株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役松下 雅憲
2016-07-24 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

引き継ぎレポートの存在1つで経営効率に差がでる!

 このコラムのポイント

季節ごとのイベントやフェア、キャンペーンが数多く存在します。自社が取扱っている商品や地域により異なってきますが、新たに店舗に着任した店長には昨年、一昨年の販売データは全て把握できるよう、引き継ぎレポートを作成しておくことによって、キャンペーン時でも商品販売の機会損失を減らせます。

フランチャイズWEBリポート編集部


「引き継ぎレポート」の必要性

「あれ?去年のキャンペーンの時って、この商品はどれくらい売れたんだっけ?」

シーズン毎に行われるイベントやフェア、キャンペーン。
チェーン店や商業施設のテナントとして入っている店はもちろんのこと、個人店であっても季節ごとの限定メニューを販売したり、地域のイベントに合わせたフェアを行ったりしますよね。

そんなイベントやフェアやキャンペーンの際には、当然ながら過去にそれを行ったときのデータを記録したレポートを参考にして今年の計画を立てるのではないでしょうか。
あなたのお店でも、きっと、そう言うレポートがあると思います。
飲食店に限らず、サービス業や小売店でもそのようなレポートを残すことは基本ですよね。
ところが、中にはそう言う過去の経験やデータをレポートにして残していないお店があります。
と言うか、実はかなりのお店で「役に立つレポート」が残されていないのです。
そうなると、どう言うことになるかお解りですか?

そうです。
そういうお店は、今年のイベントやフェアやキャンペーンについての対策は、過去のイベント時の自分やスタッフの頭の中にあるあやふやな記憶やPOSデータだけが頼りになるのです。
もちろん、それが完璧なもの、しっかりと役に立つものであれば問題はありません。
しかし、人の記憶はそうは完璧なものではありません。
たいていが、一番肝心なところがすっぽりと抜け落ちてしまっているのです。
そして、それが原因で、大きなトラブルを招くことが多々あるのです。

私も大昔、店長をしていたときに、イベントでの重要な記録をレポートにして、後任の店長のために残していなかったがために、私の後を担った店長に大きなミスを犯させてしまったことがありました。

後任店長に犯させてしまったミスとは、「期間限定商品の在庫切れ」でした。毎年販売する季節限定メニューの販売で、販売期間の途中で在庫切れを起こしてしまうというミスをさせてしまったのです。

彼は、その年の発注を、前年のPOSデータをもとにそれよりも多めにしたので、絶対に大丈夫と考えていました。しかし、期間の3分の2程度のところで在庫がなくなってしまい、近隣店舗に借りに走り回るという事態になったのです。

なぜそのようなことになってしまったのか?
それは、前年のフェアの時に店長であった私が、詳細なレポートを作って引き継ぎをしなかった事に原因があります。
実は、私の時も、原材料の在庫切れを犯してしまっていたのです。

私の時は、結局近隣からの手配では全然足りず、その結果、予定期間よりも早めに終了していたのです。
私がそのことをレポートにして引き継がなかったがために、後任店長は、期間限定メニューの前年出数をPOSデータで確認し、それを単純にその時の本来の全期間で割って一日当たりの出数を算出してしまったために、やや低めの販売予測値になり、それで発注をしてしまったのです。

彼が、きちんと実際の販売期間をもとにしてくれていたら問題は無かったのですが、私にはそれを言う資格はありません。私がきちんとその時のトラブルを引き継いでいれば、問題は起きなかったのです。

その時以降、私はそれぞれのイベント、フェア、キャンペーン毎に、客層や天候、お客様の反応やスタッフが使った「お薦めワード」などについても詳細にレポートを残すようになりました。

いまでは、コンサルティングをさせて頂いているチェーン店の店長に、ごく当たり前のように「詳細なレポート」を残すように指導している私ですが、そのキッカケとなったトラブルのことをお思い出すたびに恥ずかしさがこみ上げてきます。

もし、あなたのお店やあなた自身に、「イベント・フェア・キャンペーンの詳細な経験レポート」を残す仕組みがなかったなら、是非ともこれを機会に作ることを強くお薦めします。
そのレポートは、間違いなく大きなトラブルを防ぐ役割を果たしてくれますよ。

編集部より

フランチャイズの場合、各店舗によりキャンペーンはもちろんのこと、日々の売上データも蓄積させ、それを経営ノウハウとして担当SVからの支援とされている場合も多いでしょう。しかし、数字上のデータを元にして、実際の現場の生の声をいかに効率よく後任の方に引き継ぎ、運営に反映させるかで、繁盛店とそうでない店の差に繋がってくることと思います。

株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

大阪出身。1980年日本マクドナルド(株)入社。店舗運営の現場と全社の出店戦略に関わり、2005年4月とんかつ新宿さぼてんを運営する(株)グリーンハウスフーズに入社。すぐに経営情報室を立ち上げ、経営情報の見える化、出店戦略システムの構築、さらにエリアマーケティングをベースにした店長教育システムを導入し大きな成果を上げた。2012年4月株式会社PEOPLE&PLACEを設立。代表取締役に就任。マクドナルドとさぼてんで確立したノウハウを独自の形に仕組み化した「店長ナビ®」を提供し、人材育成を通じて多くの外食企業や小売・サービス企業の業績向上に貢献している。