販路企画 代表田口 勝
2016-02-03 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
販路企画 代表 田口 勝

元コンビニ大手店長・SV経験者が語る!「人手不足」の現状とオーナー店の対処法

 このコラムのポイント

コンビニや外食店を始めとし、人手不足で閉店する店舗があることをご存知でしょうか?飲食大手でいえば「すき家」なども悩まされていたこの問題。コンビ二大手のセブン-イレブンで店長とSV(スーパーバイザー)を経験した経営コンサルタント、田口勝氏に「人手不足」問題を乗り切るポイントについて解説してもらいました。

フランチャイズWEBリポート編集部


コンビニ業界がかかえる「人手不足」の現状

人口減少、少子高齢化という時代を受けて、『人手不足』が続いています。
私が所属していたコンビニ業界は、その典型例ですが、飲食業、サービス業も『人手不足』の状況は深刻化しており、その改善の方向性は、見えていない現状です。

実際に、私にご相談がある内容は、多店舗展開や店舗の新規開業、販路拡大等のマーケティングに関連することが多いのですが、その時、必ず話に出るのが『人手不足』の悩みです。これは、俗に言う『能書きの対策』だけでは、対応ができないと考えております。

今回のコラムから連載で、この『人手不足』の問題について、現場の実態と対策のコラムを書いていきたいと思っております。

私自身、実は、店長時代に従業員6名と店長・副店長でオペレーションを回しておりました。最低2人体制をとっており、24時間営業ということを考えると社員の勤務体制は想像ができるものと思います。

その後、本部側のSV(スーパーバイザー)になっても同じ状況の担当店は多数あり、オーナー店からしてもこの『人手不足』の問題は、正直、売上を上げることよりも優先的な課題であるとも思っております。

今後、この状況は打開されるのでしょうか?
正直、今後は益々厳しくなると思っております。

しかし、打開策がないわけではありません。コンビニ業界も含めて、従業員さんの視点を変えていく必要性があると思います。

店舗で「人手不足」が発生する理由2つ

まず、一番始めに考えていかなければならないことは、皆様が当たり前のこと思われることだと思いますけれども、復習をしたいと思います。

『なぜ人手不足が発生するのでしょうか?』
この理由は2つあります。

1.退職者に対して採用者が足りていない

1つ目は、『辞める方の人数』に対して、『入る方の人数』が下回るために発生するということです。
つまりバランスがあっていないということです。

◎人手不足= 辞める人の数 > 採用人数

2.採用スタッフの希望と店側の要望がマッチしていない

2つ目は、採用する人員の希望時間帯やスキルがお店の要望にあっていないということです。

これは、コンビニ経営をされる方としては良くわかると思いますが、『早朝の時間帯だけ人手不足』等こちら側の希望するシフトの人員の採用のみができないということ。

また、採用したもののなかなかオペレーションに能力が追い付かず、なかなか独り立ちさせることができないため、そのシフトに人を割り当てないといけないという問題だと思います。

◎人手不足= 希望シフトの不足人員 > 希望シフトへの採用人員
◎人手不足= オペレーションの必要能力 > 採用した従業員の能力

「人手不足」を解消するための5つのコツ

上記のポイントについて、店舗経営者の方は、『当たり前』と思われたことでしょう。しかし、私は、ここに『人手不足を解消する秘訣』があると思っております。

つまり、『人手不足』を解消するには、実は5つのポイントがあるのです。
それについてお話をしていきたいと思います。

ここでは5つのポイントについて概略を説明したいと思っております。

1.退職率を低下させること

『辞める人の数』を減らす、つまり『退職率を低下』させることと思います。『就職で学校を卒業』『旦那さんの転勤で退職』などのどうしようもない理由以外の退職は実は減少させることができます。
これは私自身が店長、SVで実践してきておりますので断言できます。

オーナーさんの考えでは、『それができないから悩んでいるんだよ』『今の若者は・・・』という声が聞こえてきそうですが、まず、これを軸に置かなければ、『人手不足の解消』には、時給を上げようが、募集層を変えようが、一生その悩みから解決できません。

そのためには、実は『退職理由』を正確に把握し、『従業員さんを戦力化』することが重要なのです。

2.募集方法を変えること

『採用する人数』を増やすために、募集方法を変えるということです。
現在、『人手不足』の店舗は、求人募集を継続して実施していると思いとます。
しかし、私がいつも思うのは、なんで、どの求人広告も似たりよったりなのか?ということです。

販促用の広告であれば、他社との差別化ということで内容を他と変えようと努力されますが、求人募集だとどこも一緒になってしまいます。つまり、求人広告会社に強く要望されない限り、内容は変わりません。

また、広告で集まる『新規顧客の人数』は少ないことがわかっているのに、なぜか同じ広告の『求人広告』にはそれ一辺倒になってしまう傾向があります。

私の経験だと一番営業でも即効性が高いと言われる『紹介』がうまく利用できている店舗は少ないと思います。むしろ、人手不足に困っていない店舗程、『紹介』で成り立っているのではないでしょうか?

3.求人ターゲットを今後変える必要がある

2つ目の『採用する人を増やす』。つまり応募人数を増やす対策です。
コンビニや飲食店等の求人というと『なんとか学生やフリーターを・・・』とお考えの方が多いと思います。しかし、人口減少で学生はどんどん減ってきております。

その対策として、時給を上げて対応するというのが本音ではないでしょうか?
また、コンビニ業界では特に、時給を飲食店並に上げることが可能ですか?
私は難しいことを痛い程理解しておりますが、今後将来的にもその層のみの求人をメインにしていては、難しいと思います。

そこで世の中でも良く言われる3つの層を採用できるシステムを作っていかなければなりません。それは『主婦層』『シニア』『外国人』です。

都市圏のコンビニでは『外国人』の採用は積極的にもう実施してきておりますが、その仕組みが本当にでき上がっている店舗は少ないと感じます。

3つの層を、採用し、戦力化するにも実は、仕組みがいるのです。

4.シフト構造を変える

『希望するシフトの人手不足の人数』を仕組みで変えるということです。
シフト設計は実は、同じ人員でも、人手不足解消にも繋がりますし、逆に人件費アップの要因にもなります。

シフト構造を従業員さんのニーズと人員を勘案して設計方法を変えることで同じ人員でも人手不足の内容は変わってきます。このシフト設計の見直しが重要となります。

5.オペレーションの必要能力を下げる

これは、仕事の質を下げるということではありません。
仕組みで、個人の能力に起因する要因は排除していくということです。

『誰でも、すぐに、できる』レベルに仕事をわかりやすくしていく

つまり、仕組化をすることで、個人の必要とされる能力レベルを下げていくということです。店舗には、様々な仕組みがありますが、私は、作業割当が一番重要であると思っています。

次回は「人手不足」の店と人員が足りている店の違いを解説!

今回は、『人手不足解消』をするための、5つのポイントをお話させて頂きました。今後のコラムではこの5つのポイントを詳細にお話していきたいと思っております。

私がいつも思うのは、『人手不足』というのは、各店全て同じ条件ではなく、『人手不足』の店舗は、『いつも人手不足』であり、『人手不足』に困らない店舗はほとんど困っていないように感じます。その違いが何か?今一度考えていく必要があると思います。

販路企画 代表 田口 勝

大学卒業後、熊本県の経営コンサルタント会社に勤務。マーケティング戦略立案・管理者研修等で中小企業のコンサルティングを担当。その後、業界最大手のコンビニエンスストアチェーン本部にて10年勤務、店長・スーパーバイザー・マネージャーを経験。退社後は販路企画を立上げ、商圏に基づくエリアマーケティング戦略立案・出店調査・FC本部展開支援・従業員戦力化研修、セミナー講演活動を行っている。