株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役松下 雅憲
2016-01-31 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

マクドナルドの元社員が語る!繁盛店になりたい店舗経営者が知るべき「真の売上公式」

 このコラムのポイント

繁盛店になるために必要な売上アップの方程式ってなんだろう・・。一般的に「客数×客単価」という公式が紹介されていますが、その概念にとらわれすぎないようにすること。この独自の論をマクドナルド元社員の松下雅憲氏が語るコラム。売上アップには「5つの力」が必要なので、何が必要なのかチェックしてみてください。

フランチャイズWEBリポート編集部


ビジネスを継続させるために必要な「売上」。その公式とは?

「みなさん、売上は、何掛ける何でしょうか?」

私は、経営コンサルタントとして講師をつとめるセミナーや研修でこの質問をよくします。
さて、読者の皆さんはなんと答えますか?
多くの方がこのように答えると思います。

「客数×客単価」

正解です。正しい「売上公式」ですね。
たしかに売上は、客数と客単価を掛けたものです。
だから、売上を伸ばそうと思うときには、客数をどう増やすか?客単価をどう増やすかを考えます。
では、なぜ客数なのでしょうか?なぜ客単価なのでしょうか?
そこで私は次の質問をします。

「その根拠は何でしょうか?」

残念ながら、なぜ客数を伸ばすのか? なぜ客単価を伸ばすのか?についての根拠まで答えることの出来る方はさほど多くはありません。

客数を伸ばすにも、客単価を伸ばすにもその元になる根拠が必要なのです。
根拠があれば「成功確率」はないときに比べて格段にアップします。
たとえ上手く行かなくなっても「根拠」があれば、どこかがずれていることがわかるのです。

マクドナルドの事例から見る「現状の経済ニーズ」に合わせた価格戦略とは

かつてマクドナルドが、サンキューセット(ハンバーガー+ポテト+ドリンク=390円)を販売したことで始まった売上向上策は、客数を「圧倒的に」増やすことで総売上を伸ばす作戦でした。

これは、円高で原材料価格が低下したことと、その円高による不況が起こりつつあった世の中には価格低下ニーズが高まっていたのです、そこで一気に価格を下げることで、1セットあたりの利益を減らしてもそれ以上の客数を獲得することで、利益を増やすことが出来るという「根拠のある」戦略だったのです。

しかし、世の中の多くの「客数アップ作戦」「客単価アップ作戦」には、このような考え抜かれた戦略があまり見受けられません。

単に、「客数アップだ!」「いや時代は客単価だ!」と言う短絡的な作戦をとる企業が多いように思えるのです。
「客数アップ」と「客単価アップ」では、作戦は180度違います。
つまりその根拠も180度違うのです。

売上アップを本質的に叶える公式は「ポテンシャル」×「吸引力」

では、その根拠はどうやったらわかるのでしょうか?
実は、売上の公式にはもうひとつ全く違う切り口の考え方があります。

「売上=ポテンシャル×吸引力」

これは、ポテンシャル「商圏内の潜在顧客の質と量」に対して、吸引力「お店の持つお客様を引き寄せる力」がどれだけ発揮出来ているかで計算するという考え方です。

ポテンシャルが高くて、吸引力が大きい時。売上は大きくなります。

逆に、ポテンシャルが低くて(潜在顧客数が少ない)吸引力が小さい(お客様を引き寄せる力が小さい)時には、当然ながら売上は小さくなります。
非常にシンプルなかけ算式なのです。

ポテンシャルとは?

では、ポテンシャルについて、もう少し詳しくお話ししましょう。
ポテンシャルの考え方の軸になるのは、「商圏」と「ターゲット」です。

「商圏」とは、既存店の場合は、既存のお客様の80%程度が「いる」範囲のことです。「いる」とは、一般的には、「住んでいる場所」を指すことが多いのですが、私は別の定義を使っています。

私が使っている商圏の定義は、「お客様がお店に来店される直前にいた場所と直後に行く場所のどちらか近い方を地図上に印をつけ、その印の内、お店から近い80%を商圏とする」という考え方です。

名前をフロムツウ商圏(from-to商圏)と言います。

この考え方は、実は私が以前店長やフランチャイズ担当を勤めたマクドナルドの商圏の考え方からきています。

マクドナルドは、この考え方を元に商圏のポテンシャルを計算し、吸引力の一部と掛け合わせて新店開発時の売上予測を行っています。

「商圏」の定義には、もうひとつ別の考え方がありますが、それについては、次回のコラムで詳しくお話しすることにいたします。お楽しみに。

吸引力とは?

さて、では次は、「吸引力」についてお話ししましょう。
吸引力とは、先ほど「お店の持つお客様を引き寄せる力」と言いました。

この力は、5つのカテゴリーに分けられています。

それは、「場所の力(プレイス)」「商品の力(プロダクト)」「ひとの力(ピープル)」「価格の力(プライス)」「販促の力(プロモーション)」の5つです。

お店は、この5つの力のいずれかもしくはその組合せによってお客様を吸引しているのです。

見方を変えれば、お客様は、この5つの力から「あなたの店の特徴」を感じ選んでいるのです。つまり、この5つの力を高めていくことで、多くのお客様に選ばれるようになると言うことです。

この考え方だと、単純に「客数」や「客単価」で考えるよりも具体性が高まりますよね。

具体性が高まると言うことは、「根拠のある具体的な行動が出来る」と言うことです。だから「成果が出やすい」のです。

売上アップにつながる!吸引力を上げるための「5つの力」

1.場所の力(プレイス)

場所の力とは「出店場所の立地」のことを指します。駅前なのか?商業施設の中なのか?郊外の独立店舗なのか?と言うような立地場所の良し悪しが「場所の力」の基本です。

また、お店の看板、外観、内装、客席、駐車場などのデザインや機能もこの場所の力に含まれます。
お客様にとって、「わかりやすく」「行きやすく」「入りやすく」「使いやすく」「魅力的である」ことが、この場所の力の要因になります。

これらの総合的な「力」が、お店ごとの「場所の力」の違いとなります。

2.商品の力(プロダクト)

商品の力とは「お客様が購入される商品・サービス」のことを指します。
この商品の力が直接の「売上」となります。もちろん客単価にも影響しますが、それは後で「価格の力」でお話ししましょう。

この商品の力が高いとは、「お客様にとって魅力的で有益である商品」であることがポイントになります。

「ハンバーガー」と言うカテゴリーが同じでも、マクドナルドとモスバーガーとシェイクシャックでは全然違うハンバーガーが提供されています。

「ヘアースタイリング(美容室)」というサービスも同様です。カテゴリーは同じでもその「技術」はお店やスタイリストによって全然違うサービスになります。

これが、「商品の力」の違いです。
期間限定や季節商品もこのカテゴリーに入ります。

3.ひとの力(ピープル)

ひとの力とは、「お店で働く店長とスタッフの実力」のことを指します。店舗ビジネスは、原則として「ひとがひとに商品を提供」する形で商売が成り立ちます。

つまり、売る側のひと(店長とスタッフ)と買う側のひと(お客様)によって、です。

お客様が、あなたの店から商品を買って下さるかどうかは、この売る側のひとの実力差が大きく影響します。
例えば、ほぼ同じ商品を同じ価格で販売しているコンビニエンスストアが隣同士にあったら、あなたはどちらのお店を選びますか?

商品の魅力やブランドやポイントカードも選択要因のひとつですが、やはり販売スタッフの接客レベルに大きく左右されるのではないでしょうか?

先日、私の家の近所のある2軒のコンビニのうちの1店が閉店しました。私は仕事柄両方のコンビニを観察していましたが、閉店した方と繁盛している方の差は、ブランドよりも明らかに「ひと」の差であったと考えています。

4.価格の力(プライス)

価格の力とは、「商品やサービスの価格競争力」のことを指します。
隣同士のお店で同じ商品を違う価格で売っていたら、「価格だけで選択する場合」は、安い方を買うのが普通ですよね。あくまで「価格だけ」で選択判断をする場合ですけどね。

同じ商品の価格比較だけではなく、近くに比較対象商品がない場合でもこの価格の力は試されます。
例えば、「リーズナブルに思える価格設定かどうか?」は、その典型的な例です。

私の家の近所に最近オープンしたハンドドリップ珈琲のお店では、1杯800円でブレンドコーヒーを販売しています。店主によると自慢の珈琲なのだそうです。

私は結構珈琲好きではありますが、残念ながらわざわざ800円出してその珈琲を飲みたいとは思いませんでした。そこまでの魅力を商品に感じなかったからです。もっとも、価格や商品以外に他の魅力もあれば、また利用するかも知れませんけどね。

5.販促の力(プロモーション)

販促の力とは、「商品等に追加して総合的に魅力を高める策」のことを指します。

最近の例では、ポイントカードやおまけなどが典型的な販促の力ですね。
また言葉や映像、イメージなどによって商品やブランドの魅力度アップを狙う広告宣伝もこれに含まれます。また、サンキューレターやニュースレター、店頭POPなどもこの販促の力に含まれます。

繁盛店なら自然と行っている「5つの力」。アナタの店舗はどうですか?

以上のように、「吸引力・・・お客様があなたの店を選ぶ決め手」は、この5つの力に分類されるのです。
お店の売り上げを伸ばしていくためにきちんとマーケティングを行っているお店や企業は、この「吸引力」を伸ばすことにいつも注力しています。

あなたのお店が繁盛店ならば、この5つの力を高めていく具体的な施策が行われているはずです。

しかし、もしも、売り上げ不振に悩んでいるのならば、一度あなたのお店の5つの力を1つずつ見直して見てはいかがでしょうか。

今、不振を極めるあのマクドナルドもその原因を「5つの力」に分解してみるとその理由が見えてきます。
それについての解説は今回から始まったこのコラムで少しずつ解説していきましょう。

私のコラムは、今回が第1回です。
週1回ペースで、繁盛店が行っている取り組みやその考え方についてご紹介して参ります。
お楽しみに。

株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

大阪出身。1980年日本マクドナルド(株)入社。店舗運営の現場と全社の出店戦略に関わり、2005年4月とんかつ新宿さぼてんを運営する(株)グリーンハウスフーズに入社。すぐに経営情報室を立ち上げ、経営情報の見える化、出店戦略システムの構築、さらにエリアマーケティングをベースにした店長教育システムを導入し大きな成果を上げた。2012年4月株式会社PEOPLE&PLACEを設立。代表取締役に就任。マクドナルドとさぼてんで確立したノウハウを独自の形に仕組み化した「店長ナビ®」を提供し、人材育成を通じて多くの外食企業や小売・サービス企業の業績向上に貢献している。