株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役松下 雅憲
2017-01-22 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

報酬への正しい理解が鍵!店長と一緒に売上UPを目指してくれるスタッフの育て方

 このコラムのポイント

従業員が会社への不満を漏らす時、必ず引き合いに出てくるのが「報酬」とのアンバランス。賃金以上の重労働、長い拘束時間、努力が報われない低い評価…。自分の報酬が今なぜこの額なのか、きちんと理解して働いている人、またその算定方法をきちんと説明できる雇用主は意外と少ないのが現状です。今回のコラムでは、そうした労使間の溝を埋め、スタッフ自ら会社の成長を目指してくれる人財にステージアップさせるための方法について知ることができます。

フランチャイズWEBリポート編集部


時給・給料・売上の関係を、スタッフと考える

「時給が上がるのと、お給料が増えるのはどっちがイイ?」

店長からこう聴かれたスタッフは、一瞬きょとんとした顔をしましたが… すぐに

「もちろん、給料が増える方がイイに決まっています。でも、それって時給が上がることと一緒じゃあないんですか?」

いぶかしげな表情で聞き返すスタッフに、店長はこう答えました。

「同じじゃないのよ。あなたたちアルバイトスタッフは時給×勤務時間数でお給料が計算されるわよね。ということは… このどちらかが上がるか増えるかして、どちらも減らないことが必要だよね」

「ですよね」

「でもね。仮に時給が10円上がっても、売上が上がらなかったとしたら… 人件費の予算は決まってるから時間数を減らさなくてはならなくなるのよ。それでもし勤務時間を2時間カットになったら、どっちが給料多くなる?」

「私の時給は 1000円で、先月の勤務時間数は120時間だから… もしも時給が10円上がったら、増えるのは1200円… けれど 2時間カットになったらマイナス2000円。わあ~ 給料減っちゃいますね〜」

「そういうことなの。だから、逆に考えると、売上が増えて忙しくなって勤務時間が2時間増えたら、今度は時給が上がるよりも給料は増えるでしょ。別に時給を上げないと言っているんじゃ無いのよ。売上を伸ばして、それに貢献した評価で時給も上げて、勤務時間も増やすようにがんばるのが大切だと言いたいのよ」

「つまり、売上を増やすことを忘れるな!ってことですね」

「そのとおり!わかってるじゃん!」

スタッフにとっては、時給は自分の評価のバロメーターです。満足度やプライドにも大きく影響します。

しかし、同様に 店長はスタッフに対して『勤務時間数』も大きな評価のバロメーターであることを忘れさせてならないのです。

人材の雇用を戦略的に考える

店長にとっては、売上がずっと順調に右肩上がりならば、それに応じて使える人件費が増えていきます。なので、その増えた分を、時給に投資するか、時間数に投資するのかを考えることができます。

しかし、多くの店長は、この増える予算を『戦略的』には活用していません。
実にもったいない!!

どういうことかと言うと、例えば…

スタッフが不足しているので、辞めて欲しくないスタッフの時給をどんどん上げて、人件費%だけは予算通りになっている、なんてことをしている店長が多かったりするのです。

「だって、スタッフが少ないから仕方が無いでしょ!」と言われそうですが…でも、こんなことをしてもお店はいつまで経っても良くなりません!

確かに、少ないスタッフで回すのですから、数字上の生産性も上がるでしょう。
人件費率も、予算を下回り、一見利益がアップしているように見える…でも、現実のお店は、疲弊した店長やスタッフでバタバタしており、お客様もイライラしている… こんなことでは売上なんて上がるはずがありません。

目指すべきは

1)スタッフのやる気を高め『生産能力』を高める
2)高めた『生産能力』を活かして『売上を伸ばすこと』に全力をあげる
3)高めた『売上』と『生産能力』に応じてスタッフ毎に時給評価に反映する
4)売上増加に合わせて評価の高いスタッフの『勤務時間数』を増やす
5)新しいスタッフを採用する
6)結果として、売上増加と人件費割合、そして生産能力と生産性と平均時給のバランスを取る
と言う流れなのです。

ただし、在籍スタッフが少ないからと言って、大学の授業を休ませてシフトインさせるお店や、スタッフの急なキャンセルやシフト変更が常態化しているようなお店は、こういう時給がどうのこうのとは違う問題を先に解決しないといけませんよ。そんな状態で数値上の『生産性』を高めても、売上は伸びませんからね。

このことについては、また別の日にお話しします。

スタッフ成長の鍵は、報酬の正しい理解から

さて、話をまとめましょう。

時給や 勤務時間数、人件費予算などについては、多くの店長が悩むところです。

しかし、従業員満足度を高めていくには、以前のコラムでお話しした従業員満足の6つのステージの【第2ステージ】「報酬と承認」で、この問題をしっかりと捉えて解決しておかないと、次のステージである【第3ステージ】「目標・評価」には到達できません。【第2ステージ】を完全にクリアーせずに、次のステージに行くと、攻撃力や防御力が不十分なまま、魔物と戦うことになりますから、あっという間にゲームオーバーになってしまいます。

店長は『生産性』を上げていくことを求められます。

それは『売上』と『生産能力』を上げて行くことで実現させねばなりません。
『生産性』だけを見てはいけません。そうすると『時給』だけを見てしまうようになるのです。

大切なことは『売上』なのです。

この【第2ステージ】「報酬と承認」は、まさにその課題をクリアーするのにうってつけのステージなのです。

そして、このステージをクリアーするためにキーとなるもの、それが スタッフに『時給』『時間数』『売上』の相関関係について正しく理解させることなのです。


次回は「やる気を高める承認とやる気を失う否定」というテーマでお話しします。お楽しみに!

 

  • 参考「『これからもあなたと働きたい』と言われる店長がしているシンプルな習慣」松下雅憲著(同文舘出版)

 

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株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

大阪出身。1980年日本マクドナルド(株)入社。店舗運営の現場と全社の出店戦略に関わり、2005年4月とんかつ新宿さぼてんを運営する(株)グリーンハウスフーズに入社。すぐに経営情報室を立ち上げ、経営情報の見える化、出店戦略システムの構築、さらにエリアマーケティングをベースにした店長教育システムを導入し大きな成果を上げた。2012年4月株式会社PEOPLE&PLACEを設立。代表取締役に就任。マクドナルドとさぼてんで確立したノウハウを独自の形に仕組み化した「店長ナビ®」を提供し、人材育成を通じて多くの外食企業や小売・サービス企業の業績向上に貢献している。