株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役松下 雅憲
2016-05-29 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

繁盛店になるために!戦略的に組み合わせたい「価格と客席回転率」

 このコラムのポイント

価格帯が高い店、低い店・・売上を向上させるには自店のタイプを見極めた戦略が必要です。このコラムでは客席数に的を絞って売上をアップさせる方法について、実際のチェーン店の事例もご紹介しつつ解説していきます。

フランチャイズWEBリポート編集部


客席数を活用するのに必要なのは「回転率」「満席率」「営業時間延長」

「客席のキャパシティを上げるには、『回転率を高める』と言う方法もある」

前回のコラムでは、そのために「無駄な空白時間」をなくして、「無駄な滞在時間」の削減を図り回転率を高めよう!と言うお話をしました。

今回は、価格と回転率の関係についてお話をしますね。

極論すれば、限られた客席のスペース、客席数を最大限に活用するには

1.回転率を上げる(滞在時間を短くする)
2.満席率((死に席を無くす)
3.営業時間を増やす

これが基本です。

もちろん、テイクアウトやデリバリーも売上アップに繋がりますし、客単価を高めることもまた同様です。 ただ、今回は、客席数に的を絞ってお話を進めることにいたします。

デフレ時に好まれた薄利多売方式(立ち食いそば、牛丼店など)

1の回転率を上げる方法と2の満席率を上げる方法を上手く使っているのが、駅前の立ち食いそばや牛丼店などです。

マクドナルドなどのファーストフードも1970~1980年頃の都心駅前型の店が多かった頃は、立ち食いそばや牛丼店同様に、カウンター席が多く、現在のようにゆったりとした客席ではなく、高回転を意識した設計になっていました。そして、彼らは3の戦略でドンドンと営業時間を延ばしていったのです。

これは、彼らのビジネスモデルが「低客単価」で集客し「高回転」でさばく「薄利多売方式」だからです。
低価格化がいっそう進んだデフレ時代に、24時間営業化が進んでいったのは、そう言う背景があるからです。

デフレ終了後好まれた高単価商品&サードプレイス(スターバックスなど)

しかし、飲食店の成功モデルの中には、1や3を捨てて、2の満席率を高めつつ、うまく売上を伸ばしている所もあります。

デフレが終わりを告げると(まだデフレは続いているという切もありますがここでは、ひとまず終わりと言うことにしておきます)単価の高い商品に対する許容度が上昇し、さらに時間的にゆっくりすごせる場所を求める傾向が強くなりました。

その典型的なモデルが、スターバックスコーヒーです。
彼らはその高単価故に、デフレ時代にはかなり苦しい業績が続きましたが、現在のような経済環境下では、そのモデルは非常に好意的に受け入れられてると見て良いでしょう。

ただし、客席数には限りがあるわけですから、高単価以上に長居をされてしまうと、売上は獲得できなくなります。彼らの最近の客席リニューアルの傾向を見てみると、ゆったりとしたソファ席を一部確保しながらもひとり席、カウンター席、二人席の割合を多く確保するように工夫をしているように見受けられます。

また、一部の店舗では、長居しているお客様への「客席明け渡しご協力お願い」を進めるなどして、少しでも回転率を上げようとしている様子が見て取れます。

サードプレイスを提供する彼らのブランドイメージを確保しつつ、少しでも客成功率を高め、出来れば回転率を上げたいという葛藤があるようですね。

高単価&回転率両方取りの新しいモデル出現(いきなりステーキ、俺のイタリアンなど)

さて、カフェやファーストフードだけではなく、カジュアルレルトランでも、この「価格と客席回転率」のせめぎ合いがあります。

例えば、牛丼店方式のカウンター席が中心であったペッパーランチを立ち食い型への業態変更で店舗数を伸ばしている「いきなりステーキ」や、高級イタリアンや高級フレンチを「立ち食い」という形式で出店した「俺のイタリアン」などは、高単価になりがちなメニューを「立ち食い」「高回転」で安く提供すると言う新しいビジネスモデルで成功を収めています。

ただ、そんな彼らも、立地や競合状況によっては、一部座席を設けるなどの工夫をしながら、日々戦いを続けているようです。

安くするなら高回転。高くするなら低回転。戦略的な作戦決定を

ところで、この「価格と客席回転率」の関係ですが、あなたのお店では、どのように取り組んでいますか?

ただ単位価格を安くしてしまい、お客様を呼び込んでも、回転率を上げる工夫をしないせいで、売上が伸びない状況になっていませんか?

また、高単価にしていきながら、客席でゆっくり出来ない状況にしてしまい、かえって評判を落としてしまうような事態になっていませんか?

安くするならば、高回転をしないと儲かりません。
高くするならば、低回転を維持できるようにしないと満足していただけません。

さらに、以前もお話しした、目的来店と機会来店。
もうひとつ、駅前の好立地と裏筋の隠れ家立地。
それに関連してくる家賃。

これらを、全て戦略的に絡み合わせて「場所」「メニュー」「価格」「ターゲット」「客席数」「空間」「接客」などの作戦を決めないと「繁盛」と「儲かり」はありません。
いま苦戦をしているあなたは、もう一度これらの関係を良く見直して、業績回復策を進めていきましょう!

株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

大阪出身。1980年日本マクドナルド(株)入社。店舗運営の現場と全社の出店戦略に関わり、2005年4月とんかつ新宿さぼてんを運営する(株)グリーンハウスフーズに入社。すぐに経営情報室を立ち上げ、経営情報の見える化、出店戦略システムの構築、さらにエリアマーケティングをベースにした店長教育システムを導入し大きな成果を上げた。2012年4月株式会社PEOPLE&PLACEを設立。代表取締役に就任。マクドナルドとさぼてんで確立したノウハウを独自の形に仕組み化した「店長ナビ®」を提供し、人材育成を通じて多くの外食企業や小売・サービス企業の業績向上に貢献している。