フランチャイズ研究会 中小企業診断士高木仁
2015-11-06 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
フランチャイズ研究会 中小企業診断士 高木仁

ブランドの商標登録【第三回】

 このコラムのポイント

フランチャイズパッケージでも重要な「商標」。この登録を怠たりトラブルに発展した本部のケースもあるのでぜひチェックしておきましょう。商標登録の必要性と登録方法がわかります。

フランチャイズWEBリポート編集部


はじめに

今回は、「未来のフランチャイズ本部に捧ぐ。フランチャイズ本部立上げの基本」の第三弾、「ブランドの商標登録」となります。

フランチャイズに加盟して事業を営むメリットとしては、そのチェーンのブランド(看板)の知名度や信用性を利用でき、その結果として集客が期待できる点があります。しかし、このブランド(看板)について、本部が商標登録をしていなかったばかりにトラブルが発生しているケースがあります。

商標登録の必要性

フランチャイズビジネスでは、本部と加盟者の間でフランチャイズ契約を締結します。通常、このフランチャイズ契約では、加盟者に対して商標やサービスマークの使用を許諾します(その対価として加盟者は加盟金やロイヤルティを支払います)。

このことで、加盟者は同一イメージの下で事業を行うことが可能となり、そのブランド価値を利用することができるようになります。この前提として、本部は、商標やサービスマークの商標登録をしておきます。商標登録をすることで商標権が発生し、他者に対して類似商標の使用を禁止することができるからです。

しかし、本部が商標登録をしていないとどうなるでしょうか。競合他社が、同一(または類似)の商標やサービスマークを使用しても中止を求めることができません。しかも、その他社が商標登録してしまうと、先に事業を始めていた本部であっても、商標を変更せざるを得なくなり、築き上げてきたチェーンの統一イメージやブランドイメージを維持することが難しくなります。

実際に、そのような問題が発生したケースがあります。先に事業を展開していた、ある有名な九州ラーメン店が商標登録を怠っていたところ、後から事業をスタートした競合店が同じ名称の商標登録をしてしまいました。その結果、本家は名称の一部変更を余儀なくされてしまったのです。

このようなトラブルを防ぐためにも、商標・サービスマーク等の商標登録をしておくことは不可欠なのです。

商標登録の方法

商標登録をするには、商標権を主張できる範囲を明確にしておく必要があります。「商品および役務(サービス)の区分」に応じて、商品やサービスを指定し、特許庁に出願します。このとき、本事業に対応する商品及び役務(サービス)に加えて、「35類」を必ず登録してください。

35類には、「経営の診断又は経営に関する助言」「市場調査又は分析」「商品の販売に関する情報の提供」が含まれています。フランチャイズビジネスにおいて、本部の事業領域として重要なものです。

そして、登録前には、まず登録したい商標と同一の商標が先に登録されていないか調査をしてください。登録されていると商標登録ができません。商標の検索には特許庁が提供している特許情報プラットフォーム(通称J-PlatPat)を利用してください。検索サイトは次のURLとなります。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage

事前調査として自分で検索することは難しくありませんが、実際に登録する段階では、調査も含めて、専門家である弁理士に相談されることをお薦めします。

フランチャイズビジネスにおける商標登録の重要性、登録方法の概要についてはご理解いただけたでしょうか。さて、次回は「マニュアルの作成」がテーマになります。フランチャイズビジネスにおけるマニュアルとは、どのような位置づけになるのでしょうか。楽しみにお待ちください。

 

フランチャイズ研究会 中小企業診断士 高木仁

1975年生まれ。1998年ソフトウェア開発会社に入社。システム開発を経験後、業務/ITコンサルに従事。2010年中小企業診断士登録。2012年カーネルコンサルティング事務所設立。FC本部の構築、本部機能の改革、FCマニュアル作成支援などに携わっている。専門分野は、ビジネスモデル改革、IT戦略立案、現場改善。著書として「フランチャイズ本部構築ガイドブック(同友館:共著)」など。社)東京都中小企業診断士協会認定フランチャイズ研究会幹事。