WEBでフランチャイズ紹介事業を手がけていた企業がFC本部になった理由

ストレッチアップが誕生したのは2014年。もともと、某広告代理店の事業の一つとしてスタートしました。現在は、都市部を中心に25店舗を数えるまでに拡大しています。
「ストレッチアップ事業発足当時、フランチャイズビジネスを紹介するマッチングサイト『フランチャイズの窓口』というサイトを運営していたんですが(※現在は事業売却済)、フランチャイズのマッチングサイトを運営しているなら、本部や加盟店の立場も経験するべき、みたいな議論が前からあって。まずは本部を立ち上げるために学ぼうということで、当時まだ1店舗しかなかったストレッチ専門店『ストレッチアップ』のフランチャイズに加盟しました」(尾上社長)
フランチャイズビジネスを紹介する「フランチャイズの窓口」というサイトを運営しつつ、ストレッチ専門店のフランチャイズ加盟店として新たな一歩を踏み出しました。これこそが「ストレッチアップ」の原点になっているのです。
「じつは……技術面は技術監修もあってしっかりしているものの、FCに加盟したのに運営マニュアルやルールなど何も決まっていないカオスな状態だったんです(笑)。そのなかでも、ストレッチ専門店自体が斬新な業態だったことや、健康志向の高まりを追い風に売り上げ自体は伸びていました。でもどうせやるなら徹底的にやろうということで、本部を店舗ごと買い取らせてもらって自分たちで一から体制を作っていくことになったんです」(尾上社長)
その後、新生ストレッチアップの試験場として東京・恵比寿の一角に直営店第一号となる「ストレッチアップ」をオープン。しかし、意気揚々とオープンしたものの、蓋を開けると厳しい現実が待っていたのです……。
開業して見えた、FC展開モデルとしての再現力の乏しさという課題

「ストレッチアップをスタートさせた当初は、競合と同じように60分6000円で営業していたんですが、我々のような来店型の業態はリピートしてもらうためにも、回数券を売らないといけないので、じつはかなり営業力が必要になんですよ。どなたでも運営できるフランチャイズ展開を見据えて取り組んできたのに、実はフランチャイズに不向きなことが分かったんです」(尾上社長)
当初よりフランチャイズ展開することを想定しての事業参入でしたが、「いまのままではフランチャイズ展開をするにふさわしいモデルではない」——そう悟ったという尾上社長。
「直営店には4人のスタッフがいたんですが、そのうち2人はトレーナー経験者。でも、回数券を売れるのは経験者ではない2人。事業として走らせてる以上、回数券を買ってもらって、売り上げを上げないと成り立たない。経験者にも頑張って売るように指示するんですが、彼らにとっては、販売よりもお客さんに笑顔になってもらうことが第一。その結果、どんどんモチベーションが下がってしまい辞めてしまうんです。本来、トレーナーが活躍しないといけない業界なのに、その彼らを追いやってしまっていることにずっと違和感がありました……」(尾上社長)
ストレッチアップは事業として失敗だった——そう結論付け、事業を畳むことも検討したという尾上社長。しかし、この最悪の状況こそが、現在のストレッチアップを生み出すことになるのです。
「どうせ畳むなら徹底的にやり切ってから畳もうと、お客さんにヒアリングしたりできることはないかと、外の世界に目を向けたりしてみたんです」(尾上社長)
FCとしての完成度を高めた“業界初”となる定額制導入

「競合と同じように回数券を買ってもらうために営業するも、すでに競合がいるうえ、決して安い値段ではないので営業力がないとなかなか売れなくて……。そこで、思い切って料金が変わらない『定額制』に変えたんです」(尾上社長)
それは、ほぐし系マッサージ店が60分3000円などという値付けで価格破壊を起こし、熾烈なイス取りゲームを繰り広げていた3年前のことでした。
「当時は低価格帯のフランチャイズのほぐし系マッサージ店が、どんどんオープンしていました。その焦りはもちろん、回数券の販売問題もあったので、通っていただいていた会員さんにヒアリングした結果、女性の会員さんの多くが、ホットヨガなどの定額制のお店に通いながらストレッチアップに通っていることがわかりました。これがヒントになって、ストレッチ専門店である我々も定額制にしてみようって」(尾上社長)
業界の常識を覆す定額制導入が、ストレッチアップにとって、そして尾上社長にとっても大きな転換期となるのです。
「それまでストレッチの業界に“定額制”という概念がなかったので、既存のお客さんのほとんどが会員になってくれました。料金体系はもちろん、営業時間なども競合と同じだった当時は、差別化するポイントがなくて営業力で勝負するしかなかったんです。だけど定額制に変えたことで、サービス力で勝負できる本来あるべき姿になっただけでなく、営業力を必要としないフランチャイズ向けのビジネスに生まれ変わったんです」(尾上社長)
その結果、営業力を必要としなくなったことで顧客獲得率がほぼ一律に。販売数でトレーナーを指導することもなくなり、トレーナーのストレスが軽減し、施術に注力できる環境も整いました。さらに、定額制にしたことで、事業として走らせていくための“戦略”も立てやすくなったのです。
「定額制(ストック)にすると、売り上げが一目瞭然なんです。上限に到達すると、新規の会員さんを募集できなくなる。つまり、広告宣伝費を削減できるんです。しかも、既存の会員さんは定額制ということで定期的に来てくれる。それに合わせてトレーナーのスケジュールを抑えておけばいいだけなので、月間の人件費も計算しやすくなったんです」(尾上社長)
そうして、なんとか起死回生に成功。この成功体験を基に、かねて見据えていたフランチャイズ展開に踏み切ることになるのです。
FCモデルとして生まれ変わったストレッチアップに参画続々

「直営店で築いたシステムを買い取った心斎橋のお店にあてはめたら、調整は必要でしたが同じような結果が得られました。これならフランチャイズ展開するにふさわしいモデルだろう、と。それまでフランチャイズのマッチングサイトを運営していた経験も総動員し、5社限定でフランチャイズ募集をスタートさせたんです」(尾上社長)

そうして、念願のフランチャイズ募集をスタートさせたストレッチアップ。順調に加盟を延ばし、2018年12月現在で25もの加盟を集めるなど、現在もFC店舗網を拡大しています。その人気の背景には健康志向の高まりだけでなく、“ストックビジネス”であることも起因しているのです。
「フランチャイズ展開した当初は、ストレッチで自身の体調が善くなったことから興味を持って開業いただくというケースがほとんどでしたが、いまは、ストックビジネスという点に魅力を感じていただくことも増えました。ストックビジネスとして代表的なのは塾経営だと思いますが、いまや塾は飽和状態……。そこで、ストレッチアップに興味を示して開業していただいている方も多いんだと思います。またストレッチなので、老若男女問わずターゲットになる点も魅力だと思います」(尾上社長)
開業のしやすさという点でもストレッチの基本的な知識は必要なく、運動が苦手な人でもオーナーとして活躍できる、人材育成の容易さもストレッチアップの特徴の一つであるといいます。
「オーナーさんが店長を兼務することもありますが、店長を雇ってマネジメントに集中してもらう加盟パターンが多いです。その場合、店長をきちんと育てるのが重要なので、ストレッチの知識などは研修でみっちり教えますし、オープンしてからのリアルな数字などもきちんと意識できるように育て上げれば、オーナーさんは数字の定点観測をするだけ。なので、本部とともに優秀な店長を育てましょう、というお話はさせてもらってます」(尾上社長)
尾上社長が加盟検討者と話をする際、とくに重要視していることがあります。それは、ビジネス感。フランチャイズ加盟とはいえ、本部におんぶに抱っこでは務まらない——そんな彼の考えが根本としてあるだけでなく、ベンチャー企業として成長が必須であるIdeaLinkのビジネスパートナーとしても共に成長できる関係が理想だから。
「本部に何かをやってもらって当たり前。このスタンスが続いてしまうと、自分で何も考えなくなる。その結果、レベルがどんどん下がってしまう。経営的な視点が持てるか否かは重要なところ。何かのコミュニティに入った時に、そのコミュニティを利用してやろうってぐらいの志を持っている人が理想ですね」(尾上社長)
そうして、2020年には100店舗まで拡大することを目標としている尾上社長。若きFC本部、若き社長は、これからも目標に向かって走り抜けます。
※掲載情報は取材当時のものです。