販路企画 代表田口 勝
2015-11-25 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
販路企画 代表 田口 勝

市場規模10兆円超!コンビニ業界強さの秘訣である人材教育にせまる

 このコラムのポイント

先月10月末、国内売上高が10兆円を超えたというニュースが報じられたコンビニチェーン(日本フランチャイズチェーン協会発表)。小売業界でも大きなマーケットを占めている同業界ですが、強さの秘密であるオーナー・スタッフなど人材教育を重んじているのが特徴です。

フランチャイズWEBリポート編集部


コンビニは本部スタッフとオーナー、それぞれに教育を施している!

フランチャイズの前提条件は、これまでのコラムでも書いておりますが、『間接ビジネス』ということです。フランチャイズ本部は、成功率の高い『ビジネスモデル』『商品』『サービス』をもっており、本部の成功モデルを活用して、商売を行うのが『加盟店(=オーナー店またはフランチャイズ店ともいう)』となります。(残念ながら、成功モデルとは言えないパッケージを提供する本部が多数あることも事実です)

『間接ビジネス』ということは、本部が既存店の売上改善を図ろうとすれば、『加盟店』を通じて売上改善を図らなければなりません。そこで必要なものが加盟店の『教育訓練』と本部社員のスーパーバイザー(=SV)の『教育訓練』となります。

片方だけ実施していても意味がありませんし、単発で実施しても意味がありません。『両輪』で『継続』して実施し続ける仕組みが本部としては必要となります。

成長を続けるコンビニエンスストアチェーン小売業という括りになりますが、実際はある種教育業の側面もあり、加盟店に派遣される本部のSVは、経営コンサルタント業を営んでいるとも言えます。

では、コンビニエンスストアチェーン本部ではどのような教育訓練を実施しているのでしょうか?加盟店(オーナー)と本部社員(SV)それぞれが受けている教育の内容にせまります。

加盟店(オーナー)向けの教育はSVや教育スタッフがつきっきり

コンビニエンスストアチェーン本部の加盟店教育は、種類も豊富であり、単発ではなく継続的に実施されています。その結果が、コンビニエンスストアチェーンの『徹底度』の改善に繋がり、お客様に『安心感』を与えることが出来ているのです。

これは、通常の店舗の経営指導員(SV)だけでなく、本部の教育スタッフも取り組み、全社として加盟店の教育を行う姿勢と仕組みがあると言えます。

1.加盟時初期教育 加盟店時には、ほとんどの本部で初期教育が実施されます。加盟された商売では素人の加盟店のオーナーでも出来るように座学知識だけでなく、実際のオペレーション業務を店舗でも実践するトレーニングを行っております。また、店舗経営で重要な従業員教育の実施方法まで学ぶことが出来ます。
2.SVによる継続した定期教育 初期教育はあくまでも、初期段階の知識と実務を学ぶ場であり、知識を経験に変える必要があります。そこでSVの定期訪問による加盟店教育は、開店までの準備段階から、実際の店舗運営時も含めて加盟された契約期間継続して実施されます。
3.各種勉強会 あるコンビニエンスストアチェーンでは、加盟店が集まる定期勉強会も開催しております。ここでは本部マーケティング戦略の伝達だけでなく、新しい商品の紹介、具体的な販売を上げる手法。また他の加盟店オーナー様の成功事例の共有も含めて実施されます。
4.商標展示会 大手コンビニエンスストアチェーンは商品展示会も定期的に開催をしております。商品展示会は、各種勉強会を更に大きくしたイメージで実際の、今後発売予定の商品の確認や売場政策だけでなく、本部のマーケティング戦略及びその背景を含めて教育を受けることが出来ます。
5.接客教育 従業員さんの接客技術を上げるための接客教育を本部が実施しているチェーンもあります。挨拶や接客の基本動作の教育だけでなく、お勧め販売の仕方等も販売技術向上の教育も実施しているのです。

本部社員(SV)はオーナー同様の初期教育を受けることから始まる

加盟店(オーナー)の教育を行うSVについても教育体制が整っているのが、コンビニエンスストアチェーンの特徴と言えると思います。コンビニエンスストアチェーン最大手の事例を元にお話します。

1.入社時教育 入社時教育は、加盟店オーナーの初期教育を受けるものと同じ内容でSVも教育を受けます。ここでは、コンビニエンスストアのオペレーション業務だけでなく、店舗運営教育も受けます。
2.直営店舗勤務 実際にオーナー夫妻と同じ条件で、店長や副店長として勤務を実施し、リアルな場で店舗経営を学ぶだけでなく、売上・利益を改善ができるSVになるための教育を受けます。また各種店長研修や副店長研修等が開催され、地区全体での営業会議や直営店だけの会議等場も教育として活用されております。
3.スーパーバイザー初期教育 直営店勤務を一定の基準をクリアした店長はスーパーバイザーとなるための教育を受けます。ここでは実際のSVになるためのフランチャイズの知識や加盟店を担当しているSVの仕事の仕方から実際のスーパーバイザーとしての業務を学びます。
4.スーパーバイザー定期教育 スーパーバイザーの定期教育は、会議の場を活用され、実施されております。全社員を集めての会議や地区毎の会議の中で、現在の自社のマーケティング戦略や方針の理解だけでなく、商品知識、他店舗での成功事例の共有等を受け、その内容を担当する加盟店にどのように活用していくかをスーパーバイザーが検討し、加盟店教育につなげているのです。

コンビニの強さの秘訣は『人材教育』も大きなウエイトを占める

ここに挙げた教育以外でも、多数の教育を加盟店及び本部社員共にコンビニエンスストアチェーン本部では実施しており、戦略の徹底とレベルアップを図っているのです。フランチャイズビジネスを実施している本部は、コンビニだけでなく力のかけ具合の差はあれど、このように人材教育に関して力を注いているので、先にも述べたように「教育業」とも言えるでしょう。

加盟店と社員の教育を徹底しているからこそ、『時代の変化』へ素早く対応し、徹底することで『ブランド化』し、成果を上げることができる。躍進を続けるコンビニ業界の背景には、『人材育成』が大きく関わっていると言っても過言ではありません。

販路企画 代表 田口 勝

大学卒業後、熊本県の経営コンサルタント会社に勤務。マーケティング戦略立案・管理者研修等で中小企業のコンサルティングを担当。その後、業界最大手のコンビニエンスストアチェーン本部にて10年勤務、店長・スーパーバイザー・マネージャーを経験。退社後は販路企画を立上げ、商圏に基づくエリアマーケティング戦略立案・出店調査・FC本部展開支援・従業員戦力化研修、セミナー講演活動を行っている。