一般社団法人士業フランチャイズ支援協会 代表理事 税理士 原川 健
プロが教える節税対策まとめ

固定資産・減価償却に関する節税

少額減価償却資産を購入する

青色申告法人については、少額減価償却資産の即時償却制度を利用しましょう。

少額減価償却資産の即時償却制度とは、取得価額が30万円未満の減価償却資産については、その取得した年度で一括して経費計上できるという節税効果の高い制度です。ただし、イスとテーブルが一組で応接セットとして販売されており、そのまま使用する場合には、一つの資産の取得として、合計額で判断することとされていますので、こういったものは注意が必要です。

また、この規定は一事業年度内で即時償却された金額が300万円に達した場合には、 それ以上の即時償却は認められませんのでその累計額を把握してうまく節税に役立てましょう。


中古資産を購入する

取得価額が30万円を超える資産を購入した場合、減価償却を行う必要があります。その際、耐用年数が大きなポイントとなります。

耐用年数とは、資産ごとに税法で定められたもので、資産の使用可能年数をいい、耐用年数が短いほど、1年間で計上できる減価償却費は大きくなります。そして、購入した資産が中古資産であれば、実際に使用できる年数は短くなるため、耐用年数も短縮して計算し直すことができます。そうすると、1年間で計上できる減価償却費もより大きくできます。

例えば、新車を購入した場合は、購入年度においては、購入金額の3割ほどしか減価償却費を計上できません。これに対し、初年度登録から4年経過した中古車を購入した場合は、購入年度においてほぼ全額を減価償却費として計上することができます。

節税目的で資産を購入される場合、中古資産をあえて選ぶことも非常に有効です。


資産取得の付随費用を経費化する

固定資産購入時の諸費用についての節税テクニックです。土地、建物、車両などの固定資産の取得価額は、どの様に計算をするかといいますと、一般的には購入するためにかかるすべての金額が取得価額となります。

ここで、不動産取得税・登録免許税・自動車取得税・登記費用などの付随費用は、支払った際に費用処理できるという特例があります。付随費用を取得価額として処理してしまうと、たとえば、建物については数十年かけて費用化され、土地については売却するまで費用化されないということになります。

このように、付随費用を支払った際に費用処理すると、大きな節税効果がありますので、固定資産の購入の際には、ぜひご検討下さい。

なお、仲介手数料など付随費用でも取得価額として処理しなければならいものもあるため、注意も必要です。


中小企業倒産防止共済に加入する

中小企業倒産防止共済制度とは、取引先に倒産など不測の事態が生じた場合、売掛金等が回収困難になってしまうので、急遽資金手当を受ける制度です。加入後6ヶ月以上経過していれば、掛金総額の10倍の範囲内で、最高8,000万円の共済金の貸付が受けられます。しかも、共済金は、無担保・無保証・無利子で受けられます。

決算の節税対策として、中小企業倒産防止共済への加入と、掛金の年払を検討するのも一つの手段です。万一、やむを得ず解約をする場合でも、加入後1年以上経過していれば、掛金総額の80~100%が返還されます。自社が健全な経営を行っていても、取引先の倒産という事態はいつ起こるかわかりません。万が一の不測事態に備え、制度の加入を検討してみてください。


耐用年数の「短縮制度」を活用する

業務のために用いられる建物などの資産は、税法上の耐用年数に基づき、経費として按分していきます。 この税法上の耐用年数は標準的な資産を対象とし、原則として、通常の維持補修を加えながら、通常の使用条件で使用した場合の効用持続耐用年数を基礎として定められています。

しかし、下記のような特別な事情を満たす場合は、国税局長の承認を受け耐用年数の短縮ができます。

・資産の材質又は制作方法が一般的なものと著しく異なる
・資産のある地盤が隆起または沈下した
・資産の陳腐化
・資産の使用される場所の状況によって著しく腐食した
・資産が通常の修理または手入れをしなかったことにより著しく損耗した
・資産の構成が同一種類の他の減価償却資産の通常の構成と著しく異なることとなった

耐用年数が短縮できると早期の償却が可能となりますので、該当しそうな固定資産がある場合には検討してみてください。


フル稼働の機械は「増加償却」をする

減価償却資産は耐用年数に基づいて費用計上するため、取得価額の全額が経費計上されるまでには数年かかるのが一般的です。

しかし、減価償却資産のうち機械装置は、通常の減価償却よりも割増して早めに減価償却費を計上することが出来る場合があります。その方法が増加償却です。税法上の機械装置の耐用年数は平均的な使用時間を前提に考えられています。そのため、その平均的な使用時間を超えて機械装置を稼動する場合には、通常の減価償却費よりも割増して費用を計上することが認められているのです。

この適用を受けるためには、増加償却する旨の届出書を、申告期限までに提出する必要があり、平均的な使用時間を超えて使用したことを証明する書類を保存することなど、一定の要件を満たす必要があります。通常よりも稼働率の高い機械装置がある場合は、増加償却の適用の検討をしてみてください。


建物と建物附属設備は区分する

建物を購入した場合、建物本体と一体となっている建物附属設備を区分できる場合は、それぞれ別の資産として分けましょう。実は、減価償却を計上する際に違いが出てきます。建物附属設備を建物と区分せずに資産計上した場合、建物附属設備を含めた建物全体に対して、その耐用年数により減価償却を行います。建物の耐用年数は、他の資産の耐用年数より長いため、なかなか減価償却が進みません。

そこで、建物附属設備に該当するものを建物と区分して計上すれば、それぞれの耐用年数で減価償却の計算が可能です。例えば、給排水設備、ガス設備、電気設備などは、耐用年数が建物と比べると3分の1から2分の1ほど短いため、その分早期の償却が可能になります。建物部分と建物附属設備部分を区分して計上した方が節税となるため、建物などを購入する際には、詳細の分かる見積書をもらっておきましょう。

建物の耐用年数

構造・用途 耐用年数
鉄骨鉄筋コンクリート造のもの 47年
レンガ造・石造・ブロック造のもの 38年
木造・合成樹脂造のもの 22年

※国税局:主な減価償却資産の耐用年数から一部を転機

建物附属設備の耐用年数

構造・用途 耐用年数
店舗簡易装備 3年
給排水・衛生設備、ガス設備 15年
消火、排煙・災害報知設備 8年

※国税局:主な減価償却資産の耐用年数から一部を転機


一括償却資産を活用する

一括償却資産とは、取得価額が20万円未満の固定資産をいいます。この一括償却資産は、取得してから3事業年度で償却することができます。ただし、そもそも取得価額が30万円未満(青色申告法人)のものは、限度額があるにせよ取得した事業年度で即時償却することができます。しかし、即時償却できる資産でも、利益確保のためにあえて資産計上する場合があります。

このような場合に有効利用できるのが、一括償却資産です。例えば、19万円で取得した木製事務机を即時償却せずに、単純に資産として計上した場合、その耐用年数は8年となってしまいます。しかし、一括償却資産として取り扱った場合は、3事業年度で均等償却しますので、取得年度においては経費を削減し、翌事業年度以降は、単純に資産として計上するより早期に経費計上が可能となります。

資産を取得する際は、一括償却資産の活用も是非検討してみてください。


特別償却と特別控除を活用する

減価償却資産は、取得価額が30万円以上の場合、購入時に全額経費計上をすることは選択できず、耐用年数に応じ何年かに渡って、経費計上することになります。しかし、特定機械装置・設備等を取得した場合など、一定の要件を満たせば、取得初年度に、下記の金額を経費計上できる特別償却という制度があり、通常の減価償却費よりも多くの経費計上ができます。

購入価額×30% + 通常の減価償却費 = ××××

また、上記とは別に、取得価額の7%を乗じて計算した金額(適用する制度によって率は変動します。)を法人税から直接控除できる特別控除という制度もあります。どちらの方法を選択しても良いため、特定機械装置・設備等を購入する予定がある場合は、検討してみましょう。


修繕費を支出する

建物の壁の塗替え、機械の基本部品の取替えやタイヤ交換などの修繕費や原状回復にかかる費用は経費となります。

しかし、修繕により価値があがったり、使用できる期間が延びたりする場合は、経費とはならず新たに取得した固定資産として資産計上しなければなりません。ただし、20万円未満の支出は無条件に修繕費として認められますし、3年以内の周期で継続して行われている支出についても修繕費として経費計上が認められます。

また、一定の要件に該当すれば、60万円未満または、取得価額の10%以下の修繕についても、全額経費計上することも可能です。少しの差で資産計上が必要になったり、全額経費処理できたりしますので、見積もりを取る段階から考えて発注しましょう。


個人から法人に車両を譲渡する

個人が所有している車両を、法人が引き続き使用する場合、基本的には法人に名義変更し、法人への引継価格を決める必要があります。法人へ引継ぐことにより、その車両の引継価格を減価償却費として経費計上できるだけでなく、ガソリン代、自動車税、車検代、自動車保険料、駐車場代などの諸費用も、法人の経費として計上することができます。

なお、引継価格を決める際には、税務上の問題を生じさせないために、時価により引継ぎを行なう必要があります。ここでいう時価は、中古車買取店の査定価格などを参考にします。名義変更が困難な場合、個人と法人間で賃貸借契約を結び、法人で賃借料を計上するという方法もありますが、個人側で雑所得などの所得が計上され、確定申告が必要となりますので注意が必要です。


固定資産の棚卸をする

破損等の理由により廃棄処理した固定資産は、帳簿からも廃棄処理を行い、経費計上することができます。よく忘れてしまいますので、決算前に必ず固定資産の棚卸を実施するようにしましょう。倉庫などに置きっぱなしになっているような固定資産で、実際に使用していないもの、かつ、将来新たに再利用することがないものは、処分したと仮定した場合の見積額を除いて経費計上ができる有姿除却という制度もあります。ソフトウェアについても、有姿除却することができます。

ただし、通常の固定資産に比べ、使用の状態や除却したかの判断が難しいため、外部の客観的な証明資料をそろえておくことが必要になります。固定資産の定期的な棚卸を行い、廃棄又は有姿除却を実施し、節税を行いましょう。


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