フランチャイズ研究会幹事 中小企業診断士西野 公晴
2015-12-18 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
フランチャイズ研究会幹事 中小企業診断士 西野 公晴

フランチャイズ本部として具備すべき立地評価・売上予測方法【第六回】

 このコラムのポイント

フランチャイズオーナーになる方が本部に対して求めるノウハウのひとつ、それは「立地診断力」。オーナー(加盟希望者)にとって、業績が上がりやすいと予測される立地を提案することがフランチャイズ本部の役割でもあるのです。そしてまずは、立地評価を独自に定める必要があります。では「立地評価とは具体的にどのように行うべきか?」といったことが基本からわかるコラムです。

フランチャイズWEBリポート編集部


「よい立地」の評価基準を持つことがフランチャイズ本部の役割のひとつ

今回のテーマは、フランチャイズ本部構築にあたっての「立地評価・売上予測手法の整備」についてです。
出店場所の評価ミスは加盟者の業績に非常に大きな影響を及ぼします。そのため、加盟希望者は立地評価に関して本部のサポートを大いに期待します。

この時、立地評価・売上予測結果を加盟希望者にどのように開示するか(しないか)は別途切り離して検討することとし、まずは本部として、自社なりのきちんとした立地評価基準を持たねばなりません。業種・業態により立地のとらえは異なりますが、特に顧客来店型の業態については、立地評価について社内で十分に議論を重ねることが必要です。

「面」・「線」・「点」で構造化して立地評価項目を整備する

立地評価とは「空間をトータルにとらえる概念」です。顧客の来店行動に影響を及ぼす様々な空間情報を体系立ててとらえます。やみくもにリストアップするのではなく、きちんと構造化して整理していくことが重要です。

立地評価基準の算出は、まずは基本統計量の集計から

スタートアップ期の本部では分析できる既存店舗数が少なく、新店の立地評価は創業者や立地調査担当者の経験則で行うケースがほとんどですが、既存店が増加すればデータに裏付けされた立地評価基準を持つことができます。

まずは、それまで出店した既存店(直営・FC)について、前述の立地評価項目ごとに実データを収集・整理し、平均・最大・最小などの基本統計量を算出することから始めましょう。そうすれば,最初は経験(アナログ)的にしかとらえられていなかった基準が,きちんと(デジタル)データとして裏付けされてきます。

統計解析手法を用いて分析を行う

店舗数が20店舗程度に増えてくれば,複数の立地評価データを一度に取り込んで,重回帰分析などの統計解析手法を用いて売上予測モデルを整備することができます。最低限の統計知識の習得は必要ですが、計算はエクセルに備わっている「分析ツール」の中の「回帰分析」で誰でも行うことができます。分析の流れは下図のようになります。

1枚のシートにまとめ、見える化する

下記に分析結果をもとに予測値を導き出せるように整理したある飲食チェーンのモデル式の例を示しました。重回帰分析を行った結果得られるものは、下記の図の赤枠で囲った範囲の係数ですが、これが求まることで、候補地の立地評価データ(緑の網掛け部分)をインプットすることで売上予測値(下図は月間来客数)が算出できます。

わが本部の「成功の方程式」として、立地評価のノウハウを「標準化・システム化・見える化」して欲しいですね。

さて、次回のテーマはフランチャイズビジネスの総本山とも呼ぶべき「契約書」がテーマです。どうぞご期待ください!

フランチャイズ研究会幹事 中小企業診断士 西野 公晴

東京学芸大学教育学部卒。株式会社インテージを経て1993年株式会社アール・アンド・シー設立。一般社団法人東京都中小企業診断士協会フランチャイズ研究会幹事(前会長)。JFAスーパーバイザー学校・中小企業大学校講師。立地診断・立地評価、売上予測モデルの構築指導、FC事業化コンサルティング等に活躍中。著書として「フランチャイズ本部構築ガイドブック(同友館:共著)」、「新版よくわかる!フランチャイズ入門(同友館:共著)」など。