランナー 氏家 祥美

起業したい主婦必見!気になる「扶養と起業」の関係

 このコラムのポイント

今回のコラムは起業を考える主婦必見のお話です。起業するなら夫の扶養に入るかどうか・・その答え探しをしてみるといいでしょう。

フランチャイズWEBリポート編集部


専業主婦から起業して得たもの

こんにちは。キャリア35で起業に関するお金関連のアドバイスを担当しているファイナンシャルプランナーの氏家祥美です。私がいま、キャリア35で起業支援をしているのは、専業主婦から起業した自分の経験が大きくかかわっています。今回の本題に入る前に、私が起業に至った経緯をお話させてください。

私は大学卒業後、念願の旅行会社で楽しく仕事をしていたにもかかわらず、あっさりと24歳で結婚退職を選択。会社を辞めた後で、自分がいかに仕事を好きだったかに気がつき、自分の人生設計の甘さを悔やみました。
その後、長男が生まれて楽しい子育て生活が始まりましたが、住宅ローンと幼稚園代をきっかけに家計の見直しに関心が向き、次男の誕生後まもなくファイナンシャルプランナーの資格を目指しました。もともと自分の暮らしのためにとった資格でしたが、同じ資格を持つ仲間たちとの出会いがきっかけで、思いがけず起業をすることになりました。

ファイナンシャルプランナーとして本格的に仕事を始めて今年で11年目となりましたが、主婦から起業して得られたものは、計り知れません。お金はもちろんですが、自分に対する自信だったり、社会との接点だったり、素晴らしい人々との数えきれない出会いにも恵まれました。起業した当時、小学校1年生と2歳だった息子たちも、いまでは高校生と中学生となり、子育てにはほとんど手がかからなくなりました。小さく事業をはじめて子どもの成長とともに緩やかに事業も成長させていく、そんな起業スタイルに共感を持ってくれる方は少なくありません。

起業とは、仕事がないなら作ればいいという発想からくるもの

家計相談に来る女性たちの多くは、とても知的で勉強熱心です。ご相談に来る段階で、すでに食費のやりくりなどはやりつくしていることも多く、そうした場合、私ができるアドバイスは保険や住宅ローン、通信費などの固定費の見直しが中心になります。
もともと浪費をしていないので、固定費の見直しを中心とした節約効果はひと月あたり2万円前後が一般的。これでも十分意味はあるのですが、ご相談に来ている女性自身がいずれもう一度働いて月に8万円でも稼ぐことができたら、その経済効果は何倍にもなります。何よりその女性自身の持つ資源を生かすことができるでしょう。

子育て中の主婦の場合、すでに生活が子どもや夫を中心に回っていますので、子育てや家事との両立ができるのか、夫の理解が得られるかが仕事選びでとても重要になってきます。

子育てとの両立という意味では、子どもが幼稚園や小学校に行っている間にできる短時間のパートやアルバイトを見つける方法と、子どもを保育園や学童保育に入れてしっかり働く方法があるでしょう。認可保育園への入所は「働いていること」が大前提になっているので、仕事を探している段階で保育先を確保するのは困難です。このあたりがネックになって、働きたいけれど働けないでいる方は非常に多いのではないでしょうか。

こうした職探しの一環で、暮らしと両立しながらも、社会への想いをカタチにしたり、自分のスキルを活かしたりする働き方の選択肢のひとつに「起業」があがってきます。仕事がないなら作ればいい、そんな発想です。

主婦起業の方からよくある質問1:扶養のままでも起業できますか?

夫の理解が得られるかどうかでよく受ける質問のひとつに、「扶養のままで起業できますか?」というものがあります。いわゆる、103万円の壁、130万円の壁問題です。

103万円の壁(所得税の壁)

パート勤務の主婦の場合、年収が103万円以下であれば、
「給与収入103万円-給与所得控除65万円-基礎控除38万円=所得0円」
という式が成り立ちます。所得がないなら妻の所得税はかかりませんし、所得のない妻を扶養しているということで、夫は配偶者控除という税の優遇制度を利用できます。

では、妻が個人事業主で開業(※青色申告を利用)した場合はどうなるでしょうか?
「売上-経費-青色申告特別控除65万円-基礎控除38万円)=所得」
青色申告を利用していれば、売上から経費を除いた金額が103万円以下であれば、妻の所得税は発生しないことになります。理論上は起業した場合でも103万円の壁が成り立つことになります。

130万円の壁(社会保険料の壁)

パート勤務の主婦の場合、年収が130万円未満(もしくは労働時間が週に30時間未満)であれば、夫の社会保険の被扶養者でいられます。

では、妻が個人事業主で開業(※青色申告を利用)した場合はどうなるでしょうか?
こちらは税金ではなく、社会保険料の壁になるため、税金の控除は関係ありません。
「売上-経費=所得」が130万円未満であれば、被扶養者の対象と考えられます。

ただし、社会保険の運用は、各健康保険組合等によっても詳細が異なります。妻が開業届を出した段階で、社会保険の扶養から外すとしている健康保険組合等もありますので、あらかじめ夫の会社の規定を確認することをお勧めします。

扶養を外れて事業を拡大するのも視野に

「扶養のままでも起業出来る」というのは、主婦起業にとって一つの安心材料となります。まずはリスクを抑えて、できる範囲で小さく始めたいという主婦にとっては、扶養のままでのスタートは最初の一歩を踏み出しやすくするでしょう。

しかし、「売上を上げ過ぎてはいけない」という思いは、事業拡大への足かせとなります。本気でやろうと思ったら、扶養枠など考えずに思いっきり前進してほしいですね。

ハートマネー代表・ファイナンシャルプランナー 氏家 祥美

埼玉県出身、立教大学社会学部観光学科卒業。旅行会社に勤務後、専業主婦時代にファイナンシャルプランナー(FP)の資格を取得。2005年にFP会社の設立に参画。2010年に独立。現在、ハートマネー代表として、家計相談や講演、執筆活動を行う。「いちばんよくわかる!結婚一年生のお金」(学研パブリッシング)、「35歳を過ぎた女性に贈るこれからのお金のお作法」(秀和システム)ほか著書多数。キャリアカウンセラーの資格も持ち、一般社団法人キャリア35の理事として起業サポートも行っている。