株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役松下 雅憲
2016-11-13 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

スタッフの心を動かす!信頼される店長になるための3つの方法

 このコラムのポイント

SNSの投稿などでフランチャイズ店のスタッフの常識にかけた行動が話題になっていますが、スタッフにしても店長にしても、千差万別いろんな成長段階の人に出会います。その中で、どのように相手を見極め、良い部分を引き出し、同じ目標を目指して行くのか。今回のコラムでは、転勤などで新しく着任した新米店長の気持ちで、スタッフの意欲に寄り添い、従業員満足度を高める方法について知ることができます。

フランチャイズWEBリポート編集部


店長が語るビジョンが、スタッフの行動の指針になる

昔々大昔… 私がマクドナルドで店長をしていた頃、ある上司の方からこう言われました。

彼が言うには、店長がスタッフに「こう言う店にしたい!だからこうあるべきだ!」と熱く語ることによって、スタッフは徐々に店長の熱意に感化されていくものだ と言う事でした。

当時は彼に限らず、多くのマネジャーや部長が店長に対して「ビジョンを語ろう」と指導していました。

店長が、「目指す店作りのイメージ」をビジョンとして語ること自体は、私もとても良いことだと思います。

スタッフに対して「どの様な形になることを目指すのか」と、具体的にイメージできるように伝えることは、「何をどの様にすれば良いのか」という指針になります。これは、店作りにおいて、とても重要な指針です。

間違ってはいけない!ビジョンの語りどき

ただし、この「ビジョンを語る」こと・・・それが逆効果になることもあるのです。
今回のコラムでは、その注意点についてお話ししましょう。

実は、あるタイミングにおいては、いきなり「ビジョンを語る」とかえってお店がガタガタになってしまうのです。
さてこれは一体どう言うことでしょうか?

「あるタイミング」… それは、あなたが、今のお店から異動し、新しいお店に着任してすぐのタイミングです。

異動・転勤で着任した新しい店舗で、あなたが、いきなり「この店はこのようにしたい!」と「ビジョンを語る」のは、実はとても危険きわまりないのです。決してやってはいけません。

特に、前任店長が「スタッフの人心を掌握していた」のならなおさらです。
そんなお店のスタッフに対して、いきなり新任店長が「ビジョンを語る」と、あっという間に彼らはしらけてしまうのです。

では、なぜ、せっかくの「ビジョンを語る」ことでスタッフはしらけてしまうのでしょうか?

それは、まだその店は「新任店長の店」にはなっていないからなのです。

あなたが着任したお店は、実はまだ「前任店長の店」のままなのです。
新しい店が「新任店長の店」になるには、スタッフと店長との信頼関係の構築が完了してからなのです。

着任早々は、まだそんな「店長とスタッフとの信頼関係」は出来上がっていません。

ところが、実に多くの店長が、「ビジョンを語る」だけで無く「過去を否定する」という方法で、急速にスタッフを掌握しようとします。つまり、前任店長がやってきたことをことさらに否定し、自分のやり方の方が正しいと主張し、強引に改革を進めようとするのです。

世の中には、そんな困った店長が、かなりたくさんいるのです。
あなたはそんな店長ではありませんよね?
まあ、私もかつては同じようなことをやっちゃっていました。お恥ずかしい限りです。

例えば、プロスポーツチームの監督と選手で考えてみる 

これが、サッカーや野球などのプロスポーツチームの監督ならば、いきなりビジョンを語り、明確な方針や方向性を示すことはとても重要です!!

選手達は、その監督の意向に沿うように、新しい監督の考え方や求めるものを全力で理解しようとします。そして監督の求める行動をし、自分を使ってもらおうとアピールします。それが、プロです。

しかし、あなたの店はそうではないはずです。
多くのスタッフが、アルバイトなのです。

お金をもらっているのですから「プロ」ではありますが、その意識レベルは「プロスポーツチーム」と比べると決して高いとは言えないはずです。

もちろん、アルバイトといえども、彼らは一生懸命に仕事をし、お客様に喜んでいただこうと努力し、自分の行動や成果を認めてもらおうと店長であるあなたにアピールするでしょう。しかし、それでもまだ彼らは、プロレベルに行くまでの修行段階なのです。

さらに、プロスポーツチームの監督とは違い、あなた自身もまだスタッフからは「信頼」を勝ち取っていない段階なのです。そんな時に、新任店長として大切なことは、まずスタッフひとりひとりの心をつかむことに全力を尽くさねばならないのです。

スタッフに信頼される店長になるための3つの方法

では、ここからは、その方法についてお話ししましょう。
ポイントは3つあります。

1. 店長が、想い描く「理想の店」づくりを率先して体現する

ひとつめは、「あなたが目指す店作りのイメージを、あなた自身が毎日、客席やキッチンや店頭などで表現すること」です。

そうすることによって、スタッフ達は、あなたの目指すビジョンを「あなたの行動によって」理解していくことになります。そして、そのうちにあなたの行動をスタッフ達が真似るようになります。

やがて、あなたがお休みの日でも、あなたがやっている行動を自主的に行うようになります。必ずなります。

2. スタッフが想い描く「理想の店」一緒になってつくってみる

ふたつめは、「スタッフの心の中にある『スタッフが目指している理想の店のイメージ』を引き出すこと」です。

スタッフの心の中にも「こうなったらいいな」「こんな素敵な店にしたいな」という夢や希望や目標はあるのです。そのビジョンは、決して店長とは全く違ったものではないのです。

むしろ「全く同じ」と言っても過言ではないのです。

店長は、それを引きだし一緒に行動し、その結果それを言葉にしていくのです。
「押しつける」のではなく「引き出す」のです。

すると、スタッフは、「店長が目指すビジョン」が、実は、自分が望んでいる姿と同じであることに気づき始めます。

そこで共感が生まれ、それが信頼感に繋がって行くのです。「同じビジョン」でも、「押しつけられる」のと「引き出される」のでは、その効果は全く違うのです。

3. 「うちのスタッフは素晴らしい」と信じる

みっつめは、「スタッフの心の中にも素晴らしい夢やビジョンが有る!と言うことをあなたが信じること」です。

仕事の満足度の高いスタッフを育てることの出来る店長は「うちのスタッフ素晴らしい」からスタートしているのです。彼らは決して「うちのスタッフの出来は悪いから厳しい指導が必要だ」からはスタートしていません。

この3つの方法で、あなたとスタッフとの信頼関係を築いていけば、必ずスタッフのスキルは向上し、仕事の満足度は向上し、その結果、お客様の満足度も向上します。是非とも試してみて下さいね。 

次回も、さらに詳しく「従業員満足度6ステージ」について深堀りしていきます。お楽しみに! 

  • 参考「『これからもあなたと働きたい』と言われる店長がしているシンプルな習慣」松下雅憲著(同文舘出版)

株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

大阪出身。1980年日本マクドナルド(株)入社。店舗運営の現場と全社の出店戦略に関わり、2005年4月とんかつ新宿さぼてんを運営する(株)グリーンハウスフーズに入社。すぐに経営情報室を立ち上げ、経営情報の見える化、出店戦略システムの構築、さらにエリアマーケティングをベースにした店長教育システムを導入し大きな成果を上げた。2012年4月株式会社PEOPLE&PLACEを設立。代表取締役に就任。マクドナルドとさぼてんで確立したノウハウを独自の形に仕組み化した「店長ナビ®」を提供し、人材育成を通じて多くの外食企業や小売・サービス企業の業績向上に貢献している。