様々な習い事スクールを徹底調査した結果、PC教室の“ある問題点”に着目
フランチャイズ展開を前提に、運営の難易度を極力落とすとともに会員を第一に考えたパソコン教室を作りたい——アスネットコーポレーションが運営するパソコン教室「ディードットステーション」は、創業者である吾辺のこんな思いから生まれました。
そもそも、なぜ彼はパソコン教室に着目するようになったのか。そのきっかけは、ディードットステーションを立ち上げる以前に感じた、ある“想い”にありました。
遡ること20年以上も前、アパレル商品を販売していたアスネットコーポレーション。ほとんどの商品が売れていく中、どうしても売れ残りがあるのは小売業界において致し方ありません。
「当時、ネックに感じていたのが仕入れです。飲食業界とは違って商品を廃棄することはありませんでしたが、売れなければお金にならない。いわゆるゴミと一緒なんです」(吾辺)
そこで、仕入れを必要としない新たな事業をスタートさせることを考えた吾辺。目をつけたのが「習い事スクール」だったのです。
「英会話や茶道など、あらゆるスクールを徹底的にリサーチしました。当時は、世の中的にもパソコンが当たり前ではない時代でしたが、思っていたよりも生徒数を抱えているパソコン教室が多かったんです。そこで、どんなものなのか実際にパソコン教室を調べてみたら、半数近くの生徒は3ヶ月で辞めてしまうことが分かったんです」(吾辺)
その理由を吾辺なりに考察し、ある仮説を立てるのです。それはオンデマンドの授業ゆえ、主婦や年配の方など、仕事のためといったような明確な理由なく通っている会員はパソコンの楽しさや、便利な一面を感じずに辞めてしまう、と。
「オンデマンドの授業って、黙々と動画を見ているだけなので楽しくないうえに、なかなか身に付かないんですよね。しかも、みんながヘッドホンをつけ、動画を見ながら授業を受けているだけ。そういう方たちは、ただただ孫とメールをしたい、テレビ電話をしたいと思って通ってるのに、タイピングのやり方から習わされたりするんですよ。分からないことを質問してもビデオを巻き戻して『もう1回見てください』と。そりゃ辞めますよね」(吾辺)
パソコンの楽しさを味わうこともなければ、教室に通う目的すら達成できない生徒が3ヶ月で辞めてしまう。そうなると、お金をドブに捨てているようなもの——彼らがそう考え、辞めていくのも必然かもしれません。そこにいち早く目をつけた吾辺は、継続率の高い会員第一主義のパソコン教室を立ち上げることに奔走するのです。
「パソコン=楽しい」という意識付けで、継続率の高いパソコン教室を
「競合と戦ったときに絶対に負けないパッケージを作ろうと考えました。言い換えると、入会率と継続率の高いパソコン教室であること。しかも、そうなれば自然と単価アップも見込めるので、結果的に、加盟オーナーにとっても資金繰りが安定し、運営難易度が低いパッケージが完成します」(吾辺)
そのために吾辺は、従来のパソコン教室にとっては当たり前だったことを変えていきます。つまり、ヘッドホンをしてパソコンのモニターと向かい合い、ひとり黙々と孤独に授業を受けるのではなく、対面式授業にすることで「パソコン=楽しい」という意識づけを徹底していくのです。
「パソコンを使えるようになるためには、もちろんワードやエクセルなどのソフトの使い方も重要。ですが、まずは楽しいと思ってもらうことを最優先させました。対面式ならコミュニケーションも生まれる。コミュニケーションが生まれたら生徒さんも笑顔になる。オンデマンドとマンツーマン、どっちが生徒さんにとっていいかと言ったら絶対にマンツーマンだ、と」(吾辺)
しかし、対面式授業だから必ず継続率の高いパソコン教室であるという確証はありません。そのため、パソコン教室に通う目的を明確化させようと考えます。
「ワードなどのソフトを使えるようになりたくて通いはじめる方が多いんですが、それができるようになると、次は何ができるのか、ということを明確化しました。たとえばスポーツジムに通う方というのは、ダイエットや健康などの一次目的の方がほとんど。でも、痩せたらオシャレを楽しめたり、健康になったら旅行に行けたり。二次目的を提示してあげることで、より楽しく通うことができると思うんですよね」(吾辺)
そして、教室の雰囲気作りにもこだわった吾辺。女性をメインターゲットに設定し、女性目線を重要視して教室作りをすることにしたのです。
「パソコン教室って事務所仕様の無機質なものが多いと思うんですが、ディードット・ステーションは床を木目調にしたり、椅子やインテリア、ロゴなどをオレンジにしたり。サロンをイメージして教室作りをしています。やっぱり、女性が多いとその場が華やかになるだけでなく、アットホームな雰囲気が作れるんですよ。しかも、家計の財布を握っているのは女性なので、女性をメインに設定したほうが生徒数は増えるかな、と」(吾辺)
さらに、コース料金の他にディードット・ステーション最大の特徴である「月々3000円(税抜)で通い放題」というシステムを導入。多くのパソコン教室では、1回あたり1500円や2000円などのチケット制が一般的でしたが、月々定額3000円という値段に設定するのです。コースと定額の2つを用意することで、会員にとってはもちろん、運営する加盟オーナーにとっても大きなメリットになるといいます。
「チケット制だと収入が安定しませんが、月々3000円(税抜)の定額なら安定します。ストックビジネスなので、会員さんが100人いたら30万円、200人いたら60万円の売り上げです。自動引き落としでお金のトラブルも少ないので運営しやすいですよね」(吾辺)
営業をしないのが最大の営業——自発的に通いたくなるパソコン教室
そうして、生徒第一主義のパソコン教室「ディードット・ステーション」をスタートさせた吾辺。すると、オンデマンドスタイルのパソコン教室から通い替えする方はもちろん、入会率が8割という結果に。一般的なパソコン教室ではおよそ3割と言われているので、この8割というのは驚異的な数字です。
これだけでも運営難易度が極めて低いパッケージであることは明らかですが、大前提である継続率の高いパソコン教室でないと意味がありません。しかし、このハードルも狙い通りクリアする結果に。
「多くのパソコン教室では、売り上げを確保するためにコースアップや通う頻度を増やすよう営業をかけます。でも、こういった営業が会員さんにとって負担になり、辞めてしまう方も少なくないようです。ディードットの場合は、負担になる営業をしなくても会員さんが楽しんで通ってくれてるので自発的に継続してくれます。さらには向上心にもつながるので勝手に単価が上がっていくんですよ。きっかけ作りこそしますが、営業をしないのが単価アップの秘訣ですね」(吾辺)
入会率が高く、営業のスキルが必要ないとはいえ、加盟するからにはパソコンのスキルや資格が必要では?——そう考える方も少なくないかもしれません。しかし、ディードットステーションを運営するために、パソコンスキルの高さは必要ありません。
事実、全国に45教室あるオーナーの中には、パソコン初心者の方もたくさん加盟し、多くの方が成功しています。では、どういう方が向いているのか——? それは、「気配り・目配り・心配り」ができる方なのです。
『また来たい!』と思ってもらうためにも、会員さんの相談役になれるような方が向いているという吾辺。もちろんパソコンの知識はあったほうがいいかもしれませんが、教材等にすべてのハウツーが載っているので、資格不要であるうえ、初心者の方でもなんの問題もなく運営しています。
「教材が先生役であって、先生はあくまでも相談役。なので、パソコンスキルよりもコミュニケーション能力が重要です。どんなお仕事でもコミュニケーションは重要ですが、人が好き、サービス業が好き、または喜んでもらうのが好きという方はオーナーとして成功してます。そういう方が運営している教室のバックヤードは、会員さんからもらった差し入れの野菜やお菓子などですごいことになってますよ(笑)」(吾辺)
地方都市で成功すれば全国で通用する——仙台に本部を構える理由と次なる展望
今から13年前に「ディードットステーション」をスタートさせ、2〜3年間は直営教室のみでトライ&エラーを繰り返した吾辺。本格的にフランチャイズ展開をはじめてからは、少しずつ教室数が推移し、現在は宮城県を中心に45教室を展開するまでになりました。
そんな「ディードットステーション」ですが、事業スタート時からずっと仙台市に本部を設置しています。代表の吾辺は、宮城県の北部に位置する南三陸町出身。確かに地元とはいえ、フランチャイズ展開を加速するのであれば、母数の多い東京都内に進出するのが得策です。
彼はなぜそこまでして仙台市にこだわる必要があるのでしょうか——?
「仙台のような地方都市で成功すれば、全国で通用するパッケージが作れる。逆に、東京の成功事例を、地方都市に住む加盟希望者に提示しても、母数が絶対的に違うので参考にならない。もちろん、300教室や500教室などを目指しているなら東京に拠点を構えたほうが近道ですが、目標はあくまでも100教室。そこからは横軸展開していく予定です」(吾辺)
彼がいう横軸展開の第一弾はすでにはじまっています。それは、プログラミング教室です。2020年には小学校でプログラミング教育の必修化が決定しています。それに向け、「ディードットステーション」では小学生〜大人まで習得可能なプログラミングを導入しています。
「多くの企業が参入するなど、プログラミングはビジネスチャンスであることに間違いありません。ですが、教室を開校しても会員さんが集まらないと意味がない。プログラミングというのは新しい言語を覚えるという点で、英語のようなもの。つまり、学校のような集団授業ではついていけないお子さんも。そこで、ロボットやブロック等で学ぶスタイルではなく、あくまで学校教育の方針に合わせた主要教科をベースにしたオリジナル教材「D.Progr@m」をある企業と共同開発に成功。個別で自分のペースで進められるように差別化しています」(吾辺)
事業をスタートする以前から緻密な戦略でネガティブ要素を削っていった吾辺。それは、「ディードットステーション」に通う会員はもちろん、フランチャイズ加盟するオーナーのため。今もその思いが変わることはありません。むしろ、長期的に考えて会員やオーナーにとってメリットのある事業を今後も作り続けます。
※掲載情報は取材当時のものです。