フランチャイズ研究会副会長 中小企業診断士山岡雄己
2011-08-11 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
フランチャイズ研究会副会長 中小企業診断士 山岡雄己

事業計画を作る ~失敗しない独立、開業 その2~

 このコラムのポイント

起業するにあたって、事業計画書を作成することは必須です。資金調達などの際にもこちらの提出は求められることが多いのでどのように作成したらいいか確認しましょう。失敗しない独立をするためにも、これを意識するのとしないのでは成功率が変わってきます。開業前の段階からこの作成に関しては行うことになるので、加盟検討を数社にしぼった段階の方が読んでおくといい内容です。

フランチャイズWEBリポート編集部


事業計画とは何か

個人が創業する場合、何のために起業するのかを明らかにしておく必要があります。何のために起業するのか、ということは、経営理念やビジョンなどという形で表現されることになります。そしてその経営理念を実現するためには、収益を上げて経営を継続させなければなりません。収益を上げるためにはどのように市場と相対すればよいのか、競合にいかに打ち勝てばいいのか、顧客とどのように接点を持てばよいのか、などの事業戦略を策定する必要があります。そのような事業戦略を、可視化、文書化、数値化したものが「事業計画」なのです。

事業計画の作成

事業計画は、起業して事業という海原に乗り出す際の海図ともいえます。事業計画があれば、不測の事態や危機に上手く対処することができます。事業計画は、単に事業開始前に作成してその機能を終えるのではなく、事業運営期間中に活用できる経営指標としての機能を備えているのです。その意味で事業計画では、はじめに事業の仕組み=ビジネスモデルを明らかにしておく必要があります。顧客のニーズ、立地や商圏、ターゲット、顧客の利用動機、などの事業コンセプトを整理してまとめておきましょう。事業コンセプトシートなどのフォーマットを利用して、ひと目でビジネスモデルが分かるようにしておくと、事業継続中に何か問題が生じた時、原点に立ち返って解決法を見出すことが出来ます。

事業計画は、大きく3つのパートにわかれています。1番目は、やろうとしている事業を取り巻く環境や、自身の所有する経営資源等を分析する、環境分析です。2番目は、実際に自分がやろうとしている事業の詳細な説明です。そして3番目は、それらの計画を実行した場合に予想される、収益や投資回収期間等の数値的なシミュレーションです。これらを図示化、文書化した「事業計画書」は、融資の際に金融機関や保証協会に提出を求められるものです。「事業計画書作成の手引」のような書籍を参考にされてご自身で作成されても結構ですし、自治体の創業支援相談窓口などを利用して専門家にアドバイスを受けながら作成するのもよいでしょう。

開業提案書との関係

起業に際してフランチャイズ加盟をする場合、フランチャイズ本部から提示されるのが開業提案書です。開業提案書とは、具体的な店舗物件のシミュレーションに基づいてフランチャイズチェーン本部が作成する事業計画書です。内容は、立地診断や初期投資額、収支の見通しなどとなっています。フランチャイズチェーン本部は加盟希望者に対して虚偽や誇張のない客観的なデータを提出するものとされていますが、加盟者としても本部の提示するデータを鵜呑みにしないで自分自身の基準で事業性評価をすることが重要です。開業提案書を見る際の具体的なチェックポイントを上げておきましたので、参考にしてください。

【チェックポイント】

  • ロイヤルティは定額か変動か?
  • ロイヤルティ以外の本部支払費用はあるのか?
  • 人件費にオーナー取分は入っているか?
  • 福利厚生費は含まれているか?
  • 実際に運営できるスタッフシフトか?
  • 原材料は本部からの仕入か?
  • 原材料仕入れに裁量権はあるのか?
  • 償却費は計上されているか?
  • リース料は計上されているか?
  • 税金は考慮されているか?

など

フランチャイズ研究会副会長 中小企業診断士 山岡雄己

1965年、松山市生まれ。1988年、京都大学文学部卒。サントリー宣伝部を経て2002年独立。専門は、フードビジネス、フランチャイズ本部構築、 マーケティング戦略。ラグビーコーチの経験を活かして、流通サービス・飲食チェーン向けの人事制度設計、組織開発、能力開発コーチングにも携わる。現在、法政大学大学院 イノベーション マネジメント研究科 兼任講師。社)東京都中小企業診断士協会 フランチャイズ研究会副会長。