株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役松下 雅憲
2017-06-25 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

繁盛店には必ずいる!スタッフに『お父さん役』『お母さん役』両方が必要な本当の理由

 このコラムのポイント

「またあんな言い方して、店長ったらヒドイわね!でも…ああは言うけど、貴方にはここを強くなってほしいと言っていたわよ」世間ではパワハラやセクハラなどが上司部下間の人間関係の悪さが発端のニュースをよく耳にしますが、チームの関係をバランス良く保つ人の不在もまた、こうした問題を大きくする原因の一つと言えます。今回のコラムでは、チームを一つの家族として捉え、一家の長が伝えたいことを誤解なくきちんと伝えられる環境づくりの術について知ることができます。

フランチャイズWEBリポート編集部


チームの統率は、店長一人では『役不足』な理由

「お店には『お父さん役』と『お母さん役』がペアで必要なのよ」

ある大手居酒屋チェーンの女性ベテラントレーナーが、そう教えてくれました。

どういうことかというと、彼女が言うには、店長が男性で、厳しめのリーダーシップをとるタイプならば、主婦パートの中に、やさしいお母さん役を置いて、逃げ道を作ってあげると良いと言うのです。

また、店長が男性でも、ちょっとおとなしく優しいタイプならば、主婦パートに中に、ちょっと厳しめのガミガミ叱るお母さん役を置いて、甘やかさないように適度に厳しくすると良いというわけです。

女性店長の場合は、出来るだけ年長の男性スタッフに、店長と逆のタイプのお父さん役を任せるのです。

女性店長が優しいタイプならば、頑固親父(?)を、逆にガミガミタイプならば、どっしり型のお父さん…というわけですね。

もちろん、店長と逆タイプの彼らのミッションは「店長をサポートするのが目的」です。なので店長はそんなお母さん役もしくはお父さん役のスタッフもしくは二番手社員としっかりとその「目的」と「具体的に何をするのか」について、綿密に打ち合わせをしておく必要があります。

それは、パートさんやスタッフや二番手社員達が、自分達が「店長にはない部分をカバーする役割・目的」をしっかりと理解しておく必要があるからです。 

『お母さん役』が担う、重要なミッション

たとえば、あるスタッフが店長から厳しく指導されて、ちょっと落ち込み、気持ちがネガティブになったときに、お母さん役は、温かく大きな気持ちでそのスタッフの気持ちを受け止めて、聴いてあげることが大切です。

お母さん役には、決して、すぐに店長の考えを代弁してスタッフを説得するのではなく、気持ちをすべてはき出させるような、つまり「お母さんコーチ」という役割があるのです。

かといって、一緒になって店長を悪者にするような受け止め方をしてはいけません。

受け止め役としてのスキルが低い場合は、一緒になって店長の悪口を言うような方法をとるベテランスタッフがいます。こういうベテランパートさんには、目的・役割と具体的な聴き方について、しっかりと指導しておく必要があります。

このように、店長は、自分のリーダーシップのタイプに応じて、自分の反対側のタイプをベテランパートやスタッフ、二番手社員の中から探し、自分のサポート役として指名し、かれらにこのミッションを担うように依頼するのです。

すると、お店全体に店長の考えや指導がよりスムーズに浸透していくようになります。

一人二役は演じない!役割が違うことに意味がある

しかし、なかには、自分一人で父母両方の役を担おうとする店長がいます。

店長やリーダーが、一人で父母両方の役割を持とうとすると、自分が見えている側面でしか、相手を判断できない、まだ人生経験の若いスタッフは、店長に「二面性」があるように勘違いしてしまうのです。

「店長って、怒ったり、優しくなったり…よくわかんない~」

「いつも怖い店長が、急に優しくなると何か裏があるような気がする…」

なんてことを言うのです。(若くなくてもそういう人はたくさんいますけどね)

なので、よほど上手に使い分けられる店長でないと、一人二役はおすすめできません。

もちろん、使い分けが出来るのならば一人二役をしても良いですけどね。

一般的には、ベテランパートさんやスタッフリーダーをサポート役に任命する方がより効果的でしょう。

チームのバランスを図れるキャラクターを配置することが重要

とは言うものの、お店によっては、そううまくは自分と反対のタイプのスタッフがいない場合もありますよね。

その場合は、店長自身が、その店のリーダースタッフの特徴を把握し、自分がその反対側のタイプを担う、つまり演じなくてはなりません。

ベテランパートさんが、鬼軍曹ならば、店長は冷静な落ち着いたリーダーを演じるのです。

もしも、お店に二人も鬼軍曹がいたら、スタッフは必ず疲れ果ててしまいます。

お店の組織は、そんなに大きな組織ではありません。

せいぜい数名から多くても30人程度の組織です。

また、そのチームのメンバーには、まだ経験の浅い若いメンバーも多くいることでしょう。

そんなチームのトップ2が、同じようなタイプである必要はありません。

もちろん、100名規模の大きな組織ならば、階層も多くなりますから同じ対応が必要にはなります。そこは、店長やリーダーの能力次第で使い分けた方がイイでしょう。

是非とも自分のパートナーとなるリーダーと二人でじっくりと話し合って、お互いの役割… お父さん役か、お母さん役かを決めておきましょう。

きっと、ステキな家庭のような温かいチームが出来あがりますよ。

次回は「チェーン店のFCオーナーが忘れてはならない大切なこと」というテーマでお話しします。お楽しみに! 

  

  • 参考「『これからもあなたと働きたい』と言われる店長がしているシンプルな習慣」松下雅憲著(同文舘出版)

 

 

株式会社PEOPLE&PLACE 代表取締役 松下 雅憲

大阪出身。1980年日本マクドナルド(株)入社。店舗運営の現場と全社の出店戦略に関わり、2005年4月とんかつ新宿さぼてんを運営する(株)グリーンハウスフーズに入社。すぐに経営情報室を立ち上げ、経営情報の見える化、出店戦略システムの構築、さらにエリアマーケティングをベースにした店長教育システムを導入し大きな成果を上げた。2012年4月株式会社PEOPLE&PLACEを設立。代表取締役に就任。マクドナルドとさぼてんで確立したノウハウを独自の形に仕組み化した「店長ナビ®」を提供し、人材育成を通じて多くの外食企業や小売・サービス企業の業績向上に貢献している。