フランチャイズ研究会副会長 中小企業診断士山岡雄己
2013-06-26 専門家が語る。フランチャイズ・独立開業コラム
フランチャイズ研究会副会長 中小企業診断士 山岡雄己

フランチャイズと「のれん分け」の仕組み

 このコラムのポイント

飲食店や美容室などで活用されている「のれん分け」という制度。フランチャイズ契約と具体的にどのように違うのかをわかりやすく解説したコラムです。「のれん分け」から始めるフランチャイズ本部構築セミナーの講演内で話されていた内容を編集部がまとめました。のれん分けを取り入れたいチェーン起業の方やのれん分けで独立したい加盟希望者の方は必見です。

フランチャイズWEBリポート編集部


※この記事は「のれん分け」から始めるフランチャイズ本部構築セミナー」(株式会社日本フランチャイズ研究機構主催)にて行われたセミナーでの内容を、編集部でまとめたものです。

今回のセミナーテーマにもある「のれん分け」。

ラーメン屋、焼き鳥屋を始めとする飲食店や、美容室などで活用されている 独立のシステムだが、セミナーの参加者もこういった人たちが約8割だった。

今回のセミナーは、フランチャイズ本部立ち上げを検討していて かつ、のれん分けのシステムを活用した本部を立ち上げようという企業が中心。

そのセミナー序盤、本部を立ち上げる上で2パターンの戦略があると山岡氏は話していた。

  1. 早期に本部を立ち上げて徐々に店舗数を増やしたい場合
    本格的なFC契約ではなく、プロデュース契約、コンサルティング契約など実際に提供する役務に応じて契約を分け、ある程度コミュニケーションのとれる従業員や知人から展開するのがよい。概ね10店舗程度までの展開方法。
  2. 正統派フランチャイズを立ち上げて戦略的に店舗数を増やしたい場合
    複数の直営店の運営を経験してノウハウやシステムを固定化し、ブランド価値を高めてFCパッケージ化したうえで、法的リスクにも配慮したしっかりとしたFC契約書を作成して募集を開始する。準備期間に1年はかけたいところ。

 

のれん分けとは

商標などを共有しつつ、円満な形で独立をすること。
ラーメン店や美容室などに多く、社員として頑張って働いた人にお店を授ける(独立してもらう)、という時などに適用されるシステム。

社員独立型フランチャイズ制度について

1. 独立の目的

  1. 従業員の起業家精神を高める
  2. 従業員を雇用する際、意欲的な人材の応募が見こまれる
  3. 独立者に店舗を任せることで店舗の業績UPが見込める

2. 制度の内容

  1. 従業員へのフランチャイズ制度
  2. 従業員への業務委託制度
  3. 独立時貸付制度(会社から独立する従業員へ)

3. 制度の適用基準

  1. 一定の勤続年数を経ている
  2. 一定の自己資金を持つ
  3. 一定の管理職経験を持つ

社員独立型フランチャイズ制度には2パターンに分けられる。
レジュメにて、山岡氏は以下のように提示していた。

ステップ(加盟前提)型キャリア(のれん分け)型
・独立を前提とした雇用
・非正規雇用
・適正基準の判断
・FC加盟の一類型
・CoCo壱番屋など
・人事制度の一環として
・正規雇用(労働契約)
・モチベーションの向上
・インセンティブの一種
・美容室などに多い
加盟前提の「ステップ型」

これは、カレーチェーンの『CoCo壱番屋』などで適用されている。
例えば、『CoCo壱番屋』で独立を考える人が、こちらに加盟するのを前提に加盟するタイプである。
この場合、事前に経営者として適正があるのか判断することはできるが、仮に、不適正であった場合の処遇が難しいという側面もある。

のれん分けの「キャリアプラン型」

これは、美容室などに多く適用されている。
元々正社員として働いていた人に、人事制度の一環として店舗を持たせ、独立してもらう制度である。 この場合、既存オーナーとの調整が難しいという側面がある。

メリット デメリット
キャリアプラン(のれん分け)型 フランチャイズ制度
モチベーションの向上
優秀な社員の雇用
会社への忠誠心の高揚
人件費(固定費)の削除
組織の若返り
ブランド価値の維持
一般的FCより低収益
融資や保証などの負担
優秀な人材のスピンアウト
既存FC加盟者との調整
社員の独立性の問題
ステップ(加盟前提)型 フランチャイズ制度
事前に経営者適正が判断できる
実地研修によるノウハウの定着
独立後の成功確率の向上
不適正の場合の処遇が難しい
雇用が長期化する場合の処遇

通常のフランチャイズ契約との比較

図を見ていただければわかるように、のれん分け制度は通常のFC制度と比較し、安価な資金で加盟できるのが特徴である。
このことからも、店舗の運営・技術的に習熟したオーナーを本部が求めていることがわかる。

 通常のFC制度のれん分け制度
加盟金 通常 減額する場合が多い
保証金 あり あり(同額)
ロイヤリティ あり 同率あるいは低率
貸付制度 基本的にない ある場合もある
開業前研修 あり なし

のれん分け型フランチャイズ制度の設計

社員独立の契約パターンとしては、下記の3パターンがある。

  1. 新規店舗で独立
  2. 既存店を譲渡
  3. 一部機能を受託(業務委託契約)

資金調達と援助方法

初期費用を貸し付ける制度として、社内預金制度というものがある。
これは、従業員として一定期間努力した特典として課せられるものである。

終わりに

社員独立制度には、「独立前提雇用タイプ」と「のれん分けタイプ」の2パターンがあるが、フランチャイズWEBリポートをご覧になっている加盟希望者の方々は、前者のパターンで独立を検討する可能性が高いと思う。
また、社員独立制度を取り入れようというフランチャイズ本部の方もいると思うが、通常のフランチャイズ制度との違いをふまえた上でこちらの制度を取り入れることを検討していただきたい。

フランチャイズ研究会副会長 中小企業診断士 山岡雄己

1965年、松山市生まれ。1988年、京都大学文学部卒。サントリー宣伝部を経て2002年独立。専門は、フードビジネス、フランチャイズ本部構築、 マーケティング戦略。ラグビーコーチの経験を活かして、流通サービス・飲食チェーン向けの人事制度設計、組織開発、能力開発コーチングにも携わる。現在、法政大学大学院 イノベーション マネジメント研究科 兼任講師。社)東京都中小企業診断士協会 フランチャイズ研究会副会長。