販路企画 代表田口 勝
2016-07-20 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
販路企画 代表 田口 勝

流通のプロが教える「商圏と立地」の考え方〜飲食ビジネスの勝ち戦略〜

 このコラムのポイント

飲食店経営に必要な出店先の物件確保。目玉商品。差別化メニューを用意していても、お客様が入らなければ意味がありません。今回は商圏と立地について、解説いただきます。

フランチャイズWEBリポート編集部


飲食店経営における商圏や立地が重要性

前回のコラムでは飲食店開業の際に重要な目玉商品についてお話をさせて頂きました。今回は飲食店開業のための第2弾となります。

今回の内容は商圏と立地について

商圏調査や立地調査、導線調査についてはこれまでのコラムでもお話しをしてきましたので、そちらをご確認頂ければと存じます。

私は、商圏調査や立地調査等を多数実施しておりますが、7割は飲食店様からのご要請という状況です。
その中でも多店舗展開を行う方が9割という比率となっています。ではなぜ多店舗展開をされる方は立地や商圏に拘られる方が多いのでしょうか?

飲食店のお客様からの声は次の2つ。

最初の店舗で商品や販促、サービスは確立され、次の店舗を出す際の売上の変化要因は、商圏や立地ということで意識が高い。
飲食店を開業してみて初めて商圏や立地に重要性に気づく。

しかし意識の低い方は、、

『商品が良ければ、後は、口コミで増える・・・』

では、口コミを起こす人は最初どのように来店されるのでしょうか?
そのうちの何%が口コミしてくれるのでしょうか?
口コミで増えるまでにいつまで待てば軌道にのるでしょうか?

『今はネットの時代。販促を駆使すればどうにかなる・・・』

では、ネット販促にいくらかけますか?
ネットの世界は、商圏内競合とくらべものにならないくらいに競合がいます。

飲食店開業は非常に多く、オープンして6ヶ月で軌道に乗らなければ、業態の方向性修正が必要であると私は思っております。それくらい厳しい業界です。

そこで、飲食店開業者の方の悩み『売上が伸びるかどうかもわからない商品で高い立地には出店ができない』
『立地に関しては、どうしても家賃と比例するため、検討してもしょうがない』という意見です。

とにかく『家賃を安く』という考えが強いということです。

家賃が安いことはBestの選択なのか?

これは正しくもあり、間違いでもあります。

家賃に対する考え方

『家賃を安く』したい理由は家賃比率の考え方あるからです。
家賃は月の売上の10%以内がベストである。本で書かれていたり、コンサルタントがよく言う話です。
ということは、10%が基準とすれば、200万の売上であれば、20万円、100万円の売上であれば10万円となります。

この比率が高ければ利益が出にくく、これより低ければ利益は出しやすいということになります。

これは、正確な商圏調査や競合調査、立地調査からマーケティング戦略を立案した上で出された適正な売上予測であれば、まさに正しい選択であるでしょう。

しかし、これぐらいだろうという安易な売上予測であれば、その家賃が安いのか高いのか分からずにただ、絶対値だけの評価となるということです。

つまり、正確な商圏調査や競合調査、立地調査からマーケティング戦略を立案した上で出された売上予測から出された家賃比率に対して高ければ問題ですし、安ければ良いということになります。

という事は、家賃が安い事は正解でもあり、間違ってもいるという事です。

後から広告を予定以上に投下しなければならない立地であれば、当然、お金の投資先が家賃から広告へ移動しただけであまり意味をなしません。
そういった店舗は現状、非常に多いように感じています。

飲食店開業者は絶対的に、商圏と導線にはこだわって欲しい

そうは言っても飲食店開業の方が、400万円の売上を出せるとは、簡単には言えません。そこで次のことにはこだわって欲しいと考えています。

一般的に商圏調査というと人口を調べたりすること思われがちですが、実は商圏と立地と導線という3つの視点で私は考えています。

商圏の視点

主に人口や世帯数や昼間人口や小売業の販売金額等の調査。

自分が想定するメイン商圏のマーケットの力を見るためのものです。
自分の飲食業態がこの商圏と適しているのか?という、業態の適正と購買力があるか?
という視点がメインです。
ここは絶対に外すと飲食業態は当たりません。
前に飲食店があり、撤退した物件に出店する場合もありますが、その場合でも、業態が違うことで繁盛店になることは成功事例としても多々あります。

立地の視点

店舗が見えやすいか?入りやすいか?車を止めやすいか?等

この視点は店舗事態の評価となります。
立地が良い条件の場合は、家賃が上がる傾向が強いです。
ここもBetterを選ぶ必要がありますが、この点はお店が工夫する事である程度まではカバーができる余地がある場合があります。

導線の視点

この導線が一番重要です。

立地に拘る理由は、通りがかりのお客様が店舗を認知しやすいというのが大きな理由でもあるため、対象となるお客様が通る導線上にないと認知されにくいということになります。

その導線に影響を与えるが、交通発生源という駅や商業施設等になりますが、駅に近く更に、主導線であれば、家賃は当然高くなります。

しかし、実はここに飲食店開業の方の大きなポイントがあり、主導線だけでなく、副導線と言われる導線が多数存在します。その中には、家賃は低い割に、人が通っている導線が多数存在します。例としては、日頃から通っている人の抜け道として活用している道路などです。

これを俗に言うと『お宝導線』や『お値打ち導線』と言われる所です。
ここは導線毎に通行量調査や交通量調査等をしていければわかります。
また、量だけでなく、質も重要です。
ターゲットとしているお客様が当然、通っていなければその導線とは言えません。

これを見つけるには、とにかく商圏を歩き、調査し、計測するといった地道な行動が必要です。
しかし、飲食店開業の方がしっかり調査をしているという方はほとんどおられません。

つまり、これから開業される方はここをしっかり実施すれば、競合と大きな差をつけることができるとも言えます。

まとめ

本日は、飲食店開業の方に向けて、商圏と立地と導線についてお話をしました。
詳細は過去のコラムも併せてみて頂きたいですが、私の経験上、導線調査を行っていると良い物件がないというエリアや地域であってもお宝物件を見つけることは多数あります。

重要なことは、一番高い投資をする場面ですので、是非、慎重にかつしっかりと調査をして店舗を決めて頂くことをお勧め致します。

編集部より

フランチャイズシステムを活用する場合、こういったリサーチも本部からの支援の一つでもあるケースも多く、物件の選定や出店先の商圏調査、立地調査も本部が行ってくれる場合もあります。数十店、数百店の出店実績がある業態なら、蓄えた実績がノウハウとなり、成功率を上げる支援の一つになりますね。

販路企画 代表 田口 勝

大学卒業後、熊本県の経営コンサルタント会社に勤務。マーケティング戦略立案・管理者研修等で中小企業のコンサルティングを担当。その後、業界最大手のコンビニエンスストアチェーン本部にて10年勤務、店長・スーパーバイザー・マネージャーを経験。退社後は販路企画を立上げ、商圏に基づくエリアマーケティング戦略立案・出店調査・FC本部展開支援・従業員戦力化研修、セミナー講演活動を行っている。