フランチャイズ研究会 ARKコンサルティング・オフィス石川 和夫
2015-09-18 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
フランチャイズ研究会 ARKコンサルティング・オフィス 石川 和夫

開業前準備(人事面)

 このコラムのポイント

店舗ビジネスをする方は特に必見のないようですが、一緒に頑張ってくれるスタッフの定着率を上げるにはどうすればいいのか。開業前の今こそ見ておきましょう。

フランチャイズWEBリポート編集部


はじめに~加盟先の選定時点からスタッフの採用と育成を考えよう!~

フランチャイズビジネスの多くは専門知識や技術を持っていない人でも運営できるように、日常業務はシステム化されているのが一般的です。そのため、労働力はパート・アルバイト(以下:スタッフ)などが担っており、フランチャイズビジネスで成功できるかどうかはスタッフの採用と育成にかかっています。

しかし、フランチャイズビジネスを始める際にスタッフの採用や育成まで考え、計画を立て、加盟している人は少ないのが現状です。
そこで、フランチャイズビジネスの選定段階から開業までに理解・実行しておきたいポイントをわかりやすく解説します。

スタッフの「採用・育成」の重要性を理解しましょう

スタッフの育成と戦力化に欠かせないのが「定着化」です。良い人材を採用しても短期間で退職されてしまっては、戦力として育てることができません。

そこで、成功している加盟者の多くはスタッフの採用と同時に定着化にも力を入れています。そして、自分がワークシフトに入る時間を極力減らし、マネジメント(管理)する時間を確保しています。
次に、確保したマネジメント時間を勉強会やミーティングの開催、さらには自分自身の自己啓発に活用しています。

このような店ではスタッフの「働く満足度」がアップし、定着して戦力化が進むため、人時売上高(総売上高÷総労働人時)が高くなります。さらには、店全体に活気が生まれ、顧客満足度もアップするため、売上が向上して利益が出やすい店になります。

利益がより多く出れば、時給をアップするなどの待遇改善ができます。このような待遇はスタッフの「口コミ」で家族や友人、さらには近隣住民へと広がります。また、買い物をした時のスタッフに対する印象から、

「このような店で働いてみたい」
「子供にアルバイトをさせるなら、このような店でさせたい」
と利用者に職場を好意的に捉えてもらうことができるため、採用の困らない店になります。

開業に必要なスタッフ人員数は業種により異なります

フランチャイズビジネスの運営にはスタッフの活用が必要だと言っても、その必要人員数はビジネスの業種や事業所規模により異なります。その違いによって、費用としてかかる求人広告費やトレーニングのための人件費などが変わります。加盟業種を選択する前段階で運営に必要なスタッフ人員数をしっかりと把握しておきましょう。

必要な人員を確保するための費用計画を立てましょう

スタッフを募集する時の方法には「無料」と「有料」の2つの方法があります。無料には「ハローワーク(職業安定所)」「店頭の求人ポスター」「知人・友人などからの紹介」などがあり、有料には駅の改札口になどに置かれている「フリーペーパー」、「新聞折り込み広告」「インターネットの求人サイト」などがあります。

加盟者の多くは費用のかからない「ハローワーク」や「知人・友人からの紹介」などの募集媒体を活用しがちですが、有料の募集媒体も組み合わせて活用することが必要です。なぜなら、開業前の短期間で必要な人員数を採用しようとすると、無料の募集媒体だけでは選択できるほどの応募者数を集めることができないからです。

なお、有料の募集媒体は掲載スペースや期間、地域(配布)や回数、さらには広告代理店によっても価格は異なるので、事前に調べて置くことが必要です。

開業までのトレーニング計画と費用の見積もりをしよう

開業直前のトレーニングに必要な時間は業種により異なります。例えば、コンビニエンスストアであれば、一人当たり3時間×5日間=15時間程度がレジ打ちなど基本業務のトレーニングにかかる時間です。

スタッフの人数を20人とすると、共通業務だけで300時間×基本時給の費用が発生します。[仮に時給が900円として、合計27万円+交通費]

また、この他に早番(8時~17時)、遅番(17時~22時)、深夜番(22時~翌8時)ごとに行う作業のトレーニングも行う必要があるので、その時間分の時給も発生します。

これらのトレーニング時間は業種または加盟するチェーンごとに異なるので、本部の開発担当者や店舗指導担当者に目安となる時間を教えてもらったり、既存加盟者を訪問して実際にかかっているトレーニング時間をヒアリングしたりして、目安となる費用を把握しておいてください。

開業後のフォローアップトレーニングも予定しておこう

スタッフのトレーニングは開業後も続く場合があります。例えば、コンビニエンスストアの深夜業務などは開業前に体験できないため、開業後に加盟者や経験のあるスタッフが一緒にシフト入りして教える必要があるからです。

このような事例は業種やチェーンごとに異なりますので、本部担当者に今までにあった開業後のフォローアップトレーニングのケースなどを事前にヒアリングして、育成予備費を資金計画に計上しておくこともポイントです。

早期退職の原因を理解し、対応することで「定着化」を進めよう

開業して1~3ヶ月が経過した頃になると「退職したい」と申し出るスタッフが出始めます。その原因の多くは仕事や職場に対する「期待と現実のギャップ」です。

スタッフは求人サイトなどで得た情報や面接から、仕事や職場に対して自分なりのイメージを作っています。しかし、働き始めてしばらくすると、「人間関係が良くない(店長やマネジャーと合わない)」「思っていたより仕事がきつい」「給与が安い」など、イメージと異なる場面に遭遇してやる気が低下し、退職を考えるようになります。

退職を申し出るスタッフを減らすポイントは、開業してから2週間目~1ヶ月目に加盟者自らスタッフ一人ひとりと面談(15~30分間程度)を行うことです。そして、スタッフがどんなギャップを感じているのかを聞き出し、ギャップに対する共感や理解を示すと同時に、スタッフの働きぶりや仕事上の「強み(長所)」を認めたりすることが必要です。

ただ、この時期は開業準備と慣れない仕事で疲れていたり、時間に追われていたりすることが多く、「とても面談する時間など取れない!」と言う加盟者は多いものです。しかし、ここで面談をするか、しないかで、その後のスタッフの定着率とビジネス上の業績が決まります。

ぜひ、今回紹介したポイントを参考に開業前から「採用・育成計画」をしっかりと立て、この時期を乗り越え、フランチャイズ加盟によってビジネスと人生、双方の成功を手に入れていただきたいと思います。

フランチャイズ研究会 ARKコンサルティング・オフィス 石川 和夫

㈱セブン-イレブン・ジャパンにおいて、OFC(スーパーバイザー)として7年間勤務。のち、セブンイレブン3店とイタリアンレストラン2店を経営する会社の店長兼統括マネジャーとして勤務。2001年に人材育成コンサルタントとして独立。現在は、管理職者向けの部下育成力アップ研修、スーパーバイザー教育、講演、執筆を中心に活動中。経済産業大臣認定 中小企業診断士