販路企画 代表田口 勝
2015-12-30 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
販路企画 代表 田口 勝

元セブンイレブンSVが語る!消費飽和時代に売れるための「3つの法則」

 このコラムのポイント

日本における高度成長経済期は、戦後の1955~73年の約20年。この間にスーパーマーケットの成長もありましたが大量生産大量消費の時代になったのがこの時代といわれています。その後、1970年代からはコンビ二急成長の時代に。それから40年、現代日本は「消費飽和時代」ともささやかれているのです。そんな時代に対応すべく今、小売業を始めとする店舗経営者が意識しておきたい対策について触れているコラムです。

フランチャイズWEBリポート編集部


商品が売れない理由は何だろう?

前回までのコラムでは商圏調査導線調査商圏バリア等の方法をお話してきました。

商圏調査を行う理由は『立地判断』だけでなく、『お客様を知り、自店のマーケティング戦略』を立案することが目的となります。

しかし、商圏を知り、お客様を知っただけでは戦略を立案することが出来ません。

『競合を知り』、『自店を知る』必要があります。

それは何故か?実は『商品が売れない時代』と関係があります。
なぜ商品が売れなくなったのか?その理由は大きく言うと3つあると考えております。

商品が売れない時代になった背景3つ

1.消費飽和時代に入った

『消費飽和時代』と言われ、『需要と供給のバランス』が崩れ、『供給過多』となり、お客様が消費を起こさない。つまり『欲しいものがなくなってきている時代』になってきているということです。

2.競争の激化

更に類似競合も多く、広告もどこでも出す時代。『競争激化』している状況です。ここ最近では『広告効果』が非常に薄れてきていると言われています。同じような業種がたくさんあり、お客様もどこを選んでいいのかわからない時代です。

3.詐欺事件や粗悪品の横行で、消費者がサービスを信用できなくなった

ネットが普及するにつれて、詐欺事件や粗悪品が横行しているというのも事実です。以前は人と人が面と向かって商売を行っていましたが、商品も写真だけで決済する時代となり、同時に不信感も溢れています。

調べものはネットで調べればいい時代にもなってきましたが、逆に情報があふれ、どれが真実かわからない時代にもなってきています。

つまり、お客様が売り手側を基本信用していない時代となっているのです。

そんな時代ですから、『ただ商品を出しました』であれば、お客様に気づいてももらえませんし、何がいいのかもわからない。信頼おけるところなのか?という疑いをもっているというのが実情であると思います。

しかし、売上を伸ばしている企業やお店はたくさんあるのも事実です。
お客様が全く商品を購入しなくなったということもありません。

つまり、『消費飽和時代』でも売るための戦略があるのです。
この時代背景を考えると現在のマーケティング戦略には次の3つのポイントが入らないと戦略として機能しないと思っております。

消費飽和時代に「商品」を売るため意識すべき3つのこと

1.消費者に「気づき」を与えること

お客様は『欲しい商品がない』のではなく、『自分が欲しい商品がわからない』と思っています。

『どの商品が自分の悩みや欲望を満たす商品』なのかがわからない
ということは、『この商品がお客様の悩みや欲望を満たす商品ですよ』と教えてあげないといけないということです。

更に、それがネットという膨大な情報の中で御社の商品に気づいてもらわないといけない時代。競合も溢れた中で御社の商品に気づいてもらわないといけない時代。

そういう時代では、パッと『私のことだ』と気づいてもらわないといけないのです。
そこで最近良く言われるのが『キャッチフレーズ』になります。

しかし、『キャッチフレーズ』は『皆さん』と呼び掛けても、お客様は気づいてくれません。
『あなた』と呼びかけないと気づいてもらえないのです。

つまり、『お客様の絞り込み』が必要になります。お客様の絞り込みは、『年齢や性別等』での絞り込みをする場合もあれば、『ニーズ』で絞り込む場合もあるでしょうし、『利用シーン』等で絞り込む場合もあると思います。

ここで活用するのが実は、『商圏調査』で調査を行ったデータとなります。
自店の商圏の特性を知り、どのお客様に絞り込みを与えるのかを徹底的に絞り込みを行う必要があります。

2.差別化する

消費飽和時代に売るための2つのポイントは『差別化』であると思います。
『競争激化』し、ニーズはお客様にあっても、どの商品が良いのかお客様がわからないという状態になっているからです。

そのためには、お客様に購入するための『判断基準』を与える必要があると思います。
ということは当然、比較検討するものがあるわけですから、競合を知り、自店の強み・弱みを分析していないと差別化戦略は取れないということなります。

そこで重要となるのが、『競合調査』と『自社分析』となるのです。

『ポータルサイト』や『比較サイト』が増えているのは、お客様の判断基準を促す大きな手段となっているからであると思います。
しかし、『差別化』という『全く違うことをしないといけない』と誤解が多いのが現状であると思います。

私は、『差別化』とは、『絞り込んだお客様』が購入する際の『判断基準』を与え、『他社よりも優位』であることを伝えることであると思っております。

3.ブランディング

3つ目はブランディングです。これは、お客様が信用していない時代だからこそ、ブランディングが必要であると思っております。よく、ロゴマークとか、パッケージを変えることがブランディングであるとかいう話がありますが、全く違うと思っています。

ブランディングされた状態は、〇〇と言えば〇〇(御社の商品)という状態です。
それが広く伝われば伝わる程、お客様は信頼して、購入してくれるというものです。

ブランディングを実現するためには、『絞り込んだ顧客』のニーズに『差別化』が実現できている状態が前提にあります。
そして、その評価を『他者が行うこと』であると思っております。

信頼できる芸能人が『〇〇は美味しい』と言えば、それを信用して大きく商品を購入する人が増えます。皆様のご存じのことと思います。つまり『他者評価』なのです。
『口コミ』が効果的と言われるのも『他者』の『評価』で成り立っているのです。

「商圏」、「競合」、「自店」を知り消費飽和時代を乗り切りましょう!

今回は、『消費飽和時代』に商品を売る為に必要な3つのポイントをお話しました。
今後のコラムで詳細を1つずつお話していきたいと思いますが、3つのポイントをもとにした戦略を立てるためには、『お客様を知る』=商圏調査、『競合を知る』=競合調査、『自社を知る』=自店分析が重要となります。

フランチャイズ本部を構築する際には、このマーケティング分析を徹底しますし、個人起業家は、起業を行う前までに検討すべき課題であると思っております。

厳しい時代ではありますが、この3つのポイントを押さえた戦略は来年も続くと考えます。また、これを実行すれば、まだまだ売上を伸ばせる余地があることも実体験を踏まえて理解しております。是非、年末・年始に一度そういった視点で検討してはいかがでしょうか?

販路企画 代表 田口 勝

大学卒業後、熊本県の経営コンサルタント会社に勤務。マーケティング戦略立案・管理者研修等で中小企業のコンサルティングを担当。その後、業界最大手のコンビニエンスストアチェーン本部にて10年勤務、店長・スーパーバイザー・マネージャーを経験。退社後は販路企画を立上げ、商圏に基づくエリアマーケティング戦略立案・出店調査・FC本部展開支援・従業員戦力化研修、セミナー講演活動を行っている。