NPO法人 全国おやこ福祉支援センター 代表理事 阪口 源太
インターネット赤ちゃんポストのロゴ

実親と養親のマッチング、ちいさな命をつなぐ「赤ちゃんポスト」に込めた想い

養子に出したい生みの親と、養子縁組を組みたい人をマッチングする「インターネット赤ちゃんポスト」。立ち上げたのは、NPO法人 全国おやこ福祉支援センターの代表理事を務める阪口源太。自身も養子縁組で子どもを育てる1人です。そんな阪口が赤ちゃんポストを立ち上げた理由とは?

じつは隠れた死因第3位「中絶」により絶たれてしまう命

赤ちゃんのイメージ
毎年約17万の命が生まれてくることすらできずに絶たれている

突然ですが、みなさんは日本人の「三大死因」をご存じですか?

厚生労働省が発表した「平成29年(2017)人口動態統計の年間推移(※参照)」によると、もっとも多い死因が「悪性新生物(ガン)」で37万3000人。そして、「心疾患(心臓病)」20万4000人、「脳血管疾患」10万9000人と続きます。

しかしこの中には、ある死因が含まれていません——それは、「人工妊娠中絶(以下、中絶)」です。じつは日本では、中絶により年間17万もの命が絶たれているのです。2018年5月、25歳の母親が漫画喫茶で出産し、泣き声でほかの客にバレるのを恐れて絞殺。その後、東京・歌舞伎町のコインロッカーに死体を遺棄した事件があったように、経済的な事情や性的虐待など、中絶以外にもさまざまな理由から、赤ちゃんを育てられずに殺害するケースが後を絶ちません。

一方で、晩婚化や女性の社会進出などが背景となり、6組に1組が不妊治療、または不妊の検査を受けたことがあるといいます。ある調査によると、日本の不妊治療の件数は60カ国のなかで第1位にもかかわらず、出産率は最下位であることも分かっていて、つまり、子どもが欲しくても出産できない状況なのです。

「35歳を過ぎると妊娠しにくくなるのは生物学的に致し方なく、40歳で不妊治療をしても妊娠する確率は10パーセント以下。45歳になると1パーセント以下と言われています」(阪口)

さまざまな理由で育てられない親がいる一方、不妊治療に取り組むカップルが増えている——そんな両者にとって希望の光となるのが「養子縁組」です。とはいえ、親元から離れて暮らす子どもが里親家庭で養育される割合を現す「里親委託率」は、2017年3月末時点で18.3パーセント。欧米諸国が軒並み50パーセント以上を記録しているのに対し、圧倒的に少ないのが現状なのです。

2010年には「国連子どもの権利委員会」から、国連総会採択決議に反しているという理由で日本の「児童に対する人権侵害の指摘」を受けるほど深刻なもの……。しかし、養子縁組の手続きが煩雑であることはもちろん制度自体の認知度が低いので、解決への決め手が欠けている状況にあります。

社会貢献できる事業をしたい——そんな時に直面した養子縁組の知られざる現実

お誕生日おめでとう
代表の阪口が養子縁組で育てている子ども

そんな現状に違和感を覚え、一念発起した人物がいます。それは、2014年4月に「インターネット赤ちゃんポスト」を立ち上げた阪口です。自身も養子縁組で子どもを育てる1人の親でもあります。

インターネット赤ちゃんポスト(以下、赤ちゃんポスト)を立ち上げる以前は、10年以上にわたり中古パソコンのネット通販を展開する会社を経営してた阪口。しかし、2011年に起こった東日本大震災をきっかけに赤ちゃんポストを立ち上げることになるのです。

「家族を養えるくらいは十分に稼げていたんですが、東日本大震災をきっかけに、家族だけではなく社会のために何かできないか考えはじめました。当時、個人向けの中古パソコン需要がどんどん落ちていく流れだったので、売れる間に売ってしまおうと。Windows7の切り替えのタイミングで売上が伸びたので、2013年に上場企業の子会社に事業を譲渡。そのタイミングで、社会貢献性のある事業をスタートさせようと考えました」(阪口)

ちょうど事業を売却したころ、阪口にとって大きな転機が訪れます。当時はまだ、自身の人生に大きな影響を与えるとは知らずに……。

「私も妻も不妊治療をしてもなかなか子どもができなくて……。それなら養子を育てようと児童相談所に行ったんですが、養子縁組を積極的に斡旋していないことを知りました。しかも、住んでた地域の児童相談所では100組の里親登録に対して特別養子縁組がなされるのは年に2〜3組なので40年も待たされる、と」(阪口)

事実、当時の児童相談所における養子縁組の斡旋件数は年間300件程度。イギリスやフランス、ドイツなどの欧米諸国と比べると10分の1程度しか養子縁組が成立していません。日本のほうが圧倒的に人口が多いにもかかわらず……。

40年も待てるわけないじゃないか。しかも、困っているのは俺たち夫婦だけではないはず。それなら養子縁組を斡旋する事業を立ち上げよう——自身の経験をもとに、2014年4月、インターネット赤ちゃんポストを立ち上げることになるのです。

手探りで始めた養子縁組斡旋事業に問い合わせが急増

赤ちゃんマッチング「コウノトリ」のチラシ
実親と養親をつなぐ赤ちゃんのマッチングアプリ「コウノトリ」

とはいえ、事業としての経験がない阪口は、実際に養子縁組の需要があるか調査するところからスタート。すると、驚くべき結果が待っているのです(!)。

「まずは、数時間で作った簡易なサイトからスタートし、養子縁組を希望する問い合わせがあるかどうか調べたんです。その結果、1ヶ月の間に生みの親から2件、育ての親を希望する方から20件くらいの問い合わせをいただきました。養子に出したい実親に対して養親の数が多いことにびっくりしました」(阪口)

そこで、電話やメールで養子を出したい実親とコンタクトを取り、実際に会って養子縁組で養親を募集することへの覚書を交わす一方で、養親希望者を20組から4〜5組に絞り、家庭訪問などをして選定していくステップに進むのです。

「赤ちゃんの行き先を決めるわけなので、当然のことながら慎重に選ばないといけない。そのために、養親には2つの条件を承諾してもらったうえで決めていきます。1つは、産まれる前に養親が決まることが多いので、産まれてくるまで体に障害があるか分からない。それでも養親として引き受けてくれる方。もう1つは、お金に困って養親を募集するケースが非常に多く、つまり、病院にも行けない。なので経済的な支援もすることで、生みの親が安心して出産できる環境を整えてくれる方。これらを踏まえて養親になってくれる人が条件になっています」(阪口)

その後、無事に養親が決まったものの、事業をスピードアップさせるためにも2016年、赤ちゃんマッチングアプリ「コウノトリ」をリリースして本格始動。すると、月1件ほどだった養子縁組の斡旋が3〜4件に増えていくのです。

「この頃からマスコミに取り上げてもらうことが非常に多くなって。その後にNPO法人を立ち上げたときも、クローズアップ現代など月に1回はテレビや新聞、雑誌に取り上げてもらいました」(阪口)

ライセンス展開で広げたい!赤ちゃんの命を救う心の輪

赤ちゃんと養親
インターネット赤ちゃんポストのマッチングによって出会った赤ちゃんと養親

養子縁組の斡旋事業「赤ちゃんポスト」を立ち上げて数年、これまで、じつに100組以上、2017年は37組のマッチングを成功させています。しかし、数としては決して多いわけではありません。

年間、日本では100万人の赤ちゃんが産まれている一方で、本来産まれてくるはずの20万もの命が中絶により失われているのです。つまり、6人に1人の命は絶たれているということ。1パーセントだけでも産んでくれる親がいれば、それだけで2000人の赤ちゃんの命が助かります。欧米の数字を考えると、年間5000組くらいの養子縁組を斡旋したいのが本音なのです。

「厚生労働省が設定した目標は、年間1000組の養子縁組を斡旋すること。ただ、それを達成するためには民間の力を借りないといけないとも言っています」(阪口)

かくして2017年10月にはライセンス展開をスタートさせた阪口。とはいえ、あまり聞き慣れない業界ゆえ、尻込みしてしまう方がいるのではないでしょうか?

「養子縁組の斡旋とはいえ、経験や知識のない主婦の方にも加盟していただいているので、難しく考えなくていいと思います。生みの親との面談もカフェやファミレスでおこなうので、事務所もいらず自宅で開業できますからね」(阪口)

赤ちゃんの受け渡しの様子
カフェやファミレスでおこなわれる面談や受け渡しの立ち会い

そうは言うものの、「人の幸せにはそんなに興味はありません。お金に困っているから金儲けのために加盟しよう」という方には向いていない——そう阪口は続けます。

「それなりに蓄えもあるし、それなりに実績もある。そのうえで社会のために何かしらの貢献をしたい。経験や知識はなくても、養子縁組に少しでも興味があるかたには向いていると思います。加盟後は制度についての最低限の知識は必要ですが、すべてマニュアル化しているので、研修を受けてもらえれば問題ありません」(阪口)

ライセンス展開をして拠点が増えていくことで、中絶以外の選択肢として「養子縁組」があることを多くの方に知ってもらい、また、制度を必要とする人々が機会損失することなく活用してほしいと願っています。もちろん、この社会問題に絶対に正しい答えはありませんが、養子縁組の現状に疑問を抱き、ITを掛け合わせることで加速度的に改善できる。そして、取り組みを通じてより多くの命をつなぐことが、子どもの幸せ、親の幸せの実現につながると考えています。


年間約17万人の命を救う「インターネット赤ちゃんポスト」本部ストーリー (2018.7.1)
※掲載情報は取材当時のものです。



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