フランチャイズ研究会 中小企業診断士角田 博
2015-02-13 小説で起業ノウハウを学ぶ!FCビジネス起業物語
フランチャイズ研究会 中小企業診断士 角田 博

フランチャイズ研究会執筆『未経験の脱サラ・リペア起業。お客様に感謝される仕事がしたい

契約満了まであと1年。いざ加盟検討へ

 起業物語の登場人物

鎌田一平:妻子をもつ36歳。PCサポートを担当するサラリーマン。将来に不安を感じている中、ふとしたきっかけでリペアFCでの起業に興味をもつが・・・


「我々は来年度末までに全員が完全に引き上げる」
自社の営業部長の言葉に、鎌田一平は来るものがきてしまったと感じていた。

現在、一平が担当しているお客は大幅な店舗縮小の方針を決定していた。昨日の新聞にも出ていたが、現場では数か月前からちらほらと噂されていた。

ここ、サポートセンターのセンター長から呼び出された営業部長は、打ち合わせの後に、一平たちメンバーを近くの喫茶店に連れ出して、この驚きの事実を告げたのだった。

「次はどこになりそうですか?」
一平が切り出す。

「うむ、1つは横浜より先のH市のデータセンターかな。あとは…」
営業部長もパッとは思い浮かばないようだった。H市か、今の山の手線沿線から比べるとかなり遠いな。いまでもC市の自宅から遠いのに。

「とにかくまだ撤退まで時間がある。みんな、引き続きしっかりとやってくれ」

「はい…」
それ以上あまり会話は無く、薄いコーヒーをすすっていた。


「パパの現場、縮小になるんだ…」
裕美は夕食をレンジで温めながら言った。

一平は包み隠さず営業部長の話を裕美に語った。
「ああ。俺はたぶんまだ1年ちょっとは今の現場に残ると思うけど。
今日の話じゃ、次の現場は遠くなるみたいだ」

正直その話も話半分と思っていなければならない。
これまでだって景気の影響で契約が打ち切られてしまう人たちを何人も見てきた。ちょうどよい現場があれば我慢して行けばいいが…、もしも無ければ?


一平はここのところ毎日考えていたことを裕美に切り出した。
「実は、転職ではなく、リペア業の独立開業を真剣に考えてみたいんだ。
住宅とか車の内装とかを補修する仕事なんだけど、どうやら自宅で開業できそうなんだ」

裕美は不安そうな表情を浮かべた。

「これまでの仕事と全く違うことなんてやっても大丈夫なの?」

一平はサイトから請求した資料をテーブルに置いて、裕美に広げて見せた。
「そこは俺も考えてる。フランチャイズ加盟という方法があるんだ」

フランチャイズ?
「ああ。未経験でも本部がしっかりと技術指導してくれるし、営業指導もしてくれる。コンビニとかと違って店舗を持つ必要が無いから開業資金も少なくて済む。
お客さんも知っているブランドで仕事できるから、個人で始めるよりもはるかに軌道に乗りやすいと思うんだ」

裕美はしばらく黙って聞いていたが、やがて小さくため息をついて言った。
「でも、やっぱりとても不安だわ。勇人は小学校に入ったばかりだし…」

「裕美が不安な気持ちはよく分かった。もっとよく調べてみるよ。」
それから独立開業に向けた活動が始まった。

フランチャイズ研究会 中小企業診断士 角田 博

1974年生まれ。1999年ソフトウェア開発会社に入社。流通業の営業系システムや製造業の生産管理システムの設計・開発に携わる。2014年中小企業診断士登録。現在千葉県のホテル、クリーニング業の経営改善支援にも携わっている。