飲食コンサルが選んだ新ちゃんぽん!「じげもんちゃんぽん」にライセンス加盟し続々新店をオープン
「板前バル」をはじめ、10の飲食ブランドを展開する株式会社CANVAS。飲食店コンサルティング事業も手掛けるなど、いわば飲食のプロフェッショナルとも言える企業です。
そんな同社が、2020年春のコロナ下に、次に目をつけたのが、ちゃんぽん専門店の「じげもんちゃんぽん」。2020年6月にライセンスパートナーとして「じげもんちゃんぽん赤羽店」をオープンさせると、次々と出店を重ね、わずか1年で5店舗を運営中。2021年の秋以降もオープンを控えています。
なぜ、CANVASはコロナ下で外食が苦戦するなか「じげもんちゃんぽん」のライセンスに加盟し、続々と出店を続けるのでしょうか。本間代表にその理由をお聞きしました。
「じげもんちゃんぽん」のライセンスとは?
たっぷり盛り付けられたシャキシャキ野菜に、もっちもちでコシのある自家製麺。そして、野菜と麺を優しく包み込むまろやかな純白豚骨スープ──。「野菜、美味しく、健康に」をコンセプトに、本格的かつ新感覚のちゃんぽんを提供する「じげもんちゃんぽん」。地産地消を掲げる株式会社大高商事がライセンス展開する飲食チェーンです。大高商事は「地産都消」をミッションとして掲げ、地元のじげもん(=地元民)のみぞ知る食材や食文化を発掘し、日本中に広めようとしています。
2017年11月に東京・武蔵境で直営1号店をオープンし、男性だけでなく、健康志向の高まりから女性や家族連れ、年配の方まで幅広い層から支持を獲得しています。そんな「じげもんちゃんぽん」が2020年3月にライセンス加盟店募集を開始すると、新型コロナウイルスによる外食不況のなか、約1年半で10店舗以上がオープンするなど破竹の勢いで出店を続けています。
なぜ、「じげもんちゃんぽん」は、コロナ下にもかかわらず成長を続けているのでしょうか。この記事では、ライセンスパートナーとして、すでに5店舗の「じげもんちゃんぽん」を運営している「株式会社CANVAS」の本間代表にインタビュー。加盟の経緯や「じげもんちゃんぽん」の競合優位性、出店を続ける理由、コロナ流行以降の飲食事情などについてお聞きしました。
今回お話を伺ったのは…
大手飲食系企業で20年以上のキャリアを積んだのち、2011年に株式会社CANVASを設立。全10ブランド、27店舗を運営する一方で、「じげもんちゃんぽん」のライセンスパートナーとして5店舗を運営。そのほか、飲食コンサルティング事業やEC事業など複数の事業を手掛けている。
飲食店コンサルティング事業も手掛ける「飲食のプロ」
CANVASを立ち上げる前は、2社の飲食系企業で働いていました。1社目は20年ほど勤めていた大手の居酒屋チェーンですね。私が入社した当初は10店舗くらいしかありませんでしたが、その後、上場もして最大で450店舗くらいまで展開するに至りました。その後、違う飲食系企業に転職し、いわゆる店舗展開の責任者という形で役員として3年ほど勤め、2011年にCANVASを立ち上げました。
大きくは4つの事業を展開していて、ひとつが「店舗運営事業」。あとは「飲食店コンサルティング事業」と「EC事業」「お弁当・外販事業」です。
まず「店舗運営事業」は自社で10ブランド、全27店舗を展開しています。ジャンルはさまざまで、和食からイタリアン、広島お好み焼き、パンケーキまで多岐にわたります。フランチャイズ本部として自社ブランドのフランチャイズ展開もしているのですが、一方でフランチャイズ加盟店として運営している店舗もあります。今回取材で取り上げていただいている「じげもんちゃんぽん」に関しては、ライセンス加盟店として2020年6月に赤羽店をオープンし、現在は5店舗を運営しています。ですので、「店舗運営事業」に関しては、本部と加盟店のふたつの顔を持ち合わせている状況です。
「飲食店コンサルティング事業」に関しては、これまでのノウハウを活かしてブランド開発から物件の開発、メニュー開発、商品の物流・流通、そして経理、財務に至るまで、トータルでコンサルティングさせていただいています。現在は11社ほどのコンサルティングを手掛けていて、最近だと、大手の商業施設の中に入っているフードホールのプロデュースを任せていただきました。
そうですね、実践型のコンサルタントとして細部に渡り担当させていただいています。残りの事業のうち「EC事業」は、弊社で展開する主力ブランド「板前バル」のオンラインショップなんですが、創業から使用しているドレッシングや食材などを販売しています。コロナによって需要も拡大し、2021年からはAmazonや楽天ショッピングなどでもECサイトをオープンしました。
最後の「お弁当・外販事業」については、JR東京駅や羽田・成田空港の駅弁コーナーで、当社のお弁当を販売しています。最近は東京オリンピック2020のスタッフ用のお弁当なども作ったりしていました。
「じげもんちゃんぽん」の味に惚れこんで出店
もともと、「じげもんちゃんぽん」を運営する株式会社 大高商事の高階代表とは飲食仲間で、いろいろ相談も受けてたんです。そんな経緯もあり、「じげもんちゃんぽん」のちゃんぽんを食べたら本当に美味しくて。これは「いける!」と確信し、ライセンスパートナーとして出店させていただいた、というのが経緯です。
そうなんです。じげもんちゃんぽんでは“新ちゃんぽん”と謳っているんですが、たしかに一般的な「ちゃんぽん」とはまったく違う印象を受けました。野菜がたっぷり入っているのは他のちゃんぽんと同じですが、スープから麺、味のペーストに至るまで、「既存のちゃんぽんを美味しくしたら、こうなりました」みたいな感じで。衝撃を受ける美味しさでしたね。
そうですよね。ちゃんぽんのことをよく分からない方たちは、ラーメンと同じ食べ物だと認識しています。でも、じげもんちゃんぽん本部の高階代表曰く、九州の人たちからしたら「ちゃんぽん」と「ラーメン」はまったくの別物で、ひとつのジャンルとして成立しているそうなんです。ラーメンやうどん、そばのように「ちゃんぽん」というジャンルがある。私達は、そういう文化をまずは関東を中心に作っていきたいと考えています。
予想以上の反響でした。赤羽店は10坪しかなくて、もともと居酒屋さんがあった物件を居抜きで使っているんですが、居酒屋時代は月100万円ぐらいしか売り上げていなかったみたいなんです。じげもんちゃんぽんにしてからは月200万円くらいを目標にしていたんですが、蓋を開けてみたら売り上げが月300万円に跳ね上がりました。
決していい立地といえる場所ではないので、やっぱり「味」だと思います。あとは野菜がたくさん乗っているので、女性からの支持を得ているのも理由のひとつですかね。もともとちゃんぽんやラーメンを食べるヘビーユーザーに加え、従来のラーメン店ではコアな客層になり得ない健康志向のある方たちにも利用している分が上乗せになっている印象です。
ほぼキープできていますよ。オープン特需などもあるので、さすがに月300万円まではいきませんが、月200万〜250万円はコンスタントに上回っています。やっぱりアルコールと違って、コロナでも食事ニーズは変わりませんからね。もちろん、多少は世の中の雰囲気的に店舗にいらっしゃるお客さまの数は減りますが、その分をテイクアウトやデリバリーが補ってくれる感じですね。
たとえば昨日は、1日の売り上げの20パーセントがテイクアウトとデリバリー。CANVASの他のブランドの倍ぐらいの数字になります。なので、自粛による外食需要が減ったとしても、テイクアウトなどで補えるのでコロナの影響はほぼ受けませんよ。
私も意外でした。普通、麺類をテイクアウトしたら伸びちゃうと思いますよね。私もそう思っていたんですが、「じげもんちゃんぽん」のテイクアウトはすごい工夫がされていて。店舗で提供するちゃんぽんとテイクアウトでは調理工程が違うんです。要は、持ち運びの時間を計算し、茹で時間を短くすることで食べる頃にはちょうど良い硬さになっている。
なので、テイクアウトやデリバリーで頼むお客さまも多く、リピートにもつながっているんだと思います。
本部が商品開発にとても意欲的で、妥協することなく取り組んでいるので、常に美味しいちゃんぽんを提供できるんです。コロナ下でも加盟店としては安心して運営できるので助かっていますね。
「味」はもちろん、「低投資」で出店できるのが魅力
1店舗目の赤羽店が予想以上に大きな反響だったのはもちろんですが、「じげもんちゃんぽん」は低投資で出店できるのも理由のひとつです。
赤羽店は700万〜800万円ほどの初期投資でしたが、居抜き物件ならもっと安くオープンできますからね。お付き合いのある工務店さんもあるので、2店舗目の松戸店は、居抜きでストーブ(ガスコンロを設置した金属製の調理台)なんかもそのまま使えたので、麺機や餃子機を入れて、外装を変えても300万〜400万円ほどでオープンできました。2022年1月にオープン予定の横浜のお店も居抜きなので、初期投資をかなり抑えてオープンできる予定です。
「じげもんちゃんぽん」のほうが圧倒的に安く出店できますね。たとえば、2020年7月に日比谷に自社ブランドの「板前バル」をオープンしたんですが、35坪で初期投資が7000万円かかってますから。また、新宿にあるお店もオープンから10年が経つのでリニューアルしたんですが、リニューアルするだけで800万円もかかりました。
一方、「じげもんちゃんぽん」の場合、居抜きで300万〜400万円や高くても700万〜800万円ほどで新規出店できたのでリスクをかなり抑えて開業できます。これも次々と出店を続けている理由のひとつですね。
オペレーションも本部サポートも、どちらも「さすがだな」と思いますね。まずオペレーションは、シンプルで簡略化されているので、CANVASが展開している飲食ブランドと比べても格段にラクですよ。
メニュー数が圧倒的に少ないだけでなく、ベースのちゃんぽんはすべて同じなので、メニューが変わってもそれにトッピングを付け加えたり、味に少し変化を加えたりするだけですからね。もちろん、ベースとなるちゃんぽんの茹で時間や、麺をスープに馴染ませる時間もマニュアルで決まっているので、それに従えばアルバイトスタッフでも簡単に美味しいちゃんぽんが作れる。弊社も麺類の業態は「じげもんちゃんぽん」がはじめてですが、特に問題なく運営できています。
そこは高階代表しっかりしてると思いますね。一般的な飲食フランチャイズなどだと、新しいメニューが出たら本部からレシピなどが送られてきたうえで、SV(スーパーバイザー)が店舗でちょろっと教えてくれる程度なんですよね。
でも「じげもんちゃんぽん」は季節メニューなどにもかなりこだわっていて、直営店で十分な検証を重ねてからライセンスパートナーに落とし込んでいる。なので、味もぶれないし、本当に美味しいメニューを提供できるんです。各加盟店に落とし込む際も、きちんと手取り足取りフォローをしてくれる。なので、新しいメニューが登場しても安心ですし、何か困ったことがあれば本部がきめ細かに対応してくれて、我々でもいいなと思っているので、未経験の方でも安心して運営できると思います。
そうですね。今後はCANVASのブランドで取り入れて成功しているツールなども、高階代表に提案していて「じげもんちゃんぽん」に導入してもらう予定です。なので、さらに本部のサポートが手厚くなると思いますよ。
基本は、味の良さとオペレーションのシンプルさにはなると思います。また世の中的には、おそらく「二毛作」がキーになっているんじゃないですかね。というのも、現在2021年8月時点は政府からの自粛要請で、飲食店は基本的に20時までしか営業できませんよね。そうなると売上をカバーするために、夜しか営業していなかった飲食店がランチをはじめたりするんですが、たとえば居酒屋さんの場合、急にランチをはじめると言っても「から揚げ定食」などありきたりなメニューしか提供できないんです。
でも、から揚げなんて前述の理由から競合が多いので、集客できないとなったら今度は価格を下げますよね。結果、売上が上がるのではなく下がってしまうというジレンマに陥りがちです。そうなるとコロナ下を生き延びるのは難しくなるので、それに打ち勝つための、他と差別化ができて、且つ単価もそれなりのメニューが必要なんです。
居酒屋さんなどが「じげもんちゃんぽん」のライセンスに加盟し、昼はじげもんちゃんぽんとして、夜は従来の居酒屋さんとして営業する。こんな感じで「二毛作」で営業できるので、飲食系企業が加盟しているケースが多くなっているんじゃないですかね。
コロナ収束後に向けて着々と準備を進めるじげもんちゃんぽんの今後に注目
そうですね。まず現状ですが、バルや寿司店など、アルコールを提供している業態はすべて休業しています。長いところはもう1年は休業していますね。
これは誰もが分かっている話ですが、食のニーズは今後も絶対になくなりません。今は確かにコロナで苦しい状況が続いていますが、正直、なす術がない状況なんです。なので、収束するのをじっと待つしかありません。とはいえ、ただ待つわけでなく、コロナがある程度収束したあとにどうすべきかをプランニングするのが今の飲食店には必要だと感じています。
はい。たとえば、ニューヨークではコロナが落ち着いてマスクを外しても良くなったタイミングで、一気に2ヶ月先まで予約が取れないくらい飲食店のニーズが爆発的に増えました。ニューヨークほどの反動は生まれないにしても、日本でも必ず外食ニーズが急激に増えるはずなので、今はそこに向かったプランニングが大事だと考えています。
そうですね。今はしっかり休業し、これまで以上のサービスや商品を提供するために準備をしているお店は、コロナ収束後もコロナ以前の状態を取り戻せると思います。
今は、20時以降もお酒が飲めるお店が他にないからという理由で、そういうお店にお客さんは集中しています。でも、他が空いていないから恩恵を受けられているだけで、コロナが収束したら淘汰されるんじゃないですかね。
なので、ちゃんと休業し、来るべき日に備えているお店にとって、確かに今は苦しい状況が続いていますが、決してネガティブではなくポジティブなんです。
そうなんですよね、問題なのはいつ収束するのか……。2021年9月末には緊急事態宣言が解除され、アルコールを提供できる状況になっていますが、まだまだ外出を遠慮している面もありますよね。ですが年末くらいには、消費者も「そろそろ飲みにいくか」という状況になっていると予想しています。
私見にはなりますが、正直、デリバリー業態は仕組みを変えない限りなくなると予想しています。というのもデリバリーの場合、値段が高いだけでなく、なかにはおいしくない料理を提供しているお店もたくさんありますよね。
利用者にとっては、直線店舗に行けば500円で買えるものを、デリバリーだと700~800円で買っているわけで、コロナで自粛しているからこそ買っている人たちも多くいらっしゃいます。なので、今のままの仕組みだとコロナが収束したら利用者も減り、それに伴って出店者も減る。コロナによって定番化するものもあれば、衰退していくものもあるので、今後は、見極めながらうまく利用していくことが求められると思いますね。
求められる味であったり、サービスや体験が重要だと考えています。私自身は「じげもんちゃんぽん」はこだわりとか差別化ができているので、価格はもう少し高くしてもいいんじゃないか、と思っているぐらいです。