株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役松下 雅憲
2017-01-08 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

従業員満足度を高めるために、まずは「働く環境」をきちんと整えよう

 このコラムのポイント

人手不足が大きな引き金となり、始まる負のスパイラル。店舗経営が悪化への道に引きづり込まれないためにも、今いる・新入の従業員の満足度を高めることが大変重要です。今回のコラムでは、スタッフを定着させるために欠かせない、働くために必要な「基本的な環境づくり」の大切さについて知ることができます。

フランチャイズWEBリポート編集部


エリアマネージャーが出会う「店長の悩み」

「店長!今のような状態では、スタッフをいくら採用してもすぐに辞めてしまいますよ。もっと、スタッフが、快適に仕事ができる環境を整えましょうよ!」

彼は、あるレストランチェーンのエリアマネジャーです。
他の会社から転職し、店長経験を経て、このたびこの店の担当マネジャーに就任しました。

そして、この日は、彼が店長との初めてのミーティングをしていたのでした。 

彼が担当しているこの店の店長は、スタッフの信頼も厚く、お客様からの評判も良い、なかなかの実力者です。

しかし、現場に残る色々な悪しき習慣がなかなか改善できずに悩んでいました。
それが原因で、新しく採用したスタッフの定着率が悪く、その問題点は解決されず放置されていたのです。

上司の声にかき消される「スタッフの声」

一部の飲食店には、未だに多くの店に、『古い習慣』がたくさん残っています。
教育・人間関係・労働時間・評価・報酬 … 

例えば …
「手取り足取り教えなくても、見て覚えろ!」
「後輩は先輩の言うことを文句を言わずに聞け!」
「俺が若い頃は、24時間働いたものだ!」
「がむしゃらに頑張れば良いんだ!上司は見てくれているから!」
「給料は後から付いてくる!」

このレストランチェーン店にも、そんな『古い習慣』がたくさん残っていました。

もちろん、古くからある習慣には、新人スタッフが成長するためにとても大切なものもたくさんあります。それはそれでいいのです。何も古くからあるからダメなんだとは言いません。

しかし、そんな習慣の中には、悪しき習慣もたくさん残っているのです。
ベテランの店長や経営幹部達は、自分達がやってきたことを部下達にも求めがちです。

多くの場合、彼らは、非常に苦労をし、がむしゃらに寝食を惜しんで働いてきました。だから、今は経営幹部としての地位があるのでしょう。そのため、ついつい部下達にもそれを当たり前と思い、自分達がしてきたことを求めるのです。

この店のかつての上司も同様でした。… 彼らは、店長に対して、こう言っていたのです。

「まあ、飲食店ってそんなもんだ」
「それくらいガマンしろ」
「そんなことやったらお金がかかる」
「嫌なら辞めればいい」
「つべこべ言うな」 

この店の問題点や不満は、こんな上司からの声でかき消されていました。

快適に働くための「基本的なこと」

この店には、スタッフが快適に働くための基本的なことが満たされていないという問題が 多々ありました。

例えば …
・空調の効かない厨房や休憩室
・使い古されて補修跡だらけのユニフォーム
・害虫がうろつく厨房や倉庫
・手が荒れる洗剤
・指を切りやすいステンレス機器
・重たい荷物
・滑る床
・一日に何十回と往復しなくてはならない階段
・壊れてしまって鍵のかからないロッカー
・固くてパリパリのトイレットペーパー
・故障して冷たい便座
・休憩が十分に取れない無理なシフト

さらには
・基準がよくわからない昇給や昇格  などなど…

そして、その問題点を根本的にカイゼンするために上司に支援を要請しても、

かつての上司は …
「それは店長の仕事だから」
「店長が責任持ってやって」
「なんとか上手いことやって」などです。

店長は、どうして良いのかが分からないまま月日が過ぎていました。

その結果、スタッフの定着が悪く、いつもギリギリの人数でお店を回していました。そして、店長は疲れ、多くの問題点は改善されないまま放置されていたのです。

上司からのバックアップ&フォローが重要

確かに店長は、そう言う問題を解決するのが仕事です。それは間違いありません。

しかし、店長がそれに取り組みやすいようにバックアップしフォローアップするのが上司であるエリアマネジャーや経営幹部の仕事なのです。

『任せる』と『放任する』は違うのです。『放任は 放置と同じ』なのです。

世の中には、この大切なポイントをわかっていない上司やエリアマネジャーが非常にたくさんいます。かつてのこの店のようにね。

「働く環境」を整えるためのポイント

あなたが、エリアマネジャー・スーパーバイザー・経営幹部ならば

・店長とスタッフが『安全に・快適に・気持ち良く・楽しく働く』ことのできる
 基本的な環境を「何よりも最初に」整えていますか?
・問題を棚上げしたり、先送りしたり、していませんか?

あなたが店長ならば

・そんな問題を、正確に上司に報告し、改善のための支援を要請していますか?
・そして、その支援を元に問題の根本的な改善を進めていますか?  

この店では、新しいエリアマネジャーが、問題を棚上げしていた店長の目を覚ますことから仕事を始めました。

スタッフが仕事に満足するには『快適に働く環境づくり』が何よりも大切なことなのです。それが整ってこそ、スタッフ達は「ずっとこの店で働きたい」と思うようになるのです。

さて、あなたの現場には『悪しき習慣』は、ありませんか?
あなたは、それを棚上げしたり、先延ばししたり、放置したりしていませんか?

そのままにしておくと、たいへんなことになりますよ。


次回は「店長は朝一番の挨拶でスタッフをパワーアップさせよう」というテーマでお話しします。お楽しみに!

 

  • 参考「『これからもあなたと働きたい』と言われる店長がしているシンプルな習慣」松下雅憲著(同文舘出版)

 

株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

大阪出身。1980年日本マクドナルド(株)入社。店舗運営の現場と全社の出店戦略に関わり、2005年4月とんかつ新宿さぼてんを運営する(株)グリーンハウスフーズに入社。すぐに経営情報室を立ち上げ、経営情報の見える化、出店戦略システムの構築、さらにエリアマーケティングをベースにした店長教育システムを導入し大きな成果を上げた。2012年4月株式会社PEOPLE&PLACEを設立。代表取締役に就任。マクドナルドとさぼてんで確立したノウハウを独自の形に仕組み化した「店長ナビ®」を提供し、人材育成を通じて多くの外食企業や小売・サービス企業の業績向上に貢献している。