販路企画 代表田口 勝
2016-01-06 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
販路企画 代表 田口 勝

元セブンイレブンSVが語る!競合に勝つための「差別化戦略」とは

 このコラムのポイント

マーケティング用語でもかかせない競争戦略の一つである「差別化戦略」(マイケル・ポーター提唱)。今回はその定義と実例、「3C分析」や「4P」などの専門用語まで。店舗経営の上で知っておきたい戦略の基本がつまっているコラムです。元セブンイレブンのOFC(SVと同義)である経営コンサルタント、田口勝氏に解説いただきました。

フランチャイズWEBリポート編集部


経営における「差別化」とは何か?

前回のコラムで消費飽和時代に重要なことは『気づき』『差別化』『ブランディング』であることをお話致しました。今回はその中の『差別化』についてお話をしたいと思います。

中小企業様の販路拡大についてご相談に応じていると、『差別化』についてお話をすることが多々あります。特に行政機関からの依頼で専門家として派遣される際にはその傾向が強いと思います。

ほとんどのご相談が『売上が上がらない』『近くに大手の〇〇ができて売上が下がってきている』というお話を頂くことが多いからです。

その際に、必ずお話をするのは、お客様があなたのお店に『いく理由は何か?』ということです。つまり理由がなければ、スケールメリットがあり、信頼性が高い大手に行くのは『当たり前』のことだと思います。

立地の重要性についてもお話しましたが、当然、大手の方が、家賃が高い立地でも出店が可能であり、特に零細企業においては、立地面で大きく差別化することが困難であると言えます。

商圏において、競合となる店舗が全くない地域であれば、普通に店を開けているだけで、売上が上がるかもしれません。しかし、そのようなエリアはほぼ稀であり、必ず競争が発生しています。

その競合に勝つ戦略が『差別化戦略』となるのです。
しかし、『差別化戦略』というと他社と全く違うサービスや商品を提供しないと差別化できないと思われている方もいると多い状況ですが、果たしてそうなのでしょうか?

差別化戦略の具体例(美容室経営の場合)

例えば、美容室があるとします。商圏内の競合の美容室は19時で閉店するとします。そこが事業所立地であるとします。会社帰りに美容室によるのは困難でしょう。
しかし、営業時間を21時までにしていればどうでしょうか?

会社帰りに美容室に行きたいというニーズがあれば、その店舗は会社帰りのOLさんに向けた美容室サービスをメインに差別化しているということになります。

これは営業時間をただ2時間変えただけです。これでも会社帰りに美容室に行きたいOLさんからすれば、あなたのお店に行く動機となるのです。つまり差別化されているのです。

ここで重要なのは『商圏の中のお客様のニーズ』と『他社がそのニーズに対してどう対応しているのか?』という2点です。

重要なことは、この『お客様のニーズに対してどの部分で他社よりも優位性』を出すかではないかと思います。これが『差別化戦略』なのです。

差別化戦略を立てるために必要な3つの視点「3C分析」とは

ではどのようにしたら、差別化戦略が立案できるのでしょうか?

ここで重要なことが実は、『商圏調査=お客様を知る』『競合調査=敵を知る』『自店分析=己を知る』という3つであると思います。この3つの視点をマーケティングでは3C分析と呼んでいます。

3C分析で必要な調査と分析

1.商圏調査

商圏調査で一番重要なことは、人口等を調べるということではなく、お客様のターゲットとそのニーズや利用シーンを知ることであるということをコラムの中でお話をしてきました。

つまり、『商圏』を知らなければ、差別化戦略は立てることは店舗型ではできないのです。ですから、『商圏調査』が非常に重要なのです。

これは今までお話をしてきましたので、ここでは割愛致します。

2.競合調査

次に、競合を知らなければ差別化戦略は絶対に立てることができません。
よく、開店前のプレオープンに立ち会うことが多いですが、その前にセレモニー的なものを行うことが多くあります。その際に店舗の経営者の方から良く言われる挨拶です。
『当店は地域一番店を目指します』この宣言は非常に良いことなのですが、ここで疑問をもって頂きたいのです。

『何で地域一番店を目指すのか?』売上なのか?接客なのか?
『何をもって地域一番店であることが達成したと判断するのか?』
つまり、実務では競合の売上を予想できなければ、売上で一番になったともわかりませんし、競合の接客レベルがわからなければ、一番になったこともわかりません。

競合調査がいかに重要であるかをご理解頂けると思います。
競合調査は主として競合の強みと弱みを調査します。
どんな大手でも強みもあれば弱みもあります。

3.自店分析

次に自店を知るためには、自店分析を行わなければなりません。
自店の強み・弱みは何かを分析するのです。
ここで重要なことは、競合調査と同じ視点で自店を客観的にみることです。

この『自店の他社よりも強みになる部分』を『商圏内のお客様のニーズに向けて戦略をうつ』ことを私は『差別化戦略』であると思っています。

競合調査で調査すべきことは4つの視点「4P」

前項2にもある、競合調査で調査すべきは4つの視点です。それは『商品』『価格』『販路』『販促』で、これをマーケティングの4Pと言います。それに加えて店舗型は『立地』が加わります。

この5つの視点のどこで差別化するかを決めるのです。1つで差別化する場合もあれば、2つの場合もあります。

ここで重要なことは競合を調査する場合には、商圏内の最低3社以上を調査して頂くことをお勧めしておりますが、その前段階の準備です。

一般的にはチェック表で調べるという話になりますが、現場での調査はそのようにはいきません。そこで重要なことは、事前に『商圏のターゲットとお客様のニーズから自店の強み・弱み』を抽出し、事前に『この部分で差別化できるのではないか?』と仮説を立てて、調査をすることです。

そうしなければ、非常に浅い『競合調査』となってしまい、競合の強み・弱みを把握することができません。あくまでも調査は裏付けをとるということが目的となります。

3C分析を意識して差別化戦略を練りましょう

今回は、差別化戦略についてお話致しましたが、非常に重要な戦略であり、実はあまりこの視点を意識してマーケティング戦略を立てている企業様にお会いするケースは少ない状況です。フランチャイズ本部も成長を行うにはこの『差別化戦略』が非常に重要であります。

これから起業される方は一番大事な戦略となります。
是非、この年始の機会に再度、『商圏調査』『競合調査』『自店分析』を通して『差別化戦略』を検討されることをお勧め致します。

販路企画 代表 田口 勝

大学卒業後、熊本県の経営コンサルタント会社に勤務。マーケティング戦略立案・管理者研修等で中小企業のコンサルティングを担当。その後、業界最大手のコンビニエンスストアチェーン本部にて10年勤務、店長・スーパーバイザー・マネージャーを経験。退社後は販路企画を立上げ、商圏に基づくエリアマーケティング戦略立案・出店調査・FC本部展開支援・従業員戦力化研修、セミナー講演活動を行っている。