株式会社経営教育研究所 FCアナリスト・コンサルタント今野篤
2017-05-02 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
株式会社経営教育研究所 FCアナリスト・コンサルタント 今野篤

元SVが語る!FCビジネス成功の為の加盟店とスーパーバイザーの付き合い方

 このコラムのポイント

フランチャイズでの成功には、本部と加盟店オーナーとをつなぐSVとの良好な関係を築けるかどうかが、その後の経営に大きく影響してきます。今回のコラムでは、ある加盟店オーナーと久々に本部から派遣されてやってきた新人SVとのやりとりを例に、SVが果たすべき役割について深掘りし、加盟者がフランチャイズを最大限活用していくために「SVを巻き込んだ経営」の重要性について解説します。

フランチャイズWEBリポート編集部


スーパーバイザーの必要性を考える1つの例…

「今ごろ何の用だ!!」

 オーナーの田中さん(仮称)は明らかに怒っていた。途端に新人スーパーバイザー新谷(仮称)の顔が青ざめた。田中さんが怒るのも無理はない。なにせ、田中さんの店舗にSVが来るのは、1年ぶりのことなのだから…。

田中さんがフランチャイズに加盟し、この店舗を立ち上げたのが今から2年前。始めのうちは、SVをはじめとする本部の人間もよく出入りしてくれて、なにかと田中さんを助けてくれた。しかし、3ヶ月、半年、1年と時が経つにつれて、段々と彼らは来なくなった。SVに直接電話すれば、忙しいから今度行きますと言ってばかり。それではと、本部に電話を入れればたらい回し。

次第に文句を言っても、らちがあかないと思った田中さんは、自力で店舗を回し始めた。そして3年目に入り、なんとか経営が回るようになった。しかし、残ったのは追加の借入金とFC本部に対しての恨みつらみである。

 そんな矢先、本部のSVから連絡が入り、店舗に伺いたいと抜かしてきた。しかも新谷なんて初めて聞く名前で、前のSVはどこに行ったのか。いったいこのFC本部はどうなっているのか。この関係は人目にも良いとはいえないでしょう。

本部と加盟店の架け橋であるSVを経営に巻き込もう

 FC店舗向上のためのFC本部との連携、特にスーパーバイザー(SV)についていくつか取り上げてみる。なにせ、本部に寄せられる苦情のトップが「本部による加盟者指導が不十分」なのだから。

 SVはあなたより若く、少し頼りないかもしれない。しかしそこで「使えない」と愚痴ったり、「変えて欲しい」と本部に訴えても、何も変わらないだろう。きっといつまでたっても収益は上がらないし、お目当てのSVは来ない。SVの多くが店舗マネジメント経験者だから、なんらかの有益な知識は持っているはずだ。一年目はこの知識を貪欲に吸収してしまいたい。

 2年目、ここからが肝心である。SVを一社員として迎えてはいかがだろうか。といっても本当の社員として迎えるのではなく、社員のように扱ってみる。要するに、SVを巻き込んだ店舗経営を行うのである。担当2年目に入ったSVにとっても、気を引き締める点で効果的だ。特に複数店舗を展開するのなら、SVを自社のマネージャーとして機能させるのだ。オーナー、SV、各店長のライン創りが、おのずと経営基盤の強化につながる。

SVには、進んで会議にも出席してもらう。飲み会は当たり前、なんだったら社員旅行にも参加してもらおう。ここで大事なことは、会社の数字は包み隠さず提示することである。これは、信頼関係がなければ到底できない。もしこの体制が構築できたなら、SVは自社の頼もしいエージェントとなり、なにかと大変な本部との接渉も、最大限あなたの味方となり進めてくれるだろう。

 実は筆者もSV時代、オーナー宅によく宿泊させてもらったり、逆に我が家に招いたこともあった。そして大変失礼であったが、時には(いつも?)、率直な意見も申し上げた。そのような仲になったオーナーは、皆、成功していったし、私も彼らに成長させてもらった。

 話を前回のコラムの斉藤さんに戻そう。斉藤さんは3年目に入ってから、FC本部抜きで店舗を運営しようとした。当初、斉藤さんはFCに加盟することで起業のリスクを低減させたが、後に別のリスクを増大してしまったと言える。一方、田中さんのケースは、残念ながら不運としか言い様がない。SVが1年も来ていないなんて考えられない。FC本部としてはここが、信用回復の最後のチャンスになるだろう。田中さんとしては、今後どのようにしてこのSVとよい関係を築くかで、風向きを大きく変えチャンスにできないだろうか。

 なんのためにFCに加盟したのか、斉藤さんはもう一度、考え直す必要があるようだ。そしてFC本部は、SVの育成に努めなければならないし、SV自身も日々スキルを磨き続けなければならない。加盟者とFC本部は、共存共栄なのだから。

SVのレベルの高さが FCを支え・繁栄の原動力

  FCにおけるSVの役割は、加盟オーナーやFC店舗のスタッフと共に、

①理念の共有
②中長期的な戦略
③それに基づく戦術を構築し遂行する

ことである。SVと加盟オーナーが共に仕事をする上で、理念がお互い共有できないようなら、今後の発展は難しいだろう。

 そもそも資本関係がない両者にとって、理念とは唯一の分かり合える共通言語である。理念なき経営は、中長期的な戦略の立案・遂行にぶれが生じ、現場では近視眼的な経営に陥りやすい。

 SVは加盟オーナーと共に、数年先のフランチャイジー像を思いっきり描いてほしい。「地域一番店になりたい」「10店舗やりたい」「年商〇億円突破」など。キャンバスに未来像が描けると、おのずと今やるべきことが決まってくる。やるべきことを具体的な戦術に落とし込み、SVと加盟オーナーで2人3脚の経営を進める。

 3つの観点からスーパーバイジングが実現できているFC本部は、言い換えればSVの質が保たれることになり、それがFC店舗のレベルアップを図っていることになる。前出のFC格差問題は、マーケティングコストを差し引いたとしても、直営とFCの差は何倍も開くことはないだろう。

SVは適任かをチェックしてみる

以下に示す諸項目について、担当SVがあなたに相応しいか、もしくはSVは自分自身についてチェックしてみて欲しい。

□ 理念を共有し、理念に基づいて行動している。
□ 常に市場動向を把握し、中長期的な戦略を立てている。
□ 中長期的な戦略を、短期的な戦術に落とし込んでいる。
□ 戦術はフレームワークを使って導き、定量的に説明ができる。
□ 戦術は優先順位をつけて着手している。
□ スーパーバイジングはテーマが明確であり、継続した経営指導を行えている。
□ 訪店以外にも、電話やメールによるコミュニケーションが取れている。
□ 納得できない時は、納得するまで粘り強く交渉や説明ができる。
□ 時には、耳に痛いことも言ってくる(言える)。
□ SVは調査や販促など、行動面でのバックアップもしてくれる。
□ SV、加盟オーナーやスタッフでミーティングを実施している。
□ SV、加盟オーナーの両者で2人3脚経営ができている。
□ 最後まで諦めず、執念を持って取り組む。

 編集部より

フランチャイズの1つの特徴とも言えるスーパーバイザー。その役割が重要であることが改めて理解できたのではないでしょうか。SVと良好な関係を築いてこそフランチャイズビジネスは成功に近づくといっても過言ではありませんね。

さて、次回のテーマは「フランチャイズ加盟者も立派な一経営者」です。

お楽しみに!

 

株式会社経営教育研究所 FCアナリスト・コンサルタント 今野篤

株式会社経営教育研究所 代表取締役。FCアナリスト・コンサルタント。経営学修士。 旅行代理店、学習塾FC、ベンチャーを経て独立。専門は教育とサービスFC。 スーパーバイザー(SV)経験を活かし、FC本部の構築やSV育成を行う。 著書「フランチャイズ」「塾・予備校(協力)」。毎年「フランチャイズ・ハンドブック」発刊。