株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役松下 雅憲
2016-03-20 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

ハンバーガー業界で理解!繁盛店になるためにかかせない「ポジショニングマップ」とは

 このコラムのポイント

マーケティング理論でも頻出する「ポジショニングマップ」。これの作り方、作ることで見えてくることを解説。競合と自店のポジションを客観視することができます。元マクドナルド店長の松下雅憲氏が執筆しているコラムです。

フランチャイズWEBリポート編集部


自店のポジションを明確化し、戦略・戦術を決めるべし

「あなたのお店の『あなたの街でのポジション』を教えて下さい」

さて、今回の私からの質問は、これです。

あなたのお店は、あなたのお店がある街で「どんなポジション」にいるのでしょうか?

ポジションとは、立場や役割です。
たくさんのお店の中であなたのお店が商圏内のお客様にどう思われているのか?と言うことです。
あなたははっきりと答えられますか?

これは、あなたのお店が、駅前にあろうが、商店街にあろうが、住宅地にあろうが、郊外にあろうが、ビジネス街にあろうが、はたまた大きなショッピングセンターの中にあろうが、あなたはこの質問に答えられなくてはなりません。

何故かというと、この質問に答えられると言うことは、

「ライバルの顔がはっきりしてくる」
「商圏内での役割が明確になる」
「メインターゲットの顔が具体的になる」

だから、
「成功確率の高い『戦略・戦術』を策定する事が出来る」
のです。

つまり、ポジショニングを明確にすると言うことは、「あなたがお店を繁盛させるための作戦が上手く行く可能性が高くなる」と言うことなのです。

2月14日に掲載したコラムでも「狙うべき顧客を絞る『ターゲッティング』をしよう」と言うお話しをさせて頂きました。

その際は、ターゲットには、会社がブランドとして考えているナショナルターゲットとお店が自店舗商圏の中で捉えているローカルターゲットのふたつがあるとお話しました。
今日の「ポジションを明確にする」と言うテーマは、このうちの「ローカルマーケット」の選定に直結してくるお話です。

「ポジショニングマップ」で競合と比較しつつ自店を客観視する

では、本題に戻りましょう。
マーケットの中でのポジションを明確にするには、「ポジショニングマップ」を使います。
ポジショニングマップとは、縦軸と横軸を引いたマトリックス図を作り、次にふたつの条件を設定しそれぞれの要素の強弱に応じたポジションに自店舗とライバル店をマッピングしていくというマーケティングの基本手法です。

ハンバーガー業界を図式化すると、マクドナルドとシェイクシャックが競合しないことがわかる

例えば、下記の図1をご覧下さい。
これは私が外食業界に無関係な友人十数名にインタビューをしたハンバーガー業界のポジショニングマップです。
縦軸に「健康イメージ」横軸に「価格イメージ」を置いてそれぞれのブランドをマッピングしています。

ただし、図1のマッピング図は、ブランドそのものをマッピングしています。つまり、ナショナルマッピングと言うことになります。これが基本です。

この図を見れば、最近話題のSHAKESHACKは、マクドナルドのライバルではないことがわかります。
明らかにターゲットが違うからですね。

吉祥寺駅周辺エリアにしぼりマッピングすると様変わり

ここで、店舗経営者様に考えて欲しいのは、自分のお店の商圏内でのローカルマッピングです。
ですので、今度は、これを吉祥寺駅周辺のマーケットで見てみましょう。

現在、吉祥寺には、ロッテリア、バーガーキング、ウェンディーズ、ドムドム、KUA’ AINA、SHAKESHACKは未出店ですので、ローカルポジショニングマップからは除きます。代わりに、ヴィレッジヴァンガードダイナー、ジャストミート、さらにフレッシュネスが業態変更をしたクラウンハウスがありますのでそれらを加えてみます。

すると、図2のように変わってきます。
図1とはずいぶんと様相が変わってきました。

近い業態のビジネスもマップに加えてみる

さらに、「ハンバーガーではないけれど、パンを使ったファーストフード」を加えてみましょう。

KFC、サブウェイ、ドトールコーヒーがありますのでそれらを追加します。
すると、図3のようになります。

この図を見ると、吉祥寺マーケットでは、マクドナルドに比べると、モスバーガーやフレッシュネスバーガーの方が、ライバルとなるお店が多いことがわかります。

もちろん、ライバルたちは、なにもレストランだけではありません。
ハンバーガー的なもので考えると、パン屋さんもライバルですし、コンビニエンスストアも同様です。

つまり、厳密には、食を扱うお店は全てライバルとなるわけです。
ただ、何でもかんでもライバルの中に入れてしまうと、マッピングがややこしくなるので、今回お話ししたようなプロセスで、類似業態+類似メニューの店舗群の中でポジショニングを行うことがまず基本です。

自店の強みと弱みをあぶりだす3つのポイント

さて、上記のポジションニングでは分類条件として「健康イメージ」と「価格イメージ」を使いました。

しかし、これだけで自店舗のポジションがわかったと思ってはいけません。もっと他の要素で見て行けば、さらにはっきりと「ライバル」と「ターゲット」が見えてきます。

そして、あなたの店の「強み」「弱み」も見えて来るのです。たとえば、下記のような条件で考えてみるとどうでしょうか?

1.立地・・・一番人の多い場所からの距離

上記のハンバーガー店の中では、吉祥寺で一番良い立地にあるのは、マクドナルド吉祥寺店です。駅前のサンロード商店街の入り口にあります。この立地のおかげで、このお店は、マクドナルドの中でも5本の指に入る高い売上げを誇っています。

一方で、フレッシュネスバーガーは、駅から一番はずれたところにあります。家賃は低くなりますが、売上は苦しくなりますね。

2.アルコールメニュー・・・お酒を扱っているかどうか?

クラウンハウスとヴィレッジヴァンガードダイナー、ジャストミート、3rdバーガーはお酒を扱っています。お酒を扱うと言うことは、お客様の年齢層も高くなり、ディナータイム利用が増え、売上も獲得しやすくなります。

3.カフェ要素・・・ドリンクのみの利用がしやすいか?デザートはあるか?

これは、14時から17時頃までのカフェタイムの利用がしやすいかどうかという見方です。

ドトールコーヒーは、そもそもカフェですから断トツに強いですね。マクドナルドはデザートが弱いですがドリンクが安いですから気軽さでは一番でしょう。

ファーストキッチンはメニューの豊富さが有利ですね。一方で、ヴィレッジヴァンガードダイナーやジャストミートでは、カフェのみの利用はほぼあり得ません。

競合に勝つためにも自店のポジショニングマップを完成させましょう

さて、いかがでしょうか?

このように色々な条件で、商圏内でのお店のポジションをはっきりとわかりやすくして行くことで、どのライバルに対抗してより魅力的なお店にしていくのか?どういうニーズのどのようなお客様をメインターゲットにしていけば良いのか、などが見えてくるのです。

ポジショニングマップを使って、あなたのお店がある商圏の中で、あなたのお店のポジションがどの位置にあるのかをはっきりとさせてみましょう。

そうすることで、あなたが行うべき「仕事」の形がよりはっきりと見えてきますよ。
 
実際に私の研修を受けた店長やオーナーさんは、ほぼ100%、今までやってきた作戦を見直す結果になりました。それくらい、このポジショニングマップを作ると大きな効果があると言うことなのです。

あなたがまだポジショニングマップを作っていないならば、是非ともチャレンジしてみて下さい。

株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

大阪出身。1980年日本マクドナルド(株)入社。店舗運営の現場と全社の出店戦略に関わり、2005年4月とんかつ新宿さぼてんを運営する(株)グリーンハウスフーズに入社。すぐに経営情報室を立ち上げ、経営情報の見える化、出店戦略システムの構築、さらにエリアマーケティングをベースにした店長教育システムを導入し大きな成果を上げた。2012年4月株式会社PEOPLE&PLACEを設立。代表取締役に就任。マクドナルドとさぼてんで確立したノウハウを独自の形に仕組み化した「店長ナビ®」を提供し、人材育成を通じて多くの外食企業や小売・サービス企業の業績向上に貢献している。