株式会社経営教育研究所 FCアナリスト・コンサルタント今野篤
2017-04-26 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
株式会社経営教育研究所 FCアナリスト・コンサルタント 今野篤

フランチャイズにおけるロイヤリティの意義

 このコラムのポイント

業界未経験、異業種参入の加盟者にとって、フランチャイズ本部は、成功のビジネスモデルを提供し、その経営がうまくいくよう支援してくれる存在。その対価の一部として、加盟者はFC本部にロイヤリティを支払いますが、これを巡ってのトラブルが後を立ちません。今回のコラムでは、著者が実際に出会った事例を紐解きながら、その重要性と意義についてわかりやすく解説します。

フランチャイズWEBリポート編集部


脱サラ起業オーナーを例にみるロイヤリティ

斉藤さん(仮名)の店舗は、東京から電車で一時間ぐらい離れた郊外の街にある。斉藤さんは元エンジニアで、数年前脱サラした起業組だ。この店舗のオーナーでもある。斉藤さんは独立開業にあたり、起業リスクを低減するためにFCに加盟することにした。FCフェアや雑誌、インターネットを調べ尽くし、出会ったのが A社だった。

A社は、全国展開しているフランチャイザーだ。担当の営業マンは、なかなかの俊敏で、なにしろ彼の事業に対する情熱には、初対面ながら感心させられてしまった。初期投資は当初の想定より少ないし、なによりも地域に根ざした経営ができる。地域貢献にもなる。斉藤さんが判を押すまでに時間は要らなかった。

開業1年目は右も左も分からないことだらけで、あっという間に過ぎてしまったが、苦労のかいあって経営は軌道に乗った。直ぐにFC本部からは2店舗目の打診をされ、加盟から僅か数年で何店舗も持つオーナーになった。とても順風満帆の経営に思えるが、そんな斉藤さんには誰にも言えない秘密があった。それは…、ロイヤリティの不正である。

そもそも、ロイヤリティとは…

一般的にロイヤリティとは、加盟者がFC本部に支払う対価のことを言い、商標・マークの使用権、ノウハウ供給、経営管理・指導、販促援助、宣伝広告など、開業後にFC本部から継続的に提供されるものに関わる費用である。つまり、加盟者とFC本部は切っても切れない仲であり、互いにステークホルダー(利害関係者)にあたる。

ロイヤリティ・パーセンテージは、業界によって様々であり、飲食や専門業の場合は売上の数%、サービス業は売上の10%前後から数十%のケースが多い。またコンビニの場合、粗利(店舗の儲け)に対して50%前後が相場である。一般的に高い品質管理を求められる業種ほど、手厚いサポートが必要となり、それに応じてロイヤリティも高くなる。この点を充分に踏まえて、FC本部はサポート体制を構築しなければならない。


斉藤さんは開業して3年目に入った頃から、ロイヤリティの不正をはたらくようになった。なぜなら、本部はいつも上から目線で一方的だし、スーパーバイザー(SV)も定期巡回に来ても毎回同じことしか言わない。はっきり言って、自分ひとりでやっているようなものだ。FC本部は何もしてくれない。なんだか正直にロイヤリティを払うのが、バカバカしくなってしまったのだ。 

大切なのは、FC本部と加盟者の意思疎通

ロイヤリティを税金と考えるとわかりやすい。国家はFC本部であり、国民は加盟者、そして税金はロイヤリティになる。そこに、斉藤さんのロイヤリティ不正があった。斉藤さんのケースは、断じて許されるわけがない。しかし、一方で本部側にも改善の余地がありそうだ。

果たして、脱税やロイヤリティの不正は、得策なのだろうか。これらの行為は一時的に利益を産み出すかもしれないが、しかし不正はいつかばれるもの。このような企業は、永続的に経営をしていくことは難しいだろう。

いくらFC本部に不満があると言っても、ロイヤリティの不正はもってのほかである。一度始めるとなかなか抜け出せないし、不正する知恵があるのなら、少しでも店舗の業績を上げる工夫をして欲しい。本部が加盟者の声をしっかりと聴く、それが両者にとっての成功への近道だろう。しかし、そのような場を設けていないFCチェーン本部が多い気がする。

本部が加盟者を訴えた理由としては、「ロイヤリティ等の未納」が一番となっている。両者ともに気にかけて欲しい部分である。

編集部より

加盟者がフランチャイズ本部に支払い義務がある「ロイヤリティ」は、あくまで、加盟者がフランチャイズというシステムを利用したことへの「対価」。
本部はその対価以上の支援、ノウハウの提供をしなければ加盟店は納得できないのかもしれませんね。

さて、そこで次回、第3話のテーマは「スーパーバイザーを参謀にする」です。

ある加盟店オーナーと久々に本部から派遣されてやってきた新人SVとのやりとりを例に、SVが果たすべき役割について深掘りし、加盟者がフランチャイズを最大限活用していくために「SVを巻き込んだ経営」についてです。お楽しみに!

株式会社経営教育研究所 FCアナリスト・コンサルタント 今野篤

株式会社経営教育研究所 代表取締役。FCアナリスト・コンサルタント。経営学修士。 旅行代理店、学習塾FC、ベンチャーを経て独立。専門は教育とサービスFC。 スーパーバイザー(SV)経験を活かし、FC本部の構築やSV育成を行う。 著書「フランチャイズ」「塾・予備校(協力)」。毎年「フランチャイズ・ハンドブック」発刊。