株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役松下 雅憲
2016-10-23 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

従業員の「仕事の満足度」を高めるために必要なこと

 このコラムのポイント

人口の減少にともない、どの業界においても人材の確保は大きな課題です。今回のコラムでは、著者自身の店長・SVなどの数々の経験から導き出された、大切な従業員を失わないための「従業員満足度」の考え方・評価の仕方について知ることができます。

フランチャイズWEBリポート編集部


店長… 私、今日でバイト辞めさせていただきます

あなたが店長なら、きっとお店で一番聞きたくない言葉かも知れません。

私は、マクドナルドの新人店長時代に、スタッフからこの衝撃の言葉を幾度となく言われました。
そして、そのたびに「え~ちょっと待ってよ~」「今辞められたら困るんだよ~」「なんで辞めるんだよ~」と、いつも悲鳴を上げていたのでした。

実は、スタッフからこのように言われてからではもう遅いんですよね。でも、店長になりたての私はそんな重大な危機が迫っていることには気づかず、のんきに仕事をしていたのです。

当時、私が店長を務めていたお店は、皆さんご存じの『マクドナルド』です。

私の店は、土日祝日夏休みともなれば、多くのお客様でごったがえす、いつも大忙しの店でした。スタッフの数は、約70人。学生、主婦、フリーターなどたっくさんのパートアルバイトが働いてくれていました。

しかし、そんなにたくさんのスタッフを抱えていても、繁盛店のシフト確保は全く余裕など無く、ひとりでも辞められるとかなり苦しくなってしまうのが現状でした。

そのため、スタッフが辞めるなんて事を言い始めると、もう大変だったのです。「辞める」と言っているスタッフをなだめながら、シフトの穴埋めをどうしようかと、もう頭の中はパニック状態です。

新人とは言え、自分自身一生懸命に店長の仕事をしていたつもりでしたし、スタッフの事も全力で大切にしていたつもりでした

にもかかわらず、スタッフは辞めてしまう… そんなことが、幾度となく起こってしまうことが、店長として一番大変、かつ悲しい出来事でした。

スタッフがお店を辞める、最大の理由。

スタッフが、お店を辞めること。それは、「ここで働きたい」と思ってお店を選び、長く勤めて下さったスタッフにとっても、とても悲しい決断です。
悲しいのは店長だけではありません。

もちろん、スタッフにも事情があります。
引っ越しや学校の卒業、子どもさんの保育園の事情などやむを得ない事情もあります。

しかし、実は、スタッフが辞めてしまう原因は、スタッフの「やむを得ない」事情よりも、「そのスタッフ自身の仕事に対する不満」が原因であることの方が多かったのです。

マクドナルドの「従業員満足度調査」の考え方

マクドナルドでは、下記のような基本的な考え方があります。

1)スタッフが仕事に満足することで、お客さまに対して満足して頂けるような行動を行う
2)お客様は満足すると何度も来店されて売上げが上がる
3)売上げが上がるから利益も上がる
4)その利益は、再びスタッフに還元される

いわゆる「サービス・プロフィット・チェーン」という考え方です。

そのため、教育や評価やモチベーションを高める方法などいくつものノウハウがあり、それを実行していました。そして、スタッフ達の「仕事に対する満足」を数値化してわかりやすくするためのアセスメント、つまり『従業員満足度調査』を年に1回のペースで行っていました。

新人店長時代の私の店の『従業員満足度調査』の結果はというと、実は、悪い評価ではありませんでした。ほとんどのスタッフは、機嫌良く楽しく仕事をしていたようで、満足度評価も80%以上の高い評価になっていたのです。

新人店長時代の勘違いと、SVになってからの気づき

私は、その評価を元に「自分は間違っていない」という妙な勘違いをしていたのでした。

しかし、よくよく考えてみれば「満足度評価が高い」にもかかわらず、「離職率が高い」なんてことは、おかしいのです。80%以上の高い満足度を示していたにもかかわらず、スタッフが辞めると言うことは、私のやり方のどこかに間違っていることがあるはずなのです。

そして、そんな状態にもかかわらず、高い評価になってしまう『従業員満足度調査』の仕組み自体がおかしいはずなのです。

当時店長だった私は、その時点では、矛盾点を解決できませんでしたが、やがて立場が変わりスーパーバイザーとして多くの店舗を担当し、その後、とんかつチェーンに転職し、その疑問を解決するための調査や仮説検証を行い続け、ようやく、ひとつの結論に至ることができたのです。

それは、従業員満足度の評価は、「満足度を%で計るのではなく、満足度のステージのどのレベルにいるのかで計る方が、改善と成長のための行動がわかり安い」と言う考え方です。

それが、『従業員満足度6ステージ』なのです。

次回予告

このコラムの皆さんには、この『従業員満足度6ステージ』について、詳しく解説をさせて頂きます。

次回のテーマは「店長がスタッフのリーダーになることの大切さ」について
コラム掲載は、来週の日曜日18時です。
お楽しみに! 

※参考「『これからもあなたと働きたい』と言われる店長がしているシンプルな習慣」松下雅憲著(同文舘出版)

株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

大阪出身。1980年日本マクドナルド(株)入社。店舗運営の現場と全社の出店戦略に関わり、2005年4月とんかつ新宿さぼてんを運営する(株)グリーンハウスフーズに入社。すぐに経営情報室を立ち上げ、経営情報の見える化、出店戦略システムの構築、さらにエリアマーケティングをベースにした店長教育システムを導入し大きな成果を上げた。2012年4月株式会社PEOPLE&PLACEを設立。代表取締役に就任。マクドナルドとさぼてんで確立したノウハウを独自の形に仕組み化した「店長ナビ®」を提供し、人材育成を通じて多くの外食企業や小売・サービス企業の業績向上に貢献している。