株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役松下 雅憲
2016-03-27 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

来店見込客を知るには「5分調査」をやれ!マクドナルド出身のプロが語る必殺法

 このコラムのポイント

自店に来る可能性の見込み客。あなたのお店はどれくらいいるのか―推測できますか?立地戦略のプロであり、元マクドナルド店長の松下雅憲氏が推測に有効な秘策を伝授するコラムです。

フランチャイズWEBリポート編集部


来店くれる潜在顧客層を知るために「商圏ポテンシャル」を知ろう!

「あなたのお店の商圏の『ポテンシャル』について知っていることを全部挙げて下さい」
さて、今日の研修コラムのテーマは「商圏のポテンシャル」です。
商圏とは、簡単に言うと、あなたのお店のお客様の80%がいる範囲のことを言います。
※詳しくは、2月7日のコラムを参照して下さい

では、その商圏の中にどれくらいのポテンシャル、つまり「あなたのお店に来る可能性のあるお客様の数(潜在顧客)」が、あるのでしょうか?
ちなみに、あなたは、それを数字で答えることは出来ますか?

あなたが「売上を伸ばしていくための仕事の順番」を考えるとき、この商圏ポテンシャルについて具体的に把握していないと、「ポテンシャル×吸引力」で戦略戦術を組み立てることは出来ません。

あなたは、何よりもまずこの「商圏ポテンシャル」をつかまなくてはならないのです。
商圏ポテンシャルを具体的に把握するための基本要素は下記の5つです。

1)商圏の範囲
2)人口などの統計データと通行量などの測定データ
3)既存のお客様の「属性・タイプ」「来店動機」「来店目的」などのお客様アンケートデータ
4)インターゲットの設定
5)競合店の観察データ

これらの情報が無いままで、商圏ポテンシャルを語ることは出来ません。 しかし、世の中には、これらの要素を把握しないままに、商圏のポテンシャルを語る人が少なくありません。

たとえば、「商圏である半径1kmの円の中にいる住民人口は2万人。だからこれくらいは売れそうだ」のような表現をしているケースです。

「商圏範囲の定義」には、何故その範囲が商圏になるのか?と言う根拠が必要です。

根拠としての半径500mでも半径1kmならば良いのですが、根拠がないままに、商圏の大きさを決めつけ、その中に2万にいる、3万にいるという見方は、一見、具体的で科学的なように見えますが、実は適当な思い込み以外の何物でもありません。

まずは「フロムツウ商圏」もしくは「目的機会商圏」(いずれのワードも第2回参照)のどちらかを定めるために、お客様にインタビューを行い自店舗の商圏範囲を決めるところから始めましょう。

あまり時間を掛けずに早く商圏範囲を知りたいのならば、最初は「フロムツウ」の場所をインタビューして決めて下さい。これだと、他のアンケートをしなくても、地図を見せてドットシールを貼るだけでも、おおよその商圏範囲がわかります。

もう少し時間をかけられるのでしたら、「目的機会」を知る内容のアンケートを使用して、より正確に商圏範囲を決めていって下さい。

商圏範囲が決まればGISで商圏データをさらに深堀(立地戦略のコンサルも頼れる)

商圏の範囲が決まったら、今度は「統計データ」を調べます。
一般的には、市役所のホームページに、各自治体の町丁目ベースでの「人口データ」が載っています。
インターネットが普及するまえは、わざわざ市役所に行ってデータを閲覧しなくてはなりませんでしたが、今は簡単にホームページから入手することが出来ます。もちろん、無償です。

ただし、ひとつのデータの区画(町丁目)の面積が大きかったり、商圏そのものが500mくらいの狭いものだったりすると、町丁目では誤差が非常に大きくなることがあります。

そう言うときは、パソコン上で、データを面積案分することの出来るソフト(GIS:地理情報システム)を使うのが良いのですが、さすがに非常に高価なソフトなため、大きなチェーン店以外は装備していない可能性があります。
※フランチャイズで開業される場合、本部がそのソフトを持っていれが教えてもらえるかもしれませんので、一度確認をされると良いと思います。

もしも、本部がGISを持っておらず、どうしても細かな商圏データが欲しいという場合には、有償にはなりますが、GISマーケティングを行っている会社(例:株式会社JPS)や私のような、立地戦略のコンサルタントにお問い合わせをして頂くと、より詳細なデータを提供することが可能です。

さて、では、そのデータですが、商圏の中の何を知れば、ポテンシャルのデータとして使えるのでしょうか?

商圏ポテンシャルをはかるには「昼間人口」を見よ!

答えは、「昼間人口」です。
まずは、このデータが基本になります。
これは、住民人口-就業者と学生(就学生)+従業者+学生(在校生)で算出されています。

住民人口とは、その場所に居住している人の数を言います。夜間人口とも言います。国勢調査のデータをもとにしています。
就業者とは、その場所に住んでいる「仕事を持っている人」のことです。
従業者とは、その場所で働いている人のことです。

就業者は、住民人口と同じく国勢調査のデータをもとにしています。
従業者は、会社の社員数のデータですので、事業所統計のデータを使っています。
学生は2種類ありますが、就業者・従業者と同じく、計算式の前者が、そこ場所に住んでいる学生、後者が、その場所の学校に通っている学生の違いです。

この計算方法で算出した人口が「昼間人口」です。
夜間人口に比べると、昼間その商圏内で活動していると言う意味でよりリアル感が増したなった数字ですね。

ただし、この昼間人口には「買い物客」や「ウインドーショッピング客」、移動途中やブラブラしているような人の数は含まれていません。なので、ポテンシャルを知るには、さらに「駅乗降客数」「商業施設年商」「アミューズメント入場者数」などのデータを把握する必要が出てきます。

マクドナルドはこうしていた!売上予測、通行量・交通量の測定法

マクドナルドのような大きなチェーン店の調査部では、このようなデータを毎年最新版に更新し、それを使って新規店舗物件の売上を予測しています。私がマクドナルドの調査部にいた頃は、これらのデータを全部まとめた『推定昼間人口』という商圏ポテンシャルのデータを複雑な計算ロジックを用い、独自で算出して使っていました。

ちなみに、駅乗降客のデータについては、各鉄道会社のホームページやWikipediaなどで知ることが出来ます。ただし、商業施設の年商については、入居しているテナントにしか教えてもらえないので、床面積やレジ台数、駐車台数などで推測をするようにしています。
売上以外のデータは、ホームページを見ればわかるので、皆さんもざっくりとは把握することが出来るでしょう。

次はポテンシャルのひとつである、「通行量」「交通量」の把握の仕方をお話ししましょう。
一般的には、「通行量」は、道路を歩く人の数、「交通量」は車の数を指します。

人の通行量については、大きなショッピングセンターでは、調査員が「数取器」を使って調査をしていることがありますので、テナントとして入っているお店ならば教えてもらえるかも知れません。
車の交通量については、交通センサス調査(主要交差点の交通量調査)を国土交通省が実施し、それを公表しています。

自店舗近くの交差点の交通量を探し出すのはチョット面倒ですが、実施していれば知ることは可能ですので、ぜひチャレンジしてみて下さい。

マクドナルドが、新規店舗物件の売上予測をする時は、これらのデータを自分たちで計測していましたが、みなさんが、同じように調査をすることは時間と労力を考えればほぼ不可能だと思います。
でも、やはり、これらのデータはお店のポテンシャルを知る上ではかなり有効なデータのです。

では、一体どうしたらよいのでしょうか?

立地戦略のプロも実践する「5分間調査」で商圏内の属性チェック

良い方法をお教えします。
それは、私たちのような立地調査のプロが、普段、商圏調査をしているときに使っている「5分間調査」です。

ポイントになる場所について、5分間だけ、通行量や交通量を調査するのです。
5分間ならば、数取器を遣わなくても、メモ用紙に正の字で書き込んでも実施できます。
iPhoneやスマホの数取器アプリを使う時もあります。

それにより、計測箇所のボリュームの違いや、男女年齢層などの属性の違いを簡易的に把握することが出来るのです。

さて、今回は、自店舗の商圏ポテンシャルの何を、どのように把握すれば良いのかについてお話ししました。
ぜひ、あなたも、あなたのお店の商圏ポテンシャルをより正確につかんでみましょう。
固定概念が吹っ飛びますよ!

次回は、「お客様アンケートデータ」です。
お楽しみに。

株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

大阪出身。1980年日本マクドナルド(株)入社。店舗運営の現場と全社の出店戦略に関わり、2005年4月とんかつ新宿さぼてんを運営する(株)グリーンハウスフーズに入社。すぐに経営情報室を立ち上げ、経営情報の見える化、出店戦略システムの構築、さらにエリアマーケティングをベースにした店長教育システムを導入し大きな成果を上げた。2012年4月株式会社PEOPLE&PLACEを設立。代表取締役に就任。マクドナルドとさぼてんで確立したノウハウを独自の形に仕組み化した「店長ナビ®」を提供し、人材育成を通じて多くの外食企業や小売・サービス企業の業績向上に貢献している。