株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役松下 雅憲
2016-07-03 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

指示の仕方一つで店舗のクレンリネスレベルが上がる!

 このコラムのポイント

部下に指摘した点がまだ改善されていない、、、何度言えば分かってくれるのか。部下を持つ多くの方が悩まれている事でしょう。そんな時はまず自分が部下に対して題している指示の形を見直してみましょう。ここでは指示を出す側の上司の仕事を見ていきます。

フランチャイズWEBリポート編集部


なぜ指示に従ってくれないのだろう

「この間、ここを綺麗にしろと言ったのに、まだ汚いままじゃあないか・・・何度言ったらわかるんだ」
スーパーバイザーやエリアマネジャーが店舗を巡回したときに、汚くなっているところを見つけることが良くあります。上司としては、すぐに問題を改善して欲しいので、店長に問題点を指摘します。ところが、数日経って再び店を訪れると・・・
以前指摘した汚れた場所が、まだ汚いまま・・・
全然手を付けた気配がない・・・

で、冒頭のような話になるのです。

こういうお店(正確にはこう言う店長)は、クレンリネスの問題だけでなく、クオリティの問題でも、サービスの問題でも同じことを繰り返します。

では、何故こう言う店長は、何度言っても上司の指示をすぐにやらないのでしょうか?

彼らは、別にその指示をやりたくないのではありません。
むろん、やる気が無いわけでも無いのです。また、反抗しているわけでも、技術的に難しいから躊躇しているわけでもないのです。彼らは、ただ単純に「忘れているだけ」なのです。

上司は、部下に「これはとても大切なことだからしっかり言っておこう」と思って指示をします。
部下も、厳しく問題点を指摘されたのだから、「ちゃんとやらなきゃ」と手帳などにメモをします。

でも、結局やりません。


多くの場合、メモをしたことも忘れてしまっているのです。これは「やる気」の問題ではありません。「上司の指示の仕方」と「部下の仕事の仕方」の問題なのです。

店長の仕事は、ムチャクチャたくさんあります。
上司から指示を受けた後も、店舗営業があります。
お客様が次々とやってきます。明日の準備も必要です。
食材の発注も、スタッフの手配も、店の後片付けも必要です。
売上の納金もしなくちゃなりませんし、火の元の始末もきちんとしなくてはなりません。

別に上司の指示などどうでも良いとは思ってはいません。
しかし、その指示が緊急事態でも無い限り、目の前の緊急の必ずやらなくちゃ行けない仕事の方に気持ちは行ってしまうのです。
上司から、ここは汚いから綺麗にしなさい、と言われて、それをメモしても、お客様に呼ばれて、追加注文をキッチンに通して、お帰りのお客様のお会計をして、テーブルを片付けている間に、メモしたことは忘れてしまうのです。

では、上司はどのようにすれば、この店長に指示したことをやらせることが出来るのでしょうか?
ポイントは、3つあります。

1.やれる環境を与えること。
2.その指示の目的を伝えること。
3.やったかどうかについてフォローアップをすることです。

順番に見て行きましょう

1.やれる環境を与えること

掃除をすることなどすぐにでも出来る事なのですが、それは指示する側の立場と経験と論理です。
店長の立場と経験と論理ではありません。現実に出来ないのです。
簡単に出来るのならば、こう言う話も不要なのです。
でも、現実は、指示したことが出来ない店長がたくさんいます。

だから、指示したことが出来る、時間、労力、方法、予算、権限などの環境を与えることです。
軽い仕事なら、いますぐにやらせるのも、その環境作りのひとつです。
「後で良いからやって」よりも確実に出来る事になります。
もちろん、お客様優先ならば、後でもかまいません。
ならば、後で出来るようにしてあげねばなりません。

何時なら出来そうか?
どういう方法でやるのか?
どこまでやれば良いのか?
これらを指導するのも環境作りのひとつです。
「指示」は、環境作りではないのです。

2.指示の目的を伝える

二つ目は、目的を伝えることです。
上司はたまに「こんなことわかりきったこと」「常識だ」「あたりまえだ」と思いながら指示をすることがあります。
簡単なことなのに出来ていないことがあるのならば、それは店長にとってきちんと目的化されていない証拠です。
だから、
もう一度「なぜ?なんのために?」を教える必要があるのです。
目的を伝えることで、優先度が上昇するのです。

3.やったかどうかについてフォローアップする。

3つ目の「フォローアップ」は、確認と評価です。


上司の指示で一番良くないのが「指示しっぱなし」です。
部下は、指示されたことをきちんとやることもあります。
それに対してきちんと確認をする上司だと、部下の緊張感も増していきます。
きちんとやってもそれを確認しない上司だと、部下はやらなくても何も言われないときが緩みます。
で、やらなかったときにたまに思いだしたように叱られると、しょぼんとなるのです。また、せっかくやったのに確認してくれない時も、やる気はしぼんでしまうのです。

上司がいつもきちんと指示に対して「確認」をし、その出来具合を「評価」してくれると知っている部下は、緊張感とともにやる気が維持出来ます。

フォローアップをしない上司は、上司の仕事をしていないと言っても過言ではありません。
言い放しにならないように注意しましょう。

ちなみに1分で出来る様なクレンリネスだと、環境もへったくれもありません。すぐ拭き上げれば良いのです。
その場ですぐにやらせてしまえば良いのです。

最後に

私がマクドナルドの現場で働いていた時に、いつも上司に言われていた言葉で今回のコラムをまとめます。

Clean as you go.

「汚れたらすぐその場で綺麗にする」
「綺麗にしながら仕事をする」

色々お話ししましたが、ほとんどの場合は、その場ですぐにさせた方が良いのです。

 

株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

大阪出身。1980年日本マクドナルド(株)入社。店舗運営の現場と全社の出店戦略に関わり、2005年4月とんかつ新宿さぼてんを運営する(株)グリーンハウスフーズに入社。すぐに経営情報室を立ち上げ、経営情報の見える化、出店戦略システムの構築、さらにエリアマーケティングをベースにした店長教育システムを導入し大きな成果を上げた。2012年4月株式会社PEOPLE&PLACEを設立。代表取締役に就任。マクドナルドとさぼてんで確立したノウハウを独自の形に仕組み化した「店長ナビ®」を提供し、人材育成を通じて多くの外食企業や小売・サービス企業の業績向上に貢献している。