販路企画 代表田口 勝
2015-12-23 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
販路企画 代表 田口 勝

「導線調査」が売上の60%!?立地調査で一番知るべき調査方法をプロが語る

 このコラムのポイント

フランチャイズ本部もその重要性を認識している『導線』。店舗立地を考える上で欠かすことのできない判断基準ですが、個人起業家の方はあまり意識をしていない方も多いのだとか。なぜ調査をする必要があるのか、その理由をご紹介します!

フランチャイズWEBリポート編集部


導線調査とは何か?=人の行動を現場で見て調査すること

前回のコラムで、『商圏の特定の方法』についてお話をさせて頂きました。

今回は、商圏調査の手法の一つとして私が最重要と考える『導線調査』についてお話をしていきたいと思います。

『導線調査』とは『お客様が目的を達成するためにどのようなルートを使っているか』調査をすることです。

例えば、スーパーを出店したいとします。

お客様となり得る可能性がある方が、通勤で駅を活用しており、そのお客様の帰りに立ち寄ってもらいたいとします。そうするとそのお客様がどのルートを使って自宅まで帰宅しているかを知り、そのルートに出店をすれば、立ち寄って頂ける可能性が高いという考え方です。

そのルートを知ることが簡単に言うと『導線調査』となります。

『導線調査』は非常に奥が深く、商圏調査で実は人口を調べたりすることより、一番重要なことであると私は思っています。当然、パソコンでデータをにらめっこしていてもこれはわかりません。あくまでも現場調査が重要となります。

今回は『導線調査がなぜ重要なのか?』ということと『交通発生源』についてお話をしたいと思います。

導線調査が「売上6割」といわれる理由は失敗による経費流出をふせぐため

導線調査は、非常に時間がかかり、コツや経験が必要になります。しかし、一番重要な理由は次のデータを見て頂くと良くご理解頂けると思います。

お店の前を通りかかって38.8%、看板表示を見て21.5%を足すとお店と看板の存在で60.3%となっており、いかに立地と店舗の視認性が大事かわかると思います。逆に言うと、どれだけ販促をうっても、立地が悪ければ効果は少ないということです。

更に考えると以下のことがわかると思います。

『お店の前を通りかかって』ということは『お店の前の道を通って』ということですから、お店の前をお客様が徒歩や車等で通らなければ、気づかれないということです。

つまり一番大事なことは、導線ということになります。また、看板・表示も導線を考えた看板を設置しなければ意味がないということです。

これを経費に置き換えると更にわかると思いますが、上記の要因の中で一番コストがかかるのが家賃であり、立地が大事ということになります。またやり直しが効かないのも立地であるため、いかに重要かがご理解して頂けると思います。

そのためフランチャイズ本部チェーンでは導線調査を一番重要視しており、本部開発スタッフが充分に現地で調査を行うチェーンが多いのです。

しかし、個人起業であれば、充分に自分自身が確認する必要があります。結論としては『導線調査』こそ、売上の約60%を決めるということになります。

これは商圏調査ソフトでは全くわかりません。商圏調査はあくまでも人口を表現するだけのものであり、現場調査が肝となる理由です。

交通発生源とは何か?=駅、オフィス街など、行動の源となるもの

導線調査の重要性はご理解頂いたと思いますが、次は、実際にどのように調査するかということになります。そこで必要になる考え方が『交通発生源』という考え方です。全ての人間の行動では、出発点と目的点があります。

先述のスーパーの事例では、出発点は駅であり、目的点は自宅ということになります。その交通が発生する源が『交通発生源』というものです。この『交通発生源』を特定することが『導線調査』で一番重要なこととなります。交通発生源は自店が出店したいと考える物件に影響を与えるものです。

次の事例のものが交通発生源となりえるものです。

1.駅
2.住宅街
3.大型商業施設や百貨店
4. 大型レジャー施設等
5. 交差点
6.オフィス街  等

つまり、そこには人がいて、人が何かの目的で行動する起点であり、目的点となり得るものです。その流れを調査することが導線調査というものになります。

この点と点を結び付けて、どこの導線がよく利用されているのか?を調べるのです。その導線が多いほど、主導線になりますし、主導線以外でも活用される、副導線があります。当然立地は主導線の方が良いですが、家賃の問題も出てくるのが実情です。逆に利益の点で副導線を選ぶことも戦略として成り立ちます。

商売で失敗したくないなら立地、ひいては導線調査を行うべし

今回は、導線調査についてお話を致しました。フランチャイズチェーンに加盟される方は、本部がその重要性を非常に認識しているチェーンが多いため、あまり心配することはありませんが、個人起業家の方は、立地や導線を非常に軽んじておられる傾向が非常に強いと感じます。

現在相談に来られる方の多くが、商品や販促の相談は多いですが、立地という視点がありません。結果として閉店が後を絶えない原因となっており、これから起業される方は是非、充分に時間をかけて調査をされることを期待します。

販路企画 代表 田口 勝

大学卒業後、熊本県の経営コンサルタント会社に勤務。マーケティング戦略立案・管理者研修等で中小企業のコンサルティングを担当。その後、業界最大手のコンビニエンスストアチェーン本部にて10年勤務、店長・スーパーバイザー・マネージャーを経験。退社後は販路企画を立上げ、商圏に基づくエリアマーケティング戦略立案・出店調査・FC本部展開支援・従業員戦力化研修、セミナー講演活動を行っている。