販路企画 代表田口 勝
2015-12-16 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
販路企画 代表 田口 勝

店舗開業の上で知っておきたい商圏分析の基本。今さら聞けない「商圏範囲」とは

 このコラムのポイント

前回に続きエリアマーケティング理論のお話ですが、集客の上で店舗の立地条件は重要なウェイトを占めます。商圏調査の方法については前回のコラムでも解説しましたが、具体的に「商圏範囲」がどこからどこまでになるのかを今回はお伝えします。「商圏バリア」という言葉にも注目してみてください。

フランチャイズWEBリポート編集部


店舗の売上アップにかかせない「エリアマーケティング論」続きです

前回のコラムで、『商圏を知り』対応を行う『エリアマーケティング』を行うことで、まだまだ売上アップさせる余地があることをお話しました。

そもそも『商圏』とは何か?というと、店舗に集客できる範囲の意味ですが、今回のコラムでは『商圏範囲』の特定方法をお伝えしていきたいと思います。


店舗ビジネスで独立・起業をお考えの方は、店舗の商圏を調べて物件選定を行いますが、フランチャイズで開業される方は、本部が調査をしてくれる場合も多数あります。

基本的に、フランチャイズで開業される方は、本部にそのノウハウがあるため(ないところもありますが・・・)その情報をもとに、出店位置や物件を決めていけば良いと思いますが、自分で実際にその情報が本当に適正かは確認する必要があると思います。

また、自分のオリジナルブランド店舗で起業される方は、自身で調査し、分析し、戦略を考えないといけません。その初期段階としてまず、「わからない」と言われるのが、「自店の商圏範囲はどれくらいにすればいいですか?」という質問です。

商圏範囲とは何か?

商圏範囲とは店舗を中心に通常丸い円で、半径〇kmが第一商圏、〇kmが第2商圏として、それぞれの人口や世帯数等を調べて算出します。

そこに充分なマーケットボリュームがあれば出店を検討するといった形です。
業種毎の商圏範囲の目安はここでは書きませんが、ネット等を調べると大方見えてくると思います。

しかし、一つの目安とはなりますが、実は現場の実際のオープンした数値結果はそれだけではいかないのです。

商圏には、山などの「商圏バリア」が存在する

実際のオープン後に、お客様の住所を集めればわかることですが、来店されるお客様は、開業前に想定を行った丸い円とは異なった、いびつな形になります。
これはどのお店でも実際にやってみるとわかると思います。

それは何故かというと実は、満遍なく自店を中心にして円形で来店されると思っていても、お客様が来店しにくい環境が存在するからです。

それを『商圏バリア』と呼んでいます。

商圏バリアの代表例は、例えば『山』です。

山の自店と反対側に住宅があり、それが半径〇km以内の円の中に入っています。通常であれば、そこの人口も計算するのが普通だと思いますが・・皆さん本当に、来店される可能性は高いと思いますか?



山を越えて自店に来店する。自店と逆の山を越えた住宅のある方向に競合店がなければ、その可能性もありますが、同じようなコンセプトのお店であれば、来店されるということは『差別化』されていない限り、厳しくなります。

つまり、山向こうの人口をあてにできるかというと「そうでない」ということです。

円だけで、商圏を特定すると危険ということになります。
全くそういう障害がない立地が仮にあるとすれば、(私は見たことがありませんが・・・)別ですが、皆無に等しいです。
そうすると、地図上だけで、人口を図っても一つの指標にしかならず、実際には、現場を周り、見聞きした情報がないと、商圏を特定することが出来ないということです。
商圏バリアになりやすいものはそれ以外にもあります。

《商圏バリアとなるもの》
・山
・大きな川
・線路
・中央分離帯有
・2車線道路
・大きな学校や工場
・施設公園

そういった施設を確認し、商圏バリアとなっているのかを確認しなければ商圏の特定はできません。

「商圏バリア」はバリアにならない場合もある

商圏バリアを勘案して、実際の商圏を特定したものを『実勢商圏』と呼びます。
その『実勢商圏』をもとに人口調査等を行わなければ、正確な人口はわからないということをお話しましたが、それだけお話した商圏バリアも実は『バリア』にならない場合もあります。

この話を聞くと、『さっきの話はなんだったのだ』と思われると思いますが、実際には多数存在します。

例えば、先ほどの山向こうの住宅に適切なスーパーがない場合、当然、お客様は山を越えて来店されるでしょう。また線路とあっても、普段の生活導線で誰も抵抗なく、わたっている線路であれば、障害的な要素は少ないと思います。

このバリアは商圏バリアなのか、バリア的な要素は少ないのかは、正直、ケースバイケースのため、一概には言えませんが、見極めるコツはたった一つで、そこに住んでいるお客様の目線で考えるということだと思います。

この目線が非常に大事で、実際にその商圏バリアをじっと見て、お客様の動きや導線を分析する。また、そこに住んでいる方に聞いてみるといった行為が伴えば、誰でも見極めることができるとも思っております。

また商圏バリアを超えることが出来る条件は、あなたのお店をいかに『専門店』に出来るかがポイントになると思います。それだけ他店との『差別化』する。
そうすれば、お客様はあなたのお店に行く動機が出来ますので、多少の障害でも乗り越えるでしょう。

実勢商圏を把握するには特定と「現地に足を運ぶこと」

本日は、商圏の特定の仕方で一番注意して頂きたい『実勢商圏(実際に顧客がいる地域)』についてお話をさせて頂きました。これから出店される方は、自分の出店したいお店の商圏はしっかり特定し、現地に必ず足を運び確認しましょう。いろんなことが見えてきます。

私も商圏調査をコンサルティングで実施していますが、現地を確認しなければ、正直、ほとんどちゃんとしたアドバイスはできません。それだけ現地確認ということが重要なのです。多額の経費をかける出店。自身での起業もフランチャイズ起業も自分でしっかり商圏を確認し、特定した上で、起業をされることをお勧めします。

販路企画 代表 田口 勝

大学卒業後、熊本県の経営コンサルタント会社に勤務。マーケティング戦略立案・管理者研修等で中小企業のコンサルティングを担当。その後、業界最大手のコンビニエンスストアチェーン本部にて10年勤務、店長・スーパーバイザー・マネージャーを経験。退社後は販路企画を立上げ、商圏に基づくエリアマーケティング戦略立案・出店調査・FC本部展開支援・従業員戦力化研修、セミナー講演活動を行っている。