株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役松下 雅憲
2016-12-25 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

新人スタッフの初期退職は『3日目のオリエンテーション』で防げる!

 このコラムのポイント

新しく雇い入れたばかりスタッフが一週間も経たないうちに辞めてしまう。仕事の軽重かかわらず、こうした悩みを抱える経営者さんは少なくありません。今回のコラムでは、新人スタッフが感じる「心の負担」にフォーカスしながら、店長・経営者に一番必要な「スタッフの声に耳を傾ける」姿勢について学ぶことができます。

フランチャイズWEBリポート編集部


辞めたくなるタイミングは、入店して3日目

「新人さんって入店後、何日で辞めるひとが多いと思う?」

私が店長の時に、ある上司からこのように聞かれたことがありました。

それまで、そんな日数のことは考えた事も、データを取ったことも無かったので、その質問に、私は適当に「1ヶ月くらいですかね~」と答えました。

そんな適当な返答に対して、上司は「新人はね、入社して3日目・30日目・3ヶ月目に辞めたくなるタイミングが来るんだよ。だから、そのタイミングに合わせて新人のフォローアップをすることが大切なんだ。」と教えてくださったのです。

確かに、過去を思い起こせば、せっかく採用した新人スタッフって、3日目・30日目・3ヶ月目のタイミングで辞めてしまうことが多かったような気がするな… 私は昔を振り返り、少し反省しながらそう思ったのでした。

この3回、つまり3日目・30日目・3ヶ月目の時期には、それぞれに新人スタッフがぶつかる壁があるのです。

新人スタッフに立ちはだかる「壁」

その中でも最初の壁がいきなり3日目にやってきます。

ここの壁は主に「仕事の理解とそれを指導するトレーナーや先輩スタッフとのコミュニケーション」と言うかなりでかい壁がドーンときます。

同じような仕事の経験が過去にあるスタッフは別ですが、ほとんどの新人はその店の仕事が初めてです。

もしも、たとえ「アルバイトが出来るレベルの簡単な仕事」と言う風に会社やお店が思っていても、当の新人スタッフ本人にとっては、わからないことだらけだし、コツも掴めないし、言葉の意味さえわからないのです。

「慣れれば出来る事」でも「慣れるまでは大変」なのです。

ましてや、自分を指導してくれる先輩達は、自分のことをよくわかってくれているわけではありませんから、必ずしも自分にとってわかりやすく指導してくれるとは限らないのです。

また、新人スタッフも先輩トレーナーの性格やパーソナリティを理解しているわけではありませんし、緊張感もかなり高まっている状態なので、ちょっとしたことでもうまく受け入れられないことがあるのです。

大切なことなので、もう一度言いますが、そんなコミュニケーションのギャップの最初のピークが入店3日目なのです。

コミュニケーションギャップを知る

私は、店長時代にそんなコミュニケーションギャップを解消するのが自分の仕事だと考えて、最初のオリエンテーションでは「わからなくなったら、必ず、店長である私に相談してください」と言っていました。

例えば、良くあるのが
「ベテランスタッフのAさんと社員のBさんが教えてくれたことが違うように感じる… どっちを信じれば良いのか?」というギャップ。

実は二人とも同じ事を言っているんですけどね。言い方の違いが新人にはわからないときがあるのです。

こんな時、ベテラン達ならば
「だったら聞けば良いじゃない」と思うかも知れません。

しかし、新人達はそこまで余裕がありません。質問をすることさえ怖かったりするのです。そして、うまく相談できずにどんどんギャップが広がり、どんどん落ち込んでいくのです。

全ての新人スタッフが、気軽に店長に相談できるわけではないのです。

いくら店長が、ニコニコしながら優しく広く大きく新人の気持ちを受け止める姿勢を持っていたとしても、それでもうまく相談できない新人スタッフがほとんどなのです。

入店3日目にフォローアップの機会を設ける

ある新人の落ち込みから、そのことに気がついた私が新たに設定したのが「3日目のフォローアップオリエンテーション」でした。

最初に新人スタッフの勤務シフトを組むときに、あらかじめこの「3日目のフォローアップオリエンテーション」を、ワークスケジュール上で指定しておくのです。こうしておくと忘れることはありません。

この3日目のフォローアップオリエンテーションは、100%実施することが大切なのです。

さらに私は、この「3日目のフォローアップオリエンテーション」の1時間については、必ず私自身がするようにしていました。

目的はただひとつ「これからも仕事を続けると言う意志の確認」です。

その1時間の最後に、この目的を果たすために、入店3日目の新人スタッフに問いかけます。

「明日からも、私たちと一緒に仕事ができますか?」

この質問をする時は、私自身もかなりドキドキしていました。
だって「やっぱり無理です。辞めます」なんて言う言葉は聴きたくないですからね。

しかし、この『3日目のフォローアップオリエンテーション』をすることで、そんな心配は無くなりました。

この仕組みのおかげで新人スタッフの初期退職は、ほぼゼロになったのです。

店長の一番大切な仕事

ちなみに、この『3日目のフォローアップオリエンテーション』では、店長は話を聴くことが一番の仕事です。

決して一生懸命に事情や理由を説明しようとしてはいけません。
新人スタッフが自分の悩みや苦しみを、声にして出せるまで、我慢強く聴くのです。

彼らが「この人は私の話を聴いてくれる」「この人には話しても大丈夫」と思えるまで、ひたすら聴くことです。

そんなレベルで『3日目のフォローアップオリエンテーション』をすることができたら、新人スタッフが3日目に辞めるなんて事は無くなります。

嘘だと思ったら、試してみて下さい!

もしダメだったら、ご連絡くださいね。お話し、伺いますよ。


次回は「従業員満足度を高めるために、まずは『働く環境』をきちんと整えよう」というテーマでお話しします。お楽しみに!

 

  • 参考「『これからもあなたと働きたい』と言われる店長がしているシンプルな習慣」松下雅憲著(同文舘出版)

 

株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

大阪出身。1980年日本マクドナルド(株)入社。店舗運営の現場と全社の出店戦略に関わり、2005年4月とんかつ新宿さぼてんを運営する(株)グリーンハウスフーズに入社。すぐに経営情報室を立ち上げ、経営情報の見える化、出店戦略システムの構築、さらにエリアマーケティングをベースにした店長教育システムを導入し大きな成果を上げた。2012年4月株式会社PEOPLE&PLACEを設立。代表取締役に就任。マクドナルドとさぼてんで確立したノウハウを独自の形に仕組み化した「店長ナビ®」を提供し、人材育成を通じて多くの外食企業や小売・サービス企業の業績向上に貢献している。