株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役松下 雅憲
2016-04-17 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

読めない店名は認識されない!?マクドナルド藤田田氏も意識した効果的な店舗名表記

 このコラムのポイント

店舗の看板を見てると「このお店の名前、何と読むのだろう・・」と悩むことはありませんか?一般消費者の方もまさしく同じ感覚で、複雑な漢字や外国語だとお店の名前を覚えることができなくなってしまうのです。では看板の店舗名をどのように表記すべきか?マクドナルドやおかゆ専門店チェーンの事例を見ながら覚えていただきましょう。

フランチャイズWEBリポート編集部


自店の名前は意外と認識されていない!?おかゆ専門店チェーンの事例

「すみません・・・この近くにカユサンチンというお店があるんですが、ご存じないでしょうか?」

私が前職(株式会社グリーンハウスフーズ)で店長にエリアマーケティング研修を行っていたときのことでした。

その日は、仙台駅の駅地下レストラン街にある粥餐庁(カユサンチン)と言うお粥専門店の認知度調査の日でした。
店長とマネジャーは、手分けをして仙台駅の周辺半径500m以内でターゲットである20~30代のOLに自分たちのお店のことを知っているか、尋ねて回っていました。

詳しい認知度の数値についてここではお話し出来ませんが、認知度は皆さんのご想像通り非常に低い割合でした。駅地下のレストラン街の存在はほぼ全てのOLが知ってはいたのですが、カユサンチンと言う名前のお店のことはほとんど方がご存じなかったのです。

調査をしたのは、2010年の春でした。
このお店は、2003年の6月にオープンしていますから、すでに7年も営業をしているのです。
それでも、ご存じない・・・

店長とマネジャーは、ショックを受けました。
そこで、今度は、質問の仕方を変えて調査をしました。

複雑な漢字や外国語だとお店の名前を覚えてもらいにくい傾向に・・

「お粥専門店をご存じですか?」

『カユサンチン』というブランド名ではなく『お粥専門店』と言う風に尋ね方を変えたのです。
すると、「知っている」というOLの数が大幅に増えたのです。

実は『カユサンチン』は、『粥餐庁』という名前が正式名称です。

お店の看板には、大きな漢字で『粥餐庁』と書かれていたのですが、ほとんどのOLが読み方がわからなかったのです。

男性ならばこう言うことって良くありますよね。
女性とデパートに行って婦人服の店を見てもそのお店のブランド名が全く読めずに恥をかいたり、デパ地下にあるフランス洋菓子の店の店名が読めなかったりしたことがありますよね。
お恥ずかしい限りですが、私はしょっちゅうです。

読めない名前のお店のことは、頭に正確には記憶できません。
なので、ロゴマークや店名の漢字やアルファベットのイメージで覚えます。もしくは、間違った読み方で覚えるのです。すると、正しい読み方で尋ねられても「知らない」と言う事になるのです。

中国語や韓国語やフランス語やイタリア語の店名やブランド名は、その国のイメージがわきやすいので本物感、高級感が高まり、それが信頼感にもつながります。

なので、多くのお店はこぞって、外国語の店名・ブランド名をそのまま使うのです。
しかし残念ながら、私のようなお客様の記憶には「正確には」残らないのです。

日本人に読みやすい店舗名を意識してつけたマクドナルドの藤田田氏

そう言うことを見越して、オリジナルのブランド名を日本人に読みやすい名前、読み方に変えて上陸させたのが・・・『マクドナルド』なのです。

日本マクドナルドの創業者である藤田田氏は、アメリカでは、McDonald’sのことを『マクダーナルズ』と呼ばれていたのを、日本人向けに三三に韻を踏んだ『マクドナルド』という呼び方したのです。

しかも、カタカナ表記の看板を基準にしました。
一部英語表記の看板もありましたが、あくまでも補助的な看板でした。
お店の正面看板は必ず『マクドナルド」とカタカナで表記されたタイプしか認めませんでした。

さらに、『何屋』かわかるように、マクドナルドの後に『ハンバーバー』を追加したのです。
この藤田田氏の判断は功を奏し、日本語読みのカタカナで、何屋かわかる看板で全国展開をし、あっという間に誰もが知っているナショナルブランドに育って行ったのです。
もしも『マクダーナルズ』という読み方のままだったら・・・どうなっていたでしょうね。

業態を表すキャッチと店名のローマ字表記を入れておくと認識されやすい

前回のコラムで認知度の重要性をお話ししましたが、その認知度に強く影響を与えているのが『店名の読み方』なのです。

粥餐庁の読み方がわからないお客様は『お粥の店』というイメージでしかお店を覚えてくれていませんでした。

せっかく美味しいお粥を提供していても、店名、ブランド名で覚えていただかなければ、再来店動機は低下してしまいます。

店長たちは、お客様へのインタビューで、ほとんどのお客様が『粥餐庁』を正しく読めないことを知り、それが「認知度」に影響していると判断し、お店の看板をリニューアルしました。

そこには『麺とお粥の店』という表記をメインにし、その下に『KAYUSANCHIN』とローマ字でブランド名を表記することにしたのです。

その半年後に、再度行った認知度調査では、メインターゲットであるOLたちの認知度は、一気に上昇したのは言うまでもありません。

さて、あなたの店やブランドの名前・・・・お客様は正しく読んで下さっていますか?

もしも、読み間違っていたり、読めなかったりしていたら・・・それが原因で認知度が低くなっているのかも知れませんよ。もったいないですね。

株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

大阪出身。1980年日本マクドナルド(株)入社。店舗運営の現場と全社の出店戦略に関わり、2005年4月とんかつ新宿さぼてんを運営する(株)グリーンハウスフーズに入社。すぐに経営情報室を立ち上げ、経営情報の見える化、出店戦略システムの構築、さらにエリアマーケティングをベースにした店長教育システムを導入し大きな成果を上げた。2012年4月株式会社PEOPLE&PLACEを設立。代表取締役に就任。マクドナルドとさぼてんで確立したノウハウを独自の形に仕組み化した「店長ナビ®」を提供し、人材育成を通じて多くの外食企業や小売・サービス企業の業績向上に貢献している。