フランチャイズ研究会 中小企業診断士楊典子
2016-04-21 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
フランチャイズ研究会 中小企業診断士 楊典子

田舎暮らし、早期退職、Uターン。人生の転機におすすめしたい「夫婦起業」の魅力

 このコラムのポイント

仕事を変えるとき、転職だけでなく「独立」もひとつの手段になり得ますが、一人で独立するよりも夫婦で開業した方が事業拡大も効率的に行いやすいって知ってましたか?そんな夫婦起業で成功するポイント、夫婦一緒に起業した方が成功する可能性が高いケースについてご紹介していきます。

フランチャイズWEBリポート編集部


夫婦起業がおすすめな3つのケース

こんにちは!女性のローリスク起業を支援する一般社団法人キャリア35の理事、楊典子です。今回は『夫婦起業』がおすすめなケースと、夫婦起業で成功するためのポイントについてお伝えします。

就職、転職、自身の病気、親の介護・・・。独りで生きていても、人生の転機は次々と訪れます。結婚して家庭を持てば、夫の分と妻の分、加えて子供も・・・と訪れる人生の転機の数も倍以上に増えますね。

「父が亡くなり、田舎で母が独りとなった。いっそ皆で田舎に帰るか」
「もっと子供をのびのびとした環境で育てたい。家族で地方に移住しようか」
「条件の良い早期退職の募集がかかった。妻も応援してくれるし、自分で事業を始めるか」

環境の変化に合わせて、起業という形で仕事も変えようとする場合、転職以上に夫婦のコミュニケーションが重要になります。人は変化に不安を持つ生き物。起業することでどんな生活の変化が生まれるのか、パートナーは不安で一杯になるのが普通です。

独りで起業する場合、いかに夫や妻を説得し納得してもらえるように進めるかが重要なポイントとなりますが、説得にとどまらず、一緒に起業してしまうという道も実はお勧めです。

『夫婦起業』がおすすめのケース
1.従業員を雇用する予定がある
2.妻/夫が正社員として働いていない
3.夫婦間の会話が多く、精神的にも支え合えている

1.従業員を雇用する予定がある

コンビニ学習塾飲食店など、従業員の雇用が必要なビジネスでの起業であれば、妻/夫にその仕事をしてもらい、お金が外に流れるのを防ぐのも得策です。

特に創業したての時期はなかなか利益が上がらず、売上とは関係なしに必ず出て行く給与の負担感が大きくなりがち。 計画通り売上を伸ばす努力を100%することはもちろん前提ですが、苦しい場面では夫婦であれば給与として見込んでいた金額を減らしたり、支払時期を延ばしたりということが多少柔軟にできます。

また普通に雇用したスタッフに比べて「事業をなんとか成功させたい」という意気込みが違いますので、業務の生産性やサービス品質の面などの面でも経営面でプラスに働くことが多いようです。

2.妻/夫が正社員として働いていない

妻/夫が正社員として働いており、自分が起業した後もそれを続けられる環境にあるのだとしたら、家庭としてのリスク分散という意味で、少なくとも事業が軌道に乗るまではそのまま続けてもらった方がよいとアドバイスしています。

もし現在パートやアルバイトでの勤務をしている、または既に定年しているということであれば、事業の状況により現在と同じ働き方を選ぶことも可能ですので、できるだけ事業に関わってもらった方がメリットは大きくなります。

従業員を雇う予定がなかったとしても、二人で手分けして準備や運営を行うことで、事業をよりスムーズに立ち上げることが可能となりますし、拡大もしやすくなるでしょう。起業は想像以上に手間がかかるもの。このケースではパートの時間を少し削って事業を手伝う時間を増やしてもらう、という形もお勧めです。

3.夫婦間の会話が多く、精神的にも支え合えている

たとえ1と2の条件が揃っていたとしても、この点に該当しなければ、夫婦での起業は全くお勧めできないものとなります。

生活する中ではケンカもほとんどなかったご夫婦が「一緒にお店を始めてからケンカばかりになる」というケースを少なからず見てきました。仕事場という緊張やストレスにさらされる中で、ちょっとした言葉の誤りや態度に怒りを爆発させてしまったり、生活上のトラブルを仕事場に持ち込んで悪態をついたり・・・。一緒にいる時間が長い分、衝突の危機も激増します。

しかし、問題が起こってもちゃんと話し合うことができる夫婦、相手の良いところを正しく評価して尊敬する気持ちを持っている夫婦であれば、衝突も小さくなりますし、それをより良い方向に結びつけて前進することもできるようにもなります。

夫婦で起業する場合、個人の持つ強みや弱みを正しく理解し合えていますので、互いに補完し合う気持ちで事業を進められれば、その推進力は三人分以上の力となります。現に、これが事業の成功には欠かせないと、夫婦で事業を行うことをフランチャイズ加盟の条件としているフランチャイズ本部もあるほどです。

夫婦起業を成功させる2つのポイント

夫婦での起業を成功させるためのポイントは数多くありますが、これだけはという2つのポイントをご紹介します。

1.期待を明確にする

妻/夫の力を借りるにあたり、意外とできていないのがこのポイントです。
経理をやって欲しい、営業をやって欲しい、配膳をやって欲しいという作業レベルの期待ではなく、『あなた(妻/夫)の力が必要な理由』を期待として伝えるようにしてください。

「やり遂げる力が弱い自分の尻を叩いて欲しい」「苦しいときに一緒に話せると力が湧くので話を聞いて欲しい」「その社交的な性格で、店を明るい雰囲気にして欲しい」というレベルで十分です。スパッと一言でいうのは難しいものですが、じっくり向き合う時間を設けて、理屈面だけではなく感情面も含め、妻/夫に何を期待しているかを丁寧に伝えるようにしましょう。そして、妻/夫からは自分への期待もしっかり聞くようにしてください。

起業後は想定外の場面が数多く発生します。そんなときに、互いが期待に添った働きを自らできれば、対応のスピードは格段に早く、的確なものになるでしょう。

2.ルールを決める

事業を発展させつつ家族関係も良くするためのルールを考え、決めておきましょう。
「家のケンカは絶対仕事場に持ち出さない」「ケンカは2日以内で終わらせる」「過去の失敗を持ち出して攻めない」「あなたはこうすべき!ではなく私はこう思う!で提案する」「年に一度は旅行に行く」などなど。

先にも少し触れていますが、創業したての仕事場はストレスの温床です。疲れや焦り、失敗、クレーム対応などで、いつもとは違うような失言や態度をしがちになるものです。そんな時にルールがあれば、少し冷静に頭を冷やすきっかけにもなります。
一番避けたいのは、事業も失敗、夫婦関係も解消という事態ですよね。

明るい夢を描いている起業の前だからこそ、厳しい場面をイメージしながら、ルールをしっかり決めて、自宅の壁にでも貼っておくようにしましょう。

夫婦起業は、一人で独立するよりも事業拡大が早い!?

夫婦での起業は、独りでの起業に比べて早いスピードで事業が軌道に乗りやすく、事業拡大もしやすくなるという大きなメリットがあります。

一方で、なぁなぁで進んだ場合に事業と家庭の苦労を同時に背負い込むリスクもあるのがこの夫婦起業。事前にしっかりと期待とルールを話し合い、忘れないようにそれを紙に書いておくようにしましょう。
苦労は半分に、利益は倍に!夫婦起業をぜひ成功させてくださいね。

フランチャイズ研究会 中小企業診断士 楊典子

福島県出身、立教大学経済学部経済学科卒。新卒から一貫して経営コンサルティング業務に従事し、外資系コンサルティングファーム等を経て独立。五葉コンサルティング株式会社代表取締役。世界的企業から個人の創業まで、多数の支援実績を持つ。製造業の業務改革や各種FC本部構築などに関わる。主な著書にフランチャイズ入門(同友館)、フランチャイズ本部構築ガイブック(同友館)、好きを仕事に!―私らしいローリスク起業(BKC出版)など。