株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役松下 雅憲
2016-08-21 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

マクドナルドでも採り入れていた新人スタッフ教育法!「仕事の目的を伝える」

 このコラムのポイント

新人教育はそのスタッフの将来、そしてそれがお店の将来を左右するといっても過言ではないでしょう。こ今回はマクドナルドでも実践していた新人教育方法に関するコラムです。目的を伝えて正しく理解してもらうことによって、優秀なスタッフへと育ってくれます!

フランチャイズWEBリポート編集部


スタッフには「作業の目的」を丁寧に教えよう

「客席で使うダスターには2種類あるのよ。なぜだかわかるかな?」

マクドナルドでは、トレーナーと呼ばれるベテランスタッフが、新人スタッフの教育を担当します。
彼女たちは、新人スタッフを一人前にするために、きめ細かく丁寧にやさしく、時には厳しく指導をします。

そんな彼女たちが、新人教育をするときにいつもこだわっていることがあります。
そのこだわりのおかげで、新人達は短時間で仕事を任せられるレベルに成長するのです。

このこだわりとは・・・

「仕事の目的を伝える」

と言うことです。

彼女たちは、新人に教える仕事のひとつひとつに対して、その手順だけではなく、「仕事の目的」も丁寧に伝えているのです。
そして、ただ伝えるだけではなく、新人達に考えさせてから伝えるという手の込んだ方法を採ります。

新人たちに考えさせながら目的を伝える

トレーナー:「この2種類のダスターはね、拭く場所によって使い分けて欲しいの。グリーンのダスターはテーブルの上を拭くためのもの。こちらのホワイトのダスターは椅子の上とかゴミ箱みたいに一番汚れているところを拭くためのものなの。どうしてだと思う?」

新人:「汚れの具合が違うからですか?テーブルの上よりもゴミ箱や椅子の方が汚れているから・・・」

トレーナー:「正解!すごいわね。その通りなの。テーブルの上やカウンターの上は、そんなに汚れているわけではないので、殺菌をしたグリーンのダスターで拭くんだけれど、椅子やゴミ箱はそれよりも汚れているよね。それを一緒にすると、その汚れがテーブルの上にも付いちゃうかも知れないからね。衛生面を考えて分けているのよ」

新人:「それで、ダスターを殺菌するためのバケツも分けているんですね」

トレーナー:「その通り!さすが飲み込みが早いわね!」

理解が深まりミスを減らす効果

彼女たちは、ただマニュアルやルールを新人に伝えるだけではなく、その目的、理由を伝えることにこだわっています。そうすることで、新人達の理解度が深まり、記憶そのものを助けることになります。また、目的がわかっているのでミスを犯したり、いい加減な仕事をしたりしないようになるのです。

もしも、目的を伝えていないと、グリーンもホワイトもどちらもダスターなので、間違って使っても「まあいいか、どっちでも良いよね」と、安易な自己判断をしてしまう可能性があるのです。
飲食店においては、特に衛生面でスタッフがいい加減な自己判断をすることは、企業にとっても大きなリスクになります。
「なぜ?なんのために?」といつも目的や理由を伝えながら指導をすることで、意識が高まるのです。

まとめ

実は、この目的を伝えるという指導方法は、私が18歳の時、マクドナルドでアルバイトを始めたときも、先輩から教えられたことでした。
初めて仕事をする私に先輩が教えてくれたこと。それは、「遅刻厳禁」というルールでした。
そして、その目的、理由について彼はこのように教えてくれました。

「もし1分でも遅刻をしたら、その分一緒に働いている仲間に迷惑を掛けるだろ?たくさんの仲間と一緒に働く仕事なので、仲間に迷惑を掛けないことが一番大切なんだよ。だから遅刻は厳禁だからね」

40年経った今でも、この先輩の言葉を忘れることはありません。
マクドナルドでは、今でも「目的を伝える」という教育の伝統を受け続けています。
あなたのお店でも、是非とも「なぜ?なんのために?」を同時に教えるという教育へのこだわりを持って下さい。
きっと、さらに優秀なスタッフが育ちますよ。

編集部より

独立開業して自身が経営者となった場合でも、一緒に仕事するスタッフの教育は重要なポイントとなるでしょう。事業に対しての理解「なぜするのか?」「誰のためにするのか?」という点をしっかりと理解してもらうことで、スタッフの成長につながり、それが事業の成長、成功へとつながることと思います。

フランチャイズ加盟を検討する場合でも、「なぜこのフランチャイズなのか?」「本部の理念に共感できるか?」という点が自分に合った本部を見極める方法としても参考にしていただけるのではないでしょうか。

株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

大阪出身。1980年日本マクドナルド(株)入社。店舗運営の現場と全社の出店戦略に関わり、2005年4月とんかつ新宿さぼてんを運営する(株)グリーンハウスフーズに入社。すぐに経営情報室を立ち上げ、経営情報の見える化、出店戦略システムの構築、さらにエリアマーケティングをベースにした店長教育システムを導入し大きな成果を上げた。2012年4月株式会社PEOPLE&PLACEを設立。代表取締役に就任。マクドナルドとさぼてんで確立したノウハウを独自の形に仕組み化した「店長ナビ®」を提供し、人材育成を通じて多くの外食企業や小売・サービス企業の業績向上に貢献している。