株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役松下 雅憲
2016-03-13 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

マクドナルドも実践!複数店経営をする上で重要な「店舗目標設定」の秘訣

 このコラムのポイント

1店舗目が軌道に乗ったら「複数店経営」を、とお考えの方に特に読んでいただきたいコラムです。複数店経営をするには、店長やオーナーなど経営者だけでなく、2番手を育て戦力化することが重要になります。 そのためには、店舗目標を定めることが必須です。ここでは店舗目標を決める目的や、マクドナルドが実践してきた設定方法について解説しています。

フランチャイズWEBリポート編集部


元マクドナルドの経営コンサルタントが「店舗目標を決める」目的3つを解説

「なぜ『店舗目標』を決めるのでしょうか?」

私はセミナーや研修で、よくこの質問をします。あなたならどう答えますか?

「店舗目標が決まっていなかったらがんばれない」
「店舗目標があるからその達成度で店長を評価することが出来る」
「店舗目標は方向性を示す上で必ず必要なものだ」

どれも正しいと思います。

確かに、「目標」があるからがんばれるのだと思います。「目標達成」による達成感や充実感は、人をさらに成長させるエネルギーになりますからね。



そして、その「目標」に対する達成度を測るからこそ評価を決めることが出来るのです。お店は「目標」がないと方向性がバラバラになってしまうでしょうしね。

しかし、まだこれでは「目標を決める目的」としては不十分です。

では、「目標を決める目的」をもう少し掘り下げてみましょう。私はいつも以下の3つの目的をお伝えしています。

1)到達地点を知る
2)方向性を知る
3)改善起点を知る

1.到達地点を知る

これは、「業績目標」としての役割を言います。それにより、企業やお店は「予算」を立てるのです。その予算に応じて、経費や投資の計画を立てることになります。

その「経費」「投資」は、「戦略」に基づき「戦術にかかる費用・投資」として検討されるものです。

もちろん、この「到達地点」は、会社やお店だけでなく個人の評価のための指標ともなります。

この「到達地点」は、主には数値で表現され、PDCAで言うところのCHEAKに当たります。

2.方向性を知る

これは、「会社が何の為に存在し何を目指しているのか」を示す役割のことを言います。

つまり、会社の存在意義であるところの「ミッション」や、近い将来の会社像を示す「ビジョン」に基づいて示されるものです。ですので、必ずしも「数値化」されたものではなくてもかまいません。

例えば、スターバックスコーヒーが「お客様にとってサードプレイスになる」ことを目標にしているのは、この「方向性」の目標のことです。

PDCAのPLANを決めていくプロセスでは、この「方向性」が「優先順位」を決める上で非常に重要な役割を果たします。

3.改善起点を知る

これは、PDCAの最後のACTION(改善)を行う為の基準を指します。

PDCAをまわし続けるには、これら全てのプロセスが大切なのは言うまでもありませんが、最後のACTIONをきちんと行うからこそ、次のサイクルのPLANにつなぐことができ、スムーズに2周目をスタートすることが出来るのです。

「改善起点」とは、そのための基準、つまり2周目に入るにあたり、戦略戦術を変えるのか、それとも2周目も同じ戦略戦術で行くのかについて判断をする基準のことなのです。

例えば、新規客の割合でクーポン利用客とご紹介客との割合を3対1だったのを、2対2にしていこうという目標を立てたとき、1年後に2.5対1.5まで近づいて来たとしましょう。

この時に、戦略そのものを変えるのか?戦術を変えていくのか?それとももう1年同じ作戦を続けるのか?こういうことを考えるためには「改善起点」が明確であることが必要なのです。

もしも「改善起点」としてあらかじめ、2.5対1.5程度まで来ていたら、2年目も同じ作戦を継続すると決めておくとスムーズに進みますよね。

マクドナルドが行ってきた「店舗目標」の決め方。設定サイクルは半年ごと

マクドナルドでは、この「店舗目標」の設定を、具体的かつきめ細かく行っています。設定のサイクルは半年ごとになっています。

そして、6ヶ月の評価期間が終わると、設定された目標に対する実際の行動とそれによる成果、そして目標に対する達成率を評価しています。

店長の評価については、その上司であるスーパーバイザーが、評価会議の席上で営業部長にプレゼンを行います。その結果、店長の昇給昇格が決まるのです。

「戦略」に基づいた目標を具体的に作っていなかったり、作ってもその通りに進めていなかったりした店長やスーパーバイザーは、この評価会議を無事に乗り越えることが出来ません。

逆にきちんとした戦略・戦術決め、それを実行して来た店長やスーパーバイザーは、堂々と胸を張って評価会議にのぞむことができるのです。

複数店経営、会社経営を万全にするためにも2番手を育てること

このような「目標設定」の考え方は、マクドナルドのような大きなチェーン店ではなくてもどのような規模のお店やチェーン店でも使うことが出来ますし、その効果は非常に大きいものがあるのです。

この方法を取ることで、店長の考えや方向性、さらには本気度までがはっきりとわかるため、それを部下が理解しやすくなるのです。目標を具体的に理解すると、スタッフ達は店長と同じ方向を見ながら前進することになります。

すると、その中から2番手が育って行くのです。
しかし、店長の考え、方向性、本気度が不明確だと、同じ方向を見据えた2番手が育たないのです。

こうして育ったスタッフ達を、2号店、3号店に展開していくことで、ただ1店舗だけのチームではなく複数店舗つまり、会社全体が強いチームになれるのです。

2番手が育たない=複数店経営しにくい理由は「目的を明確にした目標設定」ができていないから

1店舗や数店舗を運営している経営者の中には、自分が細かいところを見ながら管理しているので、そんな具体的な目標など必要ないと考えている方もおられます。

ただ、そんな経営者の共通した悩みは、「スタッフが育たない」「スタッフが長続きしない」「スタッフのやる気が高まらない」と言うものです。

その原因は、ただひとつ。
「目的を明確にした目標設定」をしていないからなのです。

さて、あなたは、「目標設定の目的」を答えることが出来ますか?
ただ単に「今月の売上は○○○万円です」などの「目標の数字」だけを目標にしていませんか?

さあ、もう一度あなたのお店の「目標」とあなたのお店のスタッフの「目標」を見直して見ましょう。きっと大切なことに気がつくはずですよ。

株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

大阪出身。1980年日本マクドナルド(株)入社。店舗運営の現場と全社の出店戦略に関わり、2005年4月とんかつ新宿さぼてんを運営する(株)グリーンハウスフーズに入社。すぐに経営情報室を立ち上げ、経営情報の見える化、出店戦略システムの構築、さらにエリアマーケティングをベースにした店長教育システムを導入し大きな成果を上げた。2012年4月株式会社PEOPLE&PLACEを設立。代表取締役に就任。マクドナルドとさぼてんで確立したノウハウを独自の形に仕組み化した「店長ナビ®」を提供し、人材育成を通じて多くの外食企業や小売・サービス企業の業績向上に貢献している。