キズカスカンパニー 代表コンサルタント加藤 圭
2016-06-02 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
キズカスカンパニー 代表コンサルタント 加藤 圭

フランチャイズ本部元社員が解説!オーナー募集始めたての本部とうまく付き合うコツ

 このコラムのポイント

独自開業よりも比較的低リスクであることが魅力のフランチャイズ開業。「オーナー募集を始めたてのところは支援体制が追い付かないんじゃないの?」と悩む前に。いい処方箋があります。 アーリーステージの中には今までになかったようなお宝的ビジネスがあるのも事実。うまく付き合えばこわいことはありません!

フランチャイズWEBリポート編集部


立ち上げ当初(アーリーステージ)のフランチャイズ本部は不安?

フランチャイズに加盟したばかりのオーナーさんにとって、フランチャイズ本部やSV(スーパーバイザー)から指導を受けることができるのは、経営ノウハウを持たないオーナーさんにとっては心強いのではないでしょうか。

しかしその本部も、フランチャイズ募集をスタートしたばかりで、支援体制が確立されていないため、的確なアドバイスや指導ができていないというケースも・・。これでは、これから本格的にサポート受ける側のオーナーさんとしては、とても不安や不信感を抱いてしまうのではないかと思います。

私自身、フランチャイズ業界を以下の両面から見てきた経験があります。

1.立ち上げ当初のフランチャイズ本部社員
2.全国展開をしている某スイーツ業態のFC加盟店(マルチフランチャイジー)の経営幹部

立ち上げ当初のフランチャイズ本部元社員の本音

まず本部側の立場からお話したいと思います。フランチャイズ募集を始めたばかりの頃は、自社が運営する直営店の経営ノウハウは持っていても、加盟店の現状(商圏・お客様の動向・入店導線など)がまだ把握できておらず、加盟(店)数も少ないため、成功ノウハウやシステムの蓄積が乏しく、これが要因となり、的確なアドバイスや支援できないケースがあったのです。

本部ではオープン前に、座学や実地研修により、業務について一連の流れはお伝えしても実際にお店をオープンした後でなければ、出店エリア特有の問題点や課題が見えてこないことが多々あります。

今回は、加盟店オーナーになる皆さんが本部に対して不安や不信感を抱かず、円滑な関係を構築するために必要なポイントを5つ挙げていきます。

本部側の状況と加盟店オーナーとして。双方の関係をイメージしながら、お読みくださいませ。

立ち上げ当初の本部と円滑な関係を構築するためのポイント5つ

1.フランチャイズ契約前の内容確認と加盟後のすり合わせを行う

フランチャイズ加盟契約書で締結した内容と現在のサポート体制に「差異」を感じるオーナーさんは、多くの業種で見受けられます。

以前、保育園経営のフランチャイズに加盟したAさんから、このようなお話を聞きました。

「開園時は、本部が定期的に訪問してくれていました。しかし1年を過ぎたあたりから、訪問指導がなくなり、メールでのやりとりのみとなってしまいました。毎月ロイヤリティを支払っているが、今、金額の交渉をしています。」

このように契約締結時と契約書に記載されている内容と異なってくる場合があります。
「なぜ、そうなってしまったのか?」契約違反や不履行になりますので、その都度すり合わせをすることが大切です。

2.フランチャイズ募集当初の本部は十分な支援体制が整っていないケースもあることを理解する

フランチャイズ募集を始めたての本部が、十分なサポートを提供できない理由をいくつか挙げてみたいと思います。

・直営店のノウハウは持っていても、加盟店の商圏・客層を十分把握していない
・現役の店長が指導を行っているため、経験や知識が浅く、加盟店のアドバイスができる人材が育っていない
・SVが直営店と加盟店の資金運用(経費等)の違いを理解していない
・加盟店をサポートする部署がないため、担当者が固定化されていない
・問題が発生した場合、上長の確認&解決&対応まで時間がかかってしまう

全国展開している大手のフランチャイズ本部ともなると、直営店また加盟店から随時上がってくる「成功事例」や「失敗事例」が、ノウハウとして蓄積されるため、それを共有することで、円滑な運営やサポート体制が築かれています。

しかし、加盟募集から間もないフランチャイズ本部はノウハウがないため、その都度答えを見つけていかなければいけません。

加盟店オーナーさんが「かゆいところに手が届いていない」と感じてしまうのは否めない部分です。

3.同じミッション(お客様への思い)を持って協力し合う

商売はやはり「人と人とのつながり」から成り立っています。
儲けと言う字は「備える・蓄える」という意味を含みますが、そのためには双方が“ウィン・ウィンの関係”でなければいけません。

本部の使命は「成功事例(ノウハウ)を提供し続ける」こと。

加盟店は「現場で起きた問題点や解決策を提供(報告)する」ことで、「良いお店づくり」というお互いのミッションが成立していきます。

最終目的は「お客様に良い商品やサービスを提供するため」という意識をもって関係を築くことが大切ではないでしょうか?

4.SVと強力な関係を築く

SV(スーパーバイザー)といっても、本部で決まったことを加盟店に伝えることが彼らの役割です。しかし、厳しい言い方をすれば、会社員の一人に過ぎません。

そのため、経営を左右するような重要な判断を出せるだけの決定権はありません。

また現場経験の少ないSVは「会社の意向とはではない、個人的な判断によるミス」をすることがあります。そのため、指導内容に不安な点を感じた場合、本部の幹部(または社長)と、直接連絡が取れる関係を築いておくことも大事です。

とは言っても、毎回SVを飛び越えて、いきなり幹部にクレームを出しても、それではSVの立場も本人のプライドも傷つけてしまうだけでなく、関係も崩れてしまいます。

大切なのは、本部⇔SV⇔加盟店(オーナー)という“強力なタッグ”を築くことだと思っています。

5.本部に対してけんか腰にならず譲歩も覚える(成功第一!)

以前、フランチャイズ本部に在籍していた時。あるオーナーさんから以下のことを言われました。

「こちら(オーナー側)が大金を出しているのだから、言い分を聞くのは当然だろ」

おっしゃっていることは、ごもっともです。しかし、本部が作り上げてきたビジネスモデルから逸脱するような行為やルール違反は、ビジネス自体の軸がブレてしまうだけでなく、他の加盟店オーナーさんが、身勝手な行動を起こしてしまう原因にもなります。

何事も「人と人とのかかわり合い」で成立するのが、ビジネスです。
加盟店だから、本部だからという問答をするのではなく「このビジネスをお互い成功させるぞ!」という強い気持ちがない限り、発展や成長などありません。

加盟店からも「提案する」「受け入れる」「解決していく」と譲歩しながら、一歩一歩ステップを踏んでいただければ、成功のモデルケースとして、「多店舗展開」など次のステップも視野に入ってくるのではないでしょうか?

フランチャイズビジネスは、1店舗展開より、2~3店舗と広げていくことで、安定した収益モデルが出来ていきます。

今回私のコラムを読んでいただいた皆様には、ぜひ多店舗展開も目指し、ビジネスを本部と一緒に成長させていただきたいと願っております。

キズカスカンパニー 代表コンサルタント 加藤 圭

外語専門学校卒業後、プリンスホテルに入社。サービス部門にて接客を学び、人事課では研修教官・人材育成を担当。その後、藤田商店(旧日本マクドナルド)系列会社にて、チェーンオペレーションを学ぶ。以降、飲食店・物販店・アパレルなど上場企業を含むチェーン店を中心に、店長・スーパーバイザーを経験。またフランチャイザーとマルチフランチャイジーの本部社員と役員を歴任。新店舗の立ち上げから立て直し、店長・SV・社員まで4,000名以上の人材育成経験から、机上の経営指導ではなく、店舗経営を知り尽くした“現場指導型のコンサルタント”として、全国各地で指導を行う。現在は、女性リーダー(マネージャー)育成支援、経営者向けセミナーを開催。