株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役松下 雅憲
2016-08-07 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

繁盛店の店長が自然にやっている「自店の自腹利用」その理由とは?

 このコラムのポイント

飲食店にも、高級食材を扱うレストランもあれば・ファストフード、カフェ・ラーメン店と業態も様々。味やサービスの良し悪しを一番よく知っているのは、やはり「お客様」です。お店の中からしか見ていないあなた!繁盛店の店長はこうしてますよ。

フランチャイズWEBリポート編集部


あなたは、自分のお金でこの店に通い続けられますか?

私が飲食店の店長向けに行っている研修では、集まった店長たちに、よくこんな問いかけをします。
『あなたがお客様だったら、この店にまた来たいと思いますか?』

すると、店長たちは口をそろえて答えます。
『もちろん、また来ますよ』

しかし、私の次の質問で、その口は急に重くなるのです。
『あなたは、自分のお金でこの店に通い続けられますか?』

 会社やお店によって仕組みやルールは違いますが、大体のお店は、店長が自分のお店で食事をするとき、料金を定価で自腹で払うことがありません。

「まかない」とか「試食費」として処理する事が多く、また会社の「福利厚生費」として割引が効いたりすることもあります。店長の上司であるエリアマネジャーやスーパーバイザー、そして本社の人も「調査費」や「試食費」で、その費用を経費処理することもありますよね。(もちろん、全ての会社ではありませんが…)

このこと自体は何も問題ではありません。

しかし「会社の経費で落とすお金で」食事をする… これは、厳密に言えば「お客様」ではありません。お客様は「自分のお金で」あなたのお店に食事に来るのです。(一部の例外はありますけどね)

自分のお店を「自腹で」利用してみる

この行動には、結構な決断が必要です。

1日3食、1年で1000回以上の食事をする私たちは、その何割かを外食でまかないます。その時 私たちは、お客様として「選択と決定の決断」をした上で、そのお店を利用しています。
それが「お金を払う」ということにつながります。

選択から漏れたお店、比較から外れお店、決断されなかったお店に、お客様は行きませんし、もちろんお金を払うことはありません。言い方を変えれば、お客様が「お金を払う」ということは、お客様の「評価」と言うことになるのです。

もしも、あなたが「仕事」として自分の店を利用していたら…
とても厳しい目でお店を観察し、問題点を探ろうとすると思います。

これはとても重要なことです。

しかし、それが「会社の財布のお金」でないとしたら…
"また来たくなる"というのは、果たして正直な本心なのでしょうか?

言い換えると「自分の財布からお金を出していたら」…
あなたは、もう一度お金を出してあなたのお店に来たいと思うでしょうか?

もしも、ほんの少しでも疑問があるのならば…
その気持ちは、お客様ならば何倍もの人数が感じていることなのです。

お客様の気持ちがわかるようになる方法

私は、このお話を店長にした後、店長たちに次のようにお奨めしています。

1. お客様の気持ちを知りたいなら、お客様と同じように「自腹で」利用してみる。
2. あなたのお店のメニューを全て食べてみる。
3. 1回ではなく、何回にも分けて食べ続けてみる。

これをすることで、はじめてお客様の立場に立ち、お客様の気持ちがわかるようになるのです。

一番大切なことは、お客様目線で「判断」すること

上司による厳しいチェックも大切です。あなた自身による厳しいチェックもまた大切です。しかし、一番大切なのは「お客様の判断」なのです。

「お客様がお金を払って下さるかどうか」
それは、つまり「あなた自身が自分のお店に自腹でお金を払いたいかどうか」なのです。

全く同じという訳ではありませんが、お客様の気持ちのかなり近いところまでわかるはずです。ぜひ、あなたのお店で あなた自身が「判断」してみましょう。

厳しいお話しのようですが、実はこれ、繁盛店の店長たちは自然にやっていることなんですよ。

編集部より

飲食フランチャイズの場合、商品価格もメニュー開発もオペレーション管理も本部が一括で担っている事が多いです。そのため、いくら味のチェックをしても店長の一存で変えたり、お客様に合わせてオペレーションを変えたりすることは基本的にできませんが、加盟を検討しているチェーンの味は最低限、自分が好きになれる商品、自分が売りたい商品と思うかどうか、自分の舌や肌でお店を確かめなければいけませんね。

 

株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

大阪出身。1980年日本マクドナルド(株)入社。店舗運営の現場と全社の出店戦略に関わり、2005年4月とんかつ新宿さぼてんを運営する(株)グリーンハウスフーズに入社。すぐに経営情報室を立ち上げ、経営情報の見える化、出店戦略システムの構築、さらにエリアマーケティングをベースにした店長教育システムを導入し大きな成果を上げた。2012年4月株式会社PEOPLE&PLACEを設立。代表取締役に就任。マクドナルドとさぼてんで確立したノウハウを独自の形に仕組み化した「店長ナビ®」を提供し、人材育成を通じて多くの外食企業や小売・サービス企業の業績向上に貢献している。