フランチャイズ研究会 中小企業診断士池田安弘
2016-01-08 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
フランチャイズ研究会 中小企業診断士 池田安弘

多店舗展開するなら知っておきたい。フランチャイズ契約書作成のポイント【第七回】

 このコラムのポイント

多店舗展開をするフランチャイズ本部が知っておきたい「フランチャイズ契約書」の作成ポイントについてわかるコラムです。契約書に盛り込みたい規定や作成時に注意しなくてはならないこと(独占禁止法にふれないように)にも触れられているので、フランチャイズ展開をお考えの企業様、ご一読を。

フランチャイズWEBリポート編集部


フランチャイズ契約書の内容は「矛盾があってはいけない」

フランチャイズ契約書は、契約書+契約書付属書類及び法定開示書、営業関係で使用する書類や資料の全体から構成されるものだということを最初に理解していただく必要があります。これらの一連の書類の内容には絶対に矛盾があってはいけません。

フランチャイズ契約書作成の前提

フランチャイズ契約書を作成する上で、本部オーナーが下記の「フランチャイズビジネスの本質を正しく理解していること」は重要です。

1.本部はフランチャイズパッケージを販売する事業者であるということ
2.フランチャイズビジネスは、加盟店の成功なくして成立しない。まず加盟店が成功し、結果的に本部が成功するビジネスだということ
3.フランチャイズパッケージは環境変化に対応して更新されなければならない
4.本部のビジネスモデルは変更される可能性がある

フランチャイズ契約書はこうしたフランチャイズビジネスの本質を踏まえて、本部を成功に導く(前提として加盟店が成功する)ものでなければなりません。

フランチャイズ契約書の構成要素

フランチャイズ契約書に絶対に記述することが必要な要素には次のようなものがあります。

1.主要な用語の定義 ⇒ 契約書の正しい理解のために必要です
2.本部事業の定義 ⇒ 競業禁止規定の禁止項目に当たります
3.相互の独立性 ⇒ 加盟者が事業計画を自ら作成し本部に約束する方法もあります
4.本部の知的財産権の範囲 ⇒ 守秘義務規定の内容と大きな部分で重なります
5.金銭の支払い義務 ⇒ 加盟時に支払う金銭、加盟後に支払う金銭についてその性格と金額、支払方法、遅延した場合のペナルティを決めます
6.契約期間  ⇒ 契約の発効日、終了日、更新についての規定
7.加盟者の義務 ⇒ 契約の遵守、研修の終了、マニュアルの遵守、マーケティング
8.本部の提供するシステム ⇒ 加盟店の継続的経営を支える本部システムの定義
9.契約解除条項 ⇒ 改善指示、契約解除予告、契約解除に関する条項
10.契約終了後の措置 ⇒ 契約終了後の加盟店の手続き、義務を定めておきます
11.損害賠償責任 ⇒ 加盟店が負うペナルティのリスクを明示しておきます

上記が代表的な項目になります。加盟者が法人の場合は、加盟者の経営権の譲渡、経営者の交代などに関する規定も必要です。個人の場合は事業承継の手続きも決めておく必要があります。

加盟店の成功を支える規定

重要なことは、フランチャイズ契約で本部が加盟店に負わせる義務は「加盟者の成功のために必要不可欠な事項である」こと、です。加盟者が事業に専従し、独自のマーケティング活動や従業員の確保、教育を行うのもそれが加盟者の成功に不可欠な要素であるからです。

本部の自由度を確保する規定

本部は将来的にエリア本部制を採用したり事業分割、事業譲渡を行う可能性もあります。そのとき、契約書上の本部の地位を第三者に譲渡できるという項目を入れておくことは本部の経営戦略上の自由度を確保するために重要です。

独占禁止法のガイドラインとリスク開示

本部は、契約書上での自らの権利を守ろうとするあまりに加盟者に対して過大な負担を要求する契約書を作りがちです。こうした契約書は独占禁止法上の、優越的地位の濫用や拘束条件付き取引、再販売価格の拘束など不公正な取引制限と見なされる可能性があります。

また、実際のパッケージ内容と加盟時の説明(営業資料)が大きく異なっている場合、欺瞞的顧客誘引とされる可能性があります。こうしたリスクを排除するためには、加盟希望者に対してフランチャイズ契約に伴うリスクを明確に開示してゆく「リスク開示書」を提示することは有効な方法です。

さて、次回のテーマは「加盟店開発」です。どうぞお楽しみに!

フランチャイズ研究会 中小企業診断士 池田安弘

1955年広島県福山市生まれ。「いけだ経営デザイン研究所」代表。相模女子大講師。 一般社団法人東京都中小企業診断士協会副会長、中小企業診断士として、創業支援、経営改善、計画作成支援、新分野進出支援、チェーンストア化支援などを行う。FC本部設立支援の他、海外のFCパッケージの日本導入支援や日本のFCパッケージの海外展開支援にも実績がある。