販路企画 代表田口 勝
2015-10-14 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
販路企画 代表 田口 勝

躍進するコンビニエンスストアチェーンの強さの秘訣~Part.1~

 このコラムのポイント

コンビ二は飽和状態ーそうメディアなどでも囁かれていますが果たしてそうなのでしょうか。その実態についてせまった連載コラムです。

フランチャイズWEBリポート編集部


1.国内でも躍進しているコンビニエンスストアチェーン

国内のコンビニエンスストアチェーンは、飽和状態ではないかとささやかれ、実際に海外に活路を見出す動きが強まっていた―という近年のコンビニ業界。

しかし、業界最大手のセブン-イレブンを筆頭に国内の市場に再度着目してみると、国内で躍進を続けていいます。その強さの秘密をお話したいと思います。今からお話することは、現在の日本の人口減少、消費飽和社会でのマーケティング戦略にあり方の教本となるような事例と感じられるような内容でもあるのではないでしょうか。

2.国内の経営環境

国内のコンビニエンスストアチェーンの店舗は、以下のようになっております。

全店ベース 2015年8月店舗数 2014年8月店舗数 前年同月比
53,208店 51,367店 3.6%

JFAコンビニエンスストア統計調査月報:2015年8月より

消費飽和時代でも店舗数は+3.6%と増加。各チェーン、出店を加速していることが見て取れます。
店舗の売上高についても以下のような結果が出ています。

  2015年8月月間売上高
(百万円)
2014年8月月間売上高
(百万円)
前年同月比
全店ベース 922,609 876,601 5.2%
既存店ベース 844,183 829,813 1.7%

※全店ベース:オープン後1年以内の店舗+既存店
JFAコンビニエンスストア統計調査月報:2015年8月より

売上高についても全店ベース前年同月比で+5.2%。既存店ベースでも+1.7%という結果となり、チェーン全体としても新規出店で店舗数が増加し、売上が上がっているだけなく、既存店の売上も上がっていることで売上が伸びていることがわかります。

客数及び客単価の視点で見てもよくわかります。

客数:全店ベース+5.2%。既存店ベース+1.3%
客単価:全店ベース+0.05%
JFAコンビニエンスストア統計調査月報:2015年8月より

客数も客単価も両方を伸ばすことに成功しているのです。

コンビニエンスストアチェーンは人口が減少し、全体のパイが少なくなる中で更に店舗数を増やし売上を上げ、店舗数が増加し、競争が激化する中でも1店舗当たりの売上を上げていることがよくわかります。

つまり、国内の新たな市場、新たな顧客を開拓し、売上を上げているのです。

3.なぜ消費飽和時代でも躍進ができるのか

私はコンビニエンスストアチェーンの最大の躍進の秘訣は、『変化への対応』と思っております。ここで業界最大手のコンビニエンスストアチェーン、セブン-イレブンを事例にお話をしてきたいと思います。

日本型コンビニエンスストア発祥は1970年代。その当時は、「年中無休」「24時間営業」の小売店は非常に少ない時代。

1970年代は、「24時間営業」「すぐに食べることができる食料品」「暖かいお弁当が食べたい」そんなお客様のニーズに対応して、「24時間営業化」「おにぎりやお弁当の販売」「電子レンジ」を導入することでお客様のニーズの変化に対応し、成長を行ってきました。

1980年代になるとコンビニエンスストアへ「便利さ」が問われるようになり、「公共料金の取り扱い」や「コピー機」を導入。コンビニエンスストアが一つの「社会インフラ」へと変貌を遂げてきたのです。

1990年代は、「消費飽和」が始まり、「質を追求する」ニーズが増えてきました。そこで、「オリジナル商品」の開発に注力を始め、現在、コンビニエンスストアの商品は「美味しい」と言われるまでになってきました。

また、「ネットが普及」を始めた背景を受けて、「インターネットサービスの提供」も始まりました。

2000年代は、「少子高齢化」「世帯数の増加」「女性の社会進出」等の時代背景を受けて、更に「便利さの追求」「質の追求」「安心・安全」と言ったニーズが高まりました。

そのニーズに対応して、「保存料・合成着色料の削減」「オリジナル商品の強化」「ATM」や「電子マネー」「お食事配達サービス」等の対応を図ってきました。

つまり、「時代の変化」や「顧客のニーズの変化」に対応して、商品やサービスが変わり、「変化へ対応」を行うことでチェーン全体の売上が成長してきたと考えます。

4.変化への対応の源泉は「マーケティング戦略」と「徹底度」

この「変化への対応」を行う、源泉は実は「マーケティング戦略」にあります。私は、中小企業のマーケティング戦略立案のお手伝いをすることが多いのですが、この「変化への対応」が出来ている企業は実は少ないのです。

「マーケティング戦略」は「調査・分析」から「基本戦略立案」を行い「戦略策定」と3つの流れで成り立っております。これは大企業・中小企業関係なく、商品やサービスを販売していくためには、必要なものとなります。

しかし、多くは、「顧客」と「商品」と「販路」がミスマッチのケースが多く、商品やサービスが売れにくい状況となっているケースが散見されます。

今後、成長を続けるためには、このコンビニエンスストアチェーンのように、「時代の変化」に対応し、適宜「マーケティング戦略が見直される」ことが必要であると思います。

また、「変化への対応」を実現するには、フランチャイズビジネスでは、「徹底度」が大きく関与すると思っています。別に加盟者がいるフランチャイズビジネスでは、全てにおいて本部は間接マネジメントとなるため、より一層、加盟店様に「実行するメリット」をどのように伝え、具体的な手順を示すかが「成功の鍵」となっていると感じます。

5.まとめ

今回は、「躍進するコンビニエンスストアチェーンの強さの秘訣」の第1回として、現在のコンビニエンスストアチェーンの「現状」と「変化への対応」について内容をお話させて頂きました。次回以降、具体的な強さの秘訣について、このコラムの中でお話させて頂きたいと思っております。

「変化への対応」当たり前のことだと思われる方も多いと思います。しかし、コンビニエンスストアチェーンの強さの秘訣は何か?聞かれたら私は良くこのように答えています。

「当たり前のことを当たり前のように徹底していること」。

フランチャイズ本部の皆様は、「当たり前のことを徹底出来ているか」、加盟店希望の皆様は「当たり前のことを当たり前のように徹底していくことの重要性」を理解して頂ければ幸いです。

販路企画 代表 田口 勝

大学卒業後、熊本県の経営コンサルタント会社に勤務。マーケティング戦略立案・管理者研修等で中小企業のコンサルティングを担当。その後、業界最大手のコンビニエンスストアチェーン本部にて10年勤務、店長・スーパーバイザー・マネージャーを経験。退社後は販路企画を立上げ、商圏に基づくエリアマーケティング戦略立案・出店調査・FC本部展開支援・従業員戦力化研修、セミナー講演活動を行っている。