融資や節税・助成金の事も考慮して決定すべき「役員構成」のポイント

原川 健 |2017年08月29日 公開 (2018年03月26日 最終更新)
役員構成を考える人のイメージ

シリーズ形式でお伝えしている会社設立時に押さえておくべき重要ポイント。

前回までの「会社名のポイント」「本店所在地のポイント」「事業目的の決定ポイント」「資本金・株主構成のポイント」はいかがでしたでしょうか?会社を設立する際には取引先や事業内容、銀行からの融資、助成金のことも考え、いろいろなところに注意する必要があります。

今回は、「役員構成」を決める上でのポイントについてお伝えいたします。

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代表取締役は一人にしておいた方が良い

新会社法施行後、多くのお客様の会社設立をお手伝いしていますが、会社の同僚同士お二人で、共同経営で会社を創業されるケースが増えてきているように思います。このようなケースで、二人とも代表取締役にしたいと、希望されることが、少なくありません。

しかし、代表取締役を複数置くことの本来の意義は異なります。 多くの拠点を持つ大企業で、少額な契約などをすべていちいち本社決済にすると、事業のスピードと効率化に、大きな影響が生じます。

創業したての小さな会社では、このように意思決定を効率化させる意義はほとんどありません。

むしろ、ばらばらに意思決定されてしまうことの方が、管理が行き届かず、問題を生じさせてしまうことにもなりかねません。

企業経営とは、不確定で変化を続ける市場環境・社会環境のなかで、自社のヒト・モノ・カネなど、不安定な経営資源を用いて、常に大きなリスクを含んだ、相対的な意思決定を強いられるものです。

小さな会社においては、誰が意思決定の責任を負うかを明確にしなければ、決して、よい経営は行えません。

また事業を始めると、どちらが営業能力が高いか、どちらがリーダーシップがあるか、どちらがより意欲と責任感を持っているかが、明確になってきます。能力の高い方に大きな負担がかかってきます。

このような状況になって、まだ権限も責任も均等の二人代表だと、やはりうまく行かないことが多いのです。責任と権限、報酬を一致させることは、マネジメントにおいて非常に重要です。

代表取締役はどちらかのイメージ

「役員構成」の有利な決め方― 銀行融資を考慮しましょう

現行、中小企業が銀行融資を受ける場合、二人を代表取締役とした場合、二人とも一律に、連帯保証人になる必要が生じてしまいます。

通常は、同じ会社の代表である連帯保証人を二人付けても、与信が大きくあがることは期待できません。

代表者の連帯保証が必要ではない融資制度もありますが、現行では、多くの融資制度において、代表者の連帯保証が要求されてしまいます。無用な連帯保証人を増やさないためにも、小さな会社においては、代表取締役は一人の方がよいでしょう。

また、役員に就任される方のなかに、過去に金融事故などを起こしたひとがいる場合、融資が難しくなってしまうこともありますので注意が必要です。

事業に関係ない人は役員にしないようにしましょう

取締役は、株主からの委任を受けて、会社を経営する立場にあります。株主や会社に対してはもちろん、債権者などの第三者に対しても、損害賠償責任を負うことがあるのです。

報酬をまったく支給していない名義だけの取締役においても、原則的には、取締役としての責任を免れないというのが、法律の考え方です。

また、役員になっていると融資の際に、銀行に連帯保証を求められるケースも生じてしまいます。

無用な責任を広げないためにも、事業に関係ない人は役員に入れないようにしましょう。

創業メンバーを安易に役員にしないように

創業メンバーのイメージ

会社設立当初は、規模も小さく、皆が理想に燃えているため、創業メンバーや、雇用した社員が一致団結して事業に取り組みます。 しかし、時間が経過してくるとともに、各自の能力や適性・意欲が見えてきます。

能力や適性・意欲をよく見極めずに、「みんなでがんばろう!」のノリで、安易に役員にしてしまうと、後が大変です。

会社が成長してくると、どんどん社員が増えてきます。 そのなかには、創業メンバーの経営幹部を追い抜く能力を持った人が、必ずと言っていいほど出てきます。

明らかに能力に問題がある創業メンバーを役員のポジションに置いておくと、組織がうまく稼動せず、また部下のモチベーションを大きく引き下げます。

創業メンバーには、競争に勝ち抜いてそのポジションを獲得した訳ではなく、たまたま創業に加わっていたために、そのポジションを獲得したという人が含まれてしまうためです。

創業メンバーを安易に全員役員にするのではなく、その能力や職責にあったポジションにして、貢献の状況により昇格した方が、経営上はうまく行くと思います。

また純粋な取締役ではなく、使用人兼務役員、執行役員などのポジションを設けることも検討に値すると思います。

取締役会を設置するかを検討しましょう

取締役会を設置するには、取締役を3名以上置く必要があります。 取締役会を設置するメリットは、株主総会の決議によることなく、意思決定を迅速化・効率化するところにあります。 しかし、株主と取締役が一致している多くの同族会社においては、また創業時期の比較的小規模な会社においては、取締役会を設置するメリットはほとんどないと思います。

また監査役や会計参与の設置ですが、これらを設置することにより、金融機関の与信が大きく高まるなどのメリットは、現時点ではありません。

監査など、本来の機能に期待するのでなければ、報酬などのコスト増加を招くだけですので、設置するメリットはほとんどないと思います。

役員報酬の支給を考慮しましょう

役員報酬額を考えるイメージ

会社設立の大きなメリットのひとつに節税があります。

親族などで事業に従事する人に役員報酬を支給することにより、所得を分散することができ、節税につながります。

もちろん事業にまったく従事していない親族に役員報酬を支給することはできませんが、個人事業の専従者給与のように、もっぱら事業に専従していなくても、兼務や非常勤であっても、役員報酬を支給できるのが、会社組織のメリットです。

役員報酬の支給の計画を検討したうえで、親族から役員を選任するのも、検討に値します。

給与の支給については、その方の事業への従事状況、職務内容、貢献度合、他の従業員との金額のバランスなど、非常に複雑な判断を必要としますので、事前に会計事務所に相談して決めるようにしてください。

助成金を考慮しましょう

数人のメンバーで会社を作る計画がある場合、すべての方を役員にしないで、一部の方を従業員扱いにすることにより、雇用関係の助成金の適用対象とすることができる可能性があります。

一度、役員として登記をしてしまうと、もうその方を従業員扱いにすることはできません。

助成金を受ける可能性がある場合には、事前によく検討して、役員構成を決定してください。

役員の任期を考慮しましょう

新会社法では、役員の任期を最長10年間の範囲内で、任意に定めることができます。(※ただし、取締役会または株主総会の決議がなければ、株式が譲渡できないように、定款に定めている場合に限ります。)

役員の任期を2年など短く定めてしまうと、2年毎に役員の改選の登記が必要となり、手間とコストを要することになります。

と言っても、登録免許税1万円程度。専門家に依頼しても、報酬を含めて3万円程度ですので、そう大きなコストではありません。

親族のみが役員の会社でしたら、役員の任期は最長の10年をおすすめします。しかし、親族以外の方を役員にする会社においては、不適切な役員を本人の意思に反して、辞職してもらわなければならない事態が生じる可能性もあります。

役員の解任は、従業員の解雇と同じように難しいものです。

親族以外の方を役員にする会社においては、役員の任期を2年または3年にすることをおすすめします。

役員の任期を短く設定しておけば、任期満了で退任してもらうこともできますし、万が一解任が必要な事態が生じても、残存任期が短ければ、損害賠償を請求される額が少なくなり、リスクが減少します。

任期で大きく変わる役員報酬額のイメージ

12年間登記が全くない場合、休眠会社となってしまい、何をしなくても会社が閉鎖されてしまいます。

税理士事務所や法律事務所と顧問契約を結ぶことなく、社長ご自身で役員の任期を管理する場合、任期が10年間ですとついつい登記を忘れてしまいがちです。

もしも、役員任期経過後、役員の任期が切れたことに2年間気がつかなければ、会社が閉鎖してしまうというリスクが発生してしまいます。

気がついたら、会社が閉鎖していたとならないよう、5年や6年という具合に、役員の任期終了時から休眠会社となるまでの期間に余裕を持つのもひとつです。

まとめ

フランチャイズ加盟という選択肢では、異業種参入でも未経験からの立ち上げでもスムーズに事業を立ち上げることが可能となりますが、オーナーはあくまでも経営者。実際の現場を見ながら、事業の将来をどうしていくか、考えておく必要があります。会社の行く末を担う経営者という仕事を目指される皆さんは、是非このコラムを参考に会社全体をスムーズに動かしていけるよう、活用してください。

役員構成を考える人のイメージ

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