「本店所在地」は重要なマーケティング!会社設立時におさえておきたいポイント

原川 健 |2017年05月26日 公開 (2018年03月23日 最終更新)
個人から会社設立するイメージ

シリーズ形式でお伝えしている会社設立時に押さえておくべき重要ポイント。

前回の「会社名のポイント」はいかがでしたでしょうか?会社名だけとっても相当なポイントがございますね。 今回は、前回の会社名に続き、本店所在地のポイントについてお伝えいたしますので、是非参考になさってください。

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本店所在地を決定する際のポイント

事業を行う場所を本店とするのが望ましい

実際に事業を行う場所を本店所在地とするのが、やはり最も望ましいパターンです。金融機関や取引先、行政機関に対しても、余計な説明をする必要がなくなります。

実際に事業を行う拠点と、本店所在地の2箇所に、ばらばらに書類が送られてきたり、人が尋ねてきたりすることもありません。所轄する役所も、実際の拠点の近くにありますので、書類を取りに行ったり、提出したりする利便も高くなります。

ビジネスは、スピードが重要です。 細かいことのようですが、このようなことも積み重なると、かなり生産性に影響してしまいます。

前述した通り、実際に事業を行う拠点を本店所在地とするのが、ベターなのですが、実際に事業を行う拠点以外を本店にした方が、よいケースがありますので、次項よりご紹介します。

経営者の自宅を本店にした方がよい場合

常時管理者がいない、事務は自宅で行っている

事業所が主に現場のアルバイトで運営されている飲食店などのケースでは、行政からの郵便物を受取り管理するのが難しい、アポイントなしの訪問に対応するのが難しいなどの問題があります。

あえて、経営者の自宅を本店とすることも検討に値します。

短期的に複数の店舗を展開する予定がある

このようなケースでも、現場店舗と管理部門である自宅、という考え方で、経営者の自宅を本店にしてもよいと思います。

短期的に本店を移転することが予定されている

現在の事務所などの拠点が一時的なもので、短期的に移転することが予定されている場合などは、移転後の登記の変更・行政手続きの手間を省く、短期的に本店を変更することによる信用低下を避けるために、あえて、経営者の自宅を本店とすることもよいと思います。

制度融資・助成金・減税など、行政などの支援が受けられる

例えば、自治体固有の創業支援の制度融資・助成金・減税など、行政の支援策を活用するために、事業の拠点ではなく、自宅に本店を置くことも考えられます。

例えば、スタートアップ融資などの債務保証の制度などがあります。

また、信用金庫などの地域金融機関も、自行のエリア外の企業に対しては、積極的に融資などを行わないことも少なくありませんので、支援してくれる可能性がある金融機関を念頭に、本店の場所を選択する可能性も考えられるでしょう。

大阪支社 大阪市中央区○○町・・・
本店  兵庫県○○市○○町・・・

と言うように名刺やホームページなどに住所を併記して、会社をより大きく見せることも、事業の種類によっては考えられます。

行政機関に提出する書類を作成するイメージ

レンタルオフィス等を本店にする場合

勤務先に内緒で、アフィリエイトやオークション、ネットショップなどで稼ぐ人が増えてきています。 中には、お給料よりも多く、月50万円、100万円以上も、稼ぐ強者も少なくありません。

最近、税務署もネットで稼ぐ方を専門に調査するチームを作り、目を光らせてきています。 赤字であれば、申告しなくても問題にはなりませんが、月に50万円も売上があれば、これを放置するのは危険です。兼業禁止で就業規則に違反し、さらに脱税にもなってしまいます。

こんな方がよく使う手が、会社を作って副業を会社の収入とする方法です。

会社の運営を手伝ってくれるご家族を代表として、本店所在地も自宅ではなく、レンタルオフィスの住所や、父母の自宅などとします。本人が給料を取らなければ、税務的にも問題なく、また勤務先に露見する可能性もほぼなくなります。

レンタルオフィスではなく、私書箱のように住所だけを貸してくれるサービスを行っている会社もありますので、より低いコストでの運営が可能です。 また業種によっては、イメージの向上のため、都心部のレンタルオフィス等に本店を置いて、実際の事業活動は、郊外で行っているケースも少なくありません。

押さえておくべき注意点

本店と事業拠点が異なる場合の税務申告

税務署への法人税・消費税の申告は、原則として本店を所轄する税務署宛のみに行います。

法人府県民税・事業税については、本店と事業拠点が異なる場合、本来は、2箇所の事業所があるものとして、本店所在地と事業拠点の2箇所に税務申告する必要が生じます。

しかし、登記上の本店が自宅などの形式的なものであって、実質的な事業所が、事業拠点だけなのであれば、意外に知られていませんが、役所に申請することにより、事業拠点だけに税務申告をすることが可能です。

許認可等に注意

本店の場所の決定には、許認可等にも注意しましょう。

本店を自宅にしてしまったために、人材派遣業の事務所施設要件の問題から、許認可が受けられず、設立後すぐに本店移転が必要になった事例、外国人が在留資格を得るために、会社設立を依頼したが、本店を司法書士の事務所にしたため、入管法に定める上陸許可基準(事業を営むための事業所として使用する施設があること)に適合せず、変更申請が不許可となった事例なども生じています。

定款での本店所在地の記載の仕方

登記上、本店所在地は、町名や番地まで記載する必要がありますが、定款上の記載は、最小行政区画の記載で足ります。

例えば、定款上は「本店を大阪市中央区に置く」と記載しておければ、中央区内で本店を移転しても、いちいち定款変更する必要がなくなります。

創業したての会社は、とかく経営環境が変わりやすいものです。

事業が順調に伸びて、オフィスを拡大移転することもありますし、逆に固定費を削減するために、賃貸オフィスを解約して、自宅で事業をすることになるかもしれません。

環境変化に対応しやすくするために、定款の記載は、最小行政区画とすることをおすすめします。

本店は移転できます

いろいろ書きましたが、実は本店はいつでも変更が可能です。

類似商号の規制がなくなりましたので、会社法の改正により、以前よりも変更がより容易になりました。以前は、移転先の行政区間に、類似業種・類似社名の会社があれば、本店移転ができませんでした。

しかし、会社名の変更と同様に、本店の移転には大きなコストを伴います。 会社の規模が大きくなっていればいるほど、大きなコストが生じます。 登記のコストだけでなく、パンフレット・会社案内・納品書・ウェブサイト・名刺等の変更、行政への届出、取引先への通知などにも、コストがかかってしまいます。

しかし何よりも、注意が必要なのは、顧客からの信用の低下です。 本店を変更すると、既存の取引先から理由を尋ねられることがあります。 必然性なく本店を変えると、何かあるのではないかと、疑いの目を向けられてしまいます。

このようなことにならないように、事業に大きな変化がない限り、必然性がない限り、変えずにすむよう、最初に十分検討して、本店を決めましょう。

オフィスの住所は重要なマーケティング

自分が取引したいとイメージできるかが重要

オフィスをこれから探される方がいらっしゃるかもしれません。 そのような方のために、オフィスの住所と場所を決める考え方をお教えします。

本店の住所のイメージは、結構重要です。 インターネットの世の中であるからこそ、取引先は、あなたの会社に来たこともないのに、立地や社名だけで、勝手にイメージを決めてしまいます。

取引したいと思わせる会社・住所

「東京都中央区銀座にある、株式会社◯◯」
「大阪市中央区にある、株式会社◯◯」
「大阪府◯◯村にある、株式会社◯◯」

「兵庫県◯◯郡◯◯村にある、株式会社◯◯」

ずいぶんと印象が違うでしょう?

あなたなら、どの会社と取引したいと思いますか? あなたなら、どの会社に就職したいと思いますか?

大阪市内でも、中央区、北区などと、その他の区とでは、地域のイメージも違い、かなり印象が異なってきます。

事業によって立地は、ある程度必然的に決まってきます。 店舗であれば、重要なのは住所よりも集客です。

工場であれば、重要なのは賃料や広さや物流です。 それらを無視して、住所だけで本店を決めるという意味ではありません。

これからオフィスを探される方などは、住所も重要なマーケティングのひとつと考えてください。

蛇足ですが、銀行口座の銀行や支店を選ぶのも、ひとつのマーケティングです。

会社の口座も見られている

取引先は、毎月、あなたの会社の口座を確認して、振込みを行います。

「◯◯銀行 銀座支店」
「◯◯銀行 本店営業部」
「◯◯銀行 ◯◯出張所」
「◯◯信用組合 ◯◯支店」

「◯◯農業協同組合 ◯◯支店」

かなり印象が違うでしょう?

地銀や信用金庫より都銀、都銀でも有名な地名の支店の方が、信用がおける会社に見えませんか?

これは、振込口座の設定の仕方であって、資金調達については、また別の戦略が必要です。

勤務地を重要視する人が多い

働く人向けのあるアンケートでは、「就職先を探す際に重視する点」について、「勤務地」を重視する人がトップでした。

オフィスの場所が不便な郊外だと、それだけで応募者が極端に少なくなり、優秀な人材を採用するのが難しくなってしまいます。 社員全体の通勤時間も増えてしまいます。また営業などで移動する時間が増え、結果、勤務時間も増えてしまいます。

さらに取引先などからも、来社してもらいにくくなりますので、コミュニケーションが少なくなり、情報が減り、機会損失が生じます。

採用面談のイメージ

優秀な人材を採用して、事業を行おうと考えている企業であれば、通勤しやすい中心部にオフィスを構える必要があります。郊外の方がオフィスの賃料は安いと思いますが、中心市街地とも、そんなに大きな差はありません。 せいぜい2~3割しか差がないのでは?わずかな賃料をケチることにより、見えない大きなロスを出すことになってしまいます。

また、いったん通勤しにくい場所にオフィスを出してしまうと、その後、中心部に移転したときに、通勤しにくくなった社員さんたちが辞めてしまうリスクもあります。

企業はひとが最も重要な資源です。通勤時間や移動時間を短縮して、社員が効率的に働けるような場所に立地することも、優秀な人材を集めるために、重要なマーケティングのひとつです。

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