韓国フランチャイズビジネスエキスポ2013(KFA主催)
‐ アンニョンハシムニカ ハングギ フランチャイズ(今日は、韓国フランチャイズ)‐
2013年10月2日、私たちフランチャイズWEB リポート取材陣は韓国ソウルの展示会場にいた。
展示会場の名前はSETEC。敷地面積としてはそれほど広くはないが、都心立地ということで、来場には都合の良いアクセスだ。
展示会の主催者は韓国唯一の政府系団体であるKFA(Korean Franchise Asociation)。わが国のJFA(JaapanFranchise Asociation)と極めて似通った団体だ。
今回は第30 回目という記念する大会であることは事前に聞いていたが、私たちが韓国取材を思い立ったのは、今年の6月ニューヨークで開催されたIFE(International Franchise Exhibition)での韓国ブースがやたら目立ったからだった。
世界中のフランチャイズ本部が集まるニューヨークの会場にあって、韓国の出展数は軽く10以上あり、わずか4本部しか出展していない日本を上回っていた。ニューヨークで私たちは韓国のフランチャイズを強く意識させられたのだ。
その印象が残ったままの私たちにとって、隣国で開催されるフランチャイズ展示会取材は外せないものだった。
‐ 韓国フランチャイズエキスポ概観 ‐
今回が第30 回目ということだが、KFA 主催のフランチャイズエキスポは年に2回、春と秋に行われるので、開催年数でいうと今回が15 年目ということになる。
わが国のフランチャイズエキスポの代表としては日本経済新聞社主催のフランチャイズショーがそれに匹敵すると思われるが、こちらは年に1回で来年がちょうど30回目に当たるので、歴史から見るとちょうど日本の半分の長さと言うことになる。
開催規模で見ると、広さ的には日経FC ショーが弱冠上回るだろうか。フードコートのような特別なスペースは設けられていないので、全てのスペースが本部ブースで占められていた。
肝心の来場者数だが、主催者発表で3万を少し越える程度ということだった。開催期間は3日間。初日は韓国の一種の「建国記念日」である「開天節」にあたり祝日だったので、私たちが取材した二日間では初日の方が来場者数は多かったようだ。
‐ エキスポ主催者KFAとは ‐
Korea Franchise Asociation 社団法人韓国フランチャイズ協会のことだ。 日本ではそっくりそのままJFA(Japan FranchiseAsociation)に該当するだろう。
協会はフランチャイズ本部によって構成され、会長や副会長がフランチャイズ本部代表者によって構成されている点も同じだ。
会長の任期は、KFAが3年、再選あり。JFAは2年、再選なし。このことからもKFA の会長はJFA よりも会長の権限はより強力であるように思えるし、KFA 会長であるCho 氏とのインタビューを通じても、KFA の会長はより実際の政治的活動も強いように思えた。
また、このエキスポは主催者そのものがKFA であるが、日本のJFAがこういった展示会を主催することは過去にはなかったのではないだろうか。JFAは、わが国最大のフランチャイズ展示会である日経フランチャイズショーの特別協力という立場であり、決して自らがこういった展示会を主催することはない。この点が大きく異なっている。
現在の会長であるCho 氏はKFA の会長に就任してまだ10 ヶ月あまりだが、次々と新しい施策を打ち出し、同時に実績も残しているようだ。
今回全てのブースが埋まったのも初めてであれば、オープニングセレモニーに政府の閣僚が出席したのも初めてのことのようだ。
フランチャイズ振興のために政府から予算も獲得したということで、就任10ヶ月で大いにその手腕を振るっているという印象だ。
Cho 氏は、元々は鶏肉の卸から始まり、現在は鳥料理のレストランチェーンを韓国内に100 店舗以上展開しているフランチャイズ本部の代表者である。
左から3人目がCho 会長。その左隣が尹相直産業通商資源相
政府関係者を初め、歴代のKFA 会長など。
ブースの作りは費用を掛けているなという印象。実在の店舗を忠実に模している感じだ。
‐ 韓国フランチャイズショーの特徴 ‐
■大半が飲食ブース
これもまた日経フランチャイズショーとの比較になるが、際だった違いは、KFA の場合には、出展者のその大半が飲食関連のブースで占められていたということだ。
まだ一回目の取材で、そう断定的なことは書けないが、こと今回のKFA 主催のフランチャイズ展示会に限って言えば、全出展者のうち飲食関連が9割以上を占めていたように思えた。つまり会場を歩いていて目に付くほとんどが飲食関連のブースだということだ。
ただ、韓国ではこれに似たようなフランチャイズ展示会は他でも催されており、中にはサービス業や小売りの比率が比較的多い展示会も存在するようだ。
飲食が主ということもあってか、一つ一つのブースの作りはとても豪華でリアルであった。味も店舗も展開中のチェーン店そのものを表現することに努めているようだった。
ブース内で生肉から調理していた。まるで本物の店舗と変わらないのでは。
最も人気を集めていたブースの一つ。たっぷりの油で揚げ、オーブンで焼いたのち提供していた。
■フードコートはないがその代わり
先にも述べたように、こちらの会場にはフードコートというものが用意されていない。なのに出展業種のほとんどが飲食関連。それでどういことが起こるかというと、ブースでの試食がとても多くなるのだ。
飲食チェーンが自社の特徴を分かってもらうには自社の商品を試食してもらうのが一番手っ取り早いわけだから、その行為は当然すぎるほど当然だ。
しかし、しかし、その試食の量が半端ではないのだ。数ブース回ればかなりお腹がいっぱいになるほどだ。
しかも、消防法ってどうなってるんだろうと心配したくなるほど、ブース内では火気が使用されていた。油で揚げたり、オーブンで焼いたりとほとんど店舗で提供しているのと同じ品質を提供しているのではないかと思われた。
頂く方としてはありがたいのだが、同時に、熱々の食べ物に、心の熱気も同時に感じさせられた。
■入場料
会場への入場料は5000ウォン 予約をすれば3000ウォン。それぞれ日本円で500円、300円だ。物価価値から見ても少し低めかなと思える。
しかし、ここにも特徴があるのだが、日本の展示会は建前は有料だが、予約すれば無料になるという具合に、実質は無料の場合が多いが、こちらは招待でもない限り絶対に無料にはならないようだ。
つまり、来場者はたとえ日本円にして300円という低額であってもちゃんとお金を払って入場しているのだ。
■セミナー
フランチャイズ関連の展示会と言えば、同時に様々なタイトルのセミナーが開催されるのが通例だ。
本部向け、加盟希望者向けそれぞれだが、有料、無料を含めて多くのセミナーが開催され、来場者の中にはセミナー目的で来場している方も結構いたりする。しかし、ことちらの展示会規模の割合にはセミナーの数は少ない。
こういった啓蒙活動はまだまだこれからなのだろう。
‐ 会場を後にして ‐
■草創期特有の熱気
われわれは会期中三日間のうち二日を掛けて会場内を取材して回ったわけだが、色々と学び、感じることが多かった。感覚的なもので言えば、一番感じたのは出展者の初々しい熱気だろうか。この熱気の元はどこにあるのか。
フランチャイズビジネスが韓国に本格的に導入されてからまだ20年ほどしか経っていないということを聞いた。フランチャイズは韓国内にあっては新しい可能性を秘めたビジネス手法と捉えられているようだ。
フランチャイズ本部も、そして韓国の企業家と言われる連中もフランチャイズビジネスに限りない魅力を感じているようなのだ。
■とんでもないスピード感
私たちは、各ブースへのインタビューも試みたが、担当者の話を聞いていると、その印象はより強くなった。最も驚いたのが店舗展開スピードの早さだ。一年間で100店舗近くの出店は当たり前という感じなのだ。中には、一年半で160店舗というチェーンもあった。
この数字は直営では到底達成できない数字だから、そのほとんどがFC によるものであるであろうことは聞くまでもなかったが確認してみるとやはりそうだった。
日本国内の一般的なフランチャイズモデルとしては、直営とフランチャイズの店舗比率は2対8、3対7、5対5などその業態や経営方針に従って決められているようだし、フランチャイズ展開は慎重にというのが多くの経営者の考えるところのように思える。しかし、こちらではどうもそういう感覚は薄いように思えた。よく言えばダイナミックだ。
次に驚かされたのが、未だ店舗展開をしていない、つまり直営店舗ゼロという本部も出展していたということだ。あるのはパンフレット上のモデルだけだ。
ココまで来ると、その勇気に脱帽という気持ちにすらなる。
驚異的な出展スピードである。
[Bounce kids cafe]
初出展 | 2ヶ月後に1号店完成予定 | 現在0店舗 |
KFAメンバー
■韓国の人々とフランチャイズ
Cho会長もインタビュー中で述べていたが、会場取材を続けるうちにこのフランチャイズビジネスというのは韓国人の性格にとてもマッチしているのではないかと思えてきた。
フランチャイズは資本力をあまり有さない本部でも全国への店舗展開が可能であり、その店舗展開スピードも極めて早く行うことが可能なビジネス手法だが、その特徴が素直な形で現れたのがここ韓国のような気がする。同じインタビューの中で、不況の今だからこそフランチャイズに人気が集まっているという会長の発言にも驚いた。
確かに、韓国は90年代のIMF危機を乗り越え、安定した成長を続けてきたが、ここに来て成長率は鈍化傾向となっており、最近の金利動向を見ても、日本の失われた20年に韓国も突入するのではないかと囁かれていたりする。このような不況時にはどうしても「寄らば大樹の陰」という心理が働きそうなものだ。
実際日本では、この失われた20年と言われる不景気下において、開業率は落ち込む一方だったのだから。
ところが、韓国では、不景気の時こそ、就職ではなく起業、独立というマインドが目覚めてくるのだとしたら、極めてわが国とは対照的だ。
■和食も一つのツール
定番居酒屋の雰囲気。
日本人が何となくイメージする居酒屋がモデル化されるとこのようになるのかも知れない。
日本人としてもう一つ驚かされたのが、飲食業態の中には日本食、和食の店舗や弁当のチェーンなどもいくつかあったことだった。
日本人としては、和食の店を海外の方がフランチャイズ展開するというのはいささか複雑な心境ではあるが、和食を一つの業態と考えるのならば極めて自然なことなのだろう。
ちょうど、米国文化のマクドナルドが日本にやってきた後、日本でモスバーガーが生まれたようなものだろうか。そういった意味では私たち日本人は、その食文化の高さを自慢して良いのだろうが、ビジネスとしては出遅れた感があるのは否めない。
先日訪問したIFE が開催されていたニューヨークには多くの和食店、寿司店があったが、そのほとんどは中国系、韓国系による経営であるということだった。
わが国でも、アニメやファッションと並んで、和食を日本のソフトパワーの一つとして輸出していこうという動きが出始めている。そういったときにフランチャイズはとても有効なビジネスツールになりうるだろう。今回の韓国取材を通じて、日本には海外進出のためのソフト資産がまだまだ多く眠っているように思えたが同時に、日本のフランチャイズ本部も学ぶべき点が多くあるように思った。
最も学ぶべきはその貪欲さとスピード感だろう思いながら会場を後にした。
‐ その他魅力あるチェーンとKFA会長 ‐
SETEC遠景。会場自体はそれほど広くはないが、ソウルの中心と言って良いだろう。
地下鉄直結となっている。
KFAのメンバーであることのサイン。
各ブースの表に掲げられている。半数以上がKFAのメンバーであると思えた。
チェーン名: カルボネ
- 13年前に事業スタート
- ブース出展は2年前から
- パスタ、ピザなどを提供。日本のサイゼリアに似た感じ。
- 35店舗
チェーン名: spc
Paris Baguette (他多数、メガフランチャイジー)- もともとパン屋で6年前にFC展開
- 二回目の出展
- コリアブランドナンバー1のパン屋チェーン
- シンガポールにも展開
- DUNKIN' DUNUTS 他
- KFAメンバー
チェーン名: 明光義塾
- 2007年展開開始
- 二回目の出展
- 47店舗
- KFAメンバーではない
チェーン名: ビューティークラブ
- 10年前から展開
- 中国、韓国
- 韓国に100店舗ぐらい(直営5)
- ビューティーアカデミーという学校も7校運営
- KFAメンバー
チェーン名: coin wash
CLEANTOPIA CO.,LTD.- 1992年設立
- 2009年にクリーニングFCを展開
- 本社、支社103あり、取り次ぎ店舗は2000を超える
- 韓国では、ドライクリーニングとコインランドリー併設がなかった。
- 10年前からKFAメンバー
- 飲食業が大半のなかで珍しいサービス業のコインランドリー。フランチャイズの展開方法はとても日本に似ていると思って尋ねると、担当のSeol Hye Jungは 日本のコインランドリービジネスは、常にベンチマークしているそうだ。
チェーン名: Rice Story
- 丼ぶり、ピラフチェーン
- 2009年から展開
- 三回目の出展
- 韓国に70店舗(直営1)
- KFAメンバー
チェーン名: PIZZA ALVOLO
- 8年前から展開
- 3年前から出展
- 100店舗(FC96)
- 兄弟で創業
- KFAメンバー